飲光部

飲光部について

飲光部（おんこうぶ、サンスクリット: Kāśyapīya; パーリ語: Kassapiyā, Kassapikā）は、仏教の上座部系に属する部派で、善歳部とも呼ばれています。この部派の起源や教義、歴史を探ることで、仏教の多様性と発展の過程が見えてきます。

語源

飲光部の名前の由来は、アショーカ大王が最初の布教僧の一人としてヒマヴァント国にカーシャパ（Kāśyapa）を派遣したという伝説にあります。A. K. Warderによると、カーシャパの名がサンスクリット語で光（kāśa）を飲む（√pā）ことに由来しているため、「飲光」と訳されています。この説明は、真諦三蔵が『十八部論疏』の中で述べていることを裏付けています。

歴史

飲光部は紀元前190年頃に独立した部派として認識されていると、A. K. Warderは主張しています。また、説一切有部の『異部宗輪論』や上座部の『マハーワンサ』でも、この部派が説一切有部の分派であることが確認されています。大衆部によると、飲光部は分別論者たちから派生したとされています。A. K. Warderは飲光部が「雪山部」（Haimavata）と呼ばれるようになったと指摘しています。

外見の特徴

飲光部の比丘たちはモクレンの袈裟を纏っていることが、『舎利弗問経』や安世高の漢訳した書物『大比丘三千威儀』によって記されています。これらの文献は、飲光部が衆生の保護に勤しむ熱心な部派であることを示しています。

教義

飲光部の教義は非常にユニークであり、世友の『異部宗輪論』によると、この部派は折衷的な学派とされ、上座部と大衆部の教義を両方とも支持しています。また、過去の出来事が現在の形で存在しているとの考え方が信じられていたことも特筆すべき点です。

A. K. Warderの研究によれば、飲光部では阿羅漢も過ちを犯す可能性があり、完璧ではないとされていました。これは説一切有部や大衆部の考えと共通しています。阿羅漢は完全に欲を滅尽させることができず、その解脱も不完全であり、そのため阿羅漢位から有学の状態に後退することも考えられていたのです。

典籍

飲光部が所属する典籍に関しては、ガンダーラ語版の『法句経』がその部派に関連付けられていることが示唆されています。また、7世紀頃に飲光部の教説を記した小さな断片が残っていたことを、玄奘や義浄が報告しています。

結論

飲光部はその独自の教義と歴史的背景を持つ部派であり、仏教の多様な発展の一翼を担ってきたことが明らかです。この部派の考え方や慣習は、他の部派とは異なる視点を与えてくれます。そのため、飲光部に関連する文献や研究は、仏教の深い理解に寄与する重要な資源となっています。

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