阿波伎

阿波伎と耽羅の歴史

阿波伎（あわぎ、生没年不詳）は、古代済州島に存在していた国家・耽羅の王族で、特に661年に倭国（現在の日本）に派遣された使者として知られています。彼の活動は、当時の地域間の交流や外交関係を理解する上で重要な史実となっています。

耽羅の初出と歴史的背景

耽羅という国家が日本の歴史書に初めて登場するのは、『日本書紀』の巻第十七においてです。この記述は推定508年に継体天皇が在位していた時期にさかのぼります。また、高麗時代に編纂された『三国史記』によると、耽羅は476年に百済の文周王に、498年には東城王に朝貢したことが記されています。このことから推察されるのは、5世紀後半から6世紀初頭の間に、耽羅と百済との間で服属関係が成立したことです。

阿波伎の使者としての役割

阿波伎の名前は『日本書紀』の巻第二十六で言及されており、ここには彼が倭国に派遣された経緯が記されています。同書に引用されている『伊吉博徳書』には、遣唐使の津守吉祥による航海記も含まれており、当時の外交活動がどのように行われていたかを示しています。

耽羅は服属していた百済が滅亡した660年以降、独自の外交を模索しました。『唐会要』には、耽羅が唐に使いを派遣しつつ、日本へも使者を送ったことが記されています。このように、独自の立場を守るために積極的な外交を行っていたことがわかります。

さらに、『旧唐書』の「劉仁軌伝」によると、白村江の戦いにおいて降伏者の中に「耽羅国使」が含まれていたとされています。これにより、耽羅が日本と連携していたことが明らかになります。百済に地理的に近い耽羅は、百済の救援拠点としての重要な役割を果たしていたことが想像されます。

あいまいな記録と阿波伎の謁見

阿波伎が、朝倉橘広庭宮で斉明天皇または中大兄皇子に謁見した際、具体的にどのような内容が話されたかについては詳細な記録は残っていません。ただし、この入貢以降、不幸にも斉明天皇は早逝することになります。このように、阿波伎の活動は時代背景や外交関係の変化と密接に関連しており、彼自身の重要性を高めています。

参考文献

• - 『日本書紀 三』岩波書店〈岩波文庫〉、1994年。
• - 『日本書紀 四』岩波書店〈岩波文庫〉、1995年。
• - 宇治谷孟 訳『日本書紀 全現代語訳 上』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年。
• - 宇治谷孟 訳『日本書紀 全現代語訳 下』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年。
• - 大林太良 編『海をこえての交流』中公文庫〈日本の古代 3〉、1995年。

関連項目

• - 遣唐使
• - 津守吉祥
• - 白村江の戦い
• - 高乙那
• - 良乙那
• - 夫乙那

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