阿部正允

阿部正允（あべ まさちか）

阿部正允は、江戸時代中期に活躍した武士であり、旗本、大名、そして老中という幕府の要職を歴任しました。武蔵国忍藩（現在の埼玉県行田市周辺）の藩主として知られ、その生涯は、激動の時代を象徴するかのようです。初めは正伊、後に正因と名乗りました。

生い立ちと家督相続

阿部正允は、5000石を領する旗本であった阿部正晴の長男として生まれました。父・正晴は、忍藩の3代藩主・阿部正武の三男にあたります。正允は、当初父の跡を継いで旗本となりましたが、宗家である忍藩阿部家に後継者がいなかったため、伯父にあたる阿部正喬の養子となります。寛延元年（1748年）に養父・正喬の隠居により、家督を相続し、忍藩の藩主となりました。

幕府での要職

藩主となった翌年の寛延2年（1749年）には、幕府の役職である奏者番に任じられました。その後も、宝暦12年（1762年）には大坂城代、明和元年（1764年）には京都所司代、明和6年（1769年）には西丸老中、そして安永8年（1779年）には本丸老中と、幕府の要職を歴任しました。これらの役職を歴任したことは、彼が幕府内で非常に重要な人物であったことを示しています。

藩政での苦難

藩主としては、宝暦2年（1752年）に藩内で発生した年貢増徴に反対する一揆や、中山道筋で起きた伝馬騒動の鎮圧に奔走しました。これらの出来事は、藩主としての正允に大きな苦難をもたらしました。しかし、これらの困難を乗り越え、藩政を運営していきました。

死去と後継者

安永9年（1780年）11月24日、阿部正允は64歳で亡くなりました。家督は、養子である従弟の阿部正敏（正喬の五男）が継ぎました。

略歴

1716年（享保元年）：誕生（享保7年（1722年）3月11日生まれという説もある）
1730年（享保15年）10月5日：父・阿部正晴の跡を継ぎ旗本となる
1733年（享保18年）7月23日：阿部正喬の養子となる（父から引き継いだ5000石の領地は収公）
1748年（寛延元年）7月29日：忍藩を相続。同年9月1日にはじめて藩領へ赴く
1749年（寛延2年）7月23日：奏者番に就任
1759年（宝暦9年）12月7日：奏者番を辞任し雁間席となる
1762年（宝暦12年）12月9日：大坂城代（1764年6月21日まで）
1764年（明和元年）6月21日：京都所司代に就任
1769年（明和6年）8月18日：西丸老中（-1779年4月16日）
1779年（安永8年）4月16日：本丸老中に就任
1780年（安永9年）11月24日：死去（享年64）

官歴

1733年（享保18年）12月28日：従五位下・能登守
1735年（享保20年）5月23日：飛騨守
1759年（宝暦9年）12月7日：従四位下
1764年（明和元年）6月21日：侍従
1769年（明和6年）8月18日：豊後守

系譜

実父：阿部正晴
実母：遠山友春の娘
養父：阿部正喬
正室：井伊直定の養女、井伊直惟の娘
子女：
阿部帯刀
阿部正陳（次男）
白須政民
阿部正実
倶姫（松平光徳正室）
銑（松平容頌正室）
奥平昌鹿正室
禎祥院（酒井忠交正室）
養子：阿部正敏（阿部正喬の五男）

参考文献

工藤寛正編『江戸時代全大名家事典』東京堂出版、2008年
続群書類従完成会『新訂寛政重修諸家譜』第十、八木書店、1969年

もう一度検索