高松城 (備中国)

備中高松城

備中高松城（びっちゅうたかまつじょう）は、戦国時代に備中国賀陽郡（現在の岡山県岡山市北区）に存在した日本の城です。讃岐高松城と区別するため、備中高松城とも呼ばれます。この城は、羽柴秀吉による水攻め（備中高松城の戦い）で特に有名です。

概要

高松城は、梯郭式平城という形式で、石垣は用いられず土塁によって築かれていました。周囲は低湿地帯であり、これが天然の堀の役割を果たしていました。築城時期は明確ではありませんが、備中を治めていた三村氏の命により、家臣の石川氏によって築かれたとされています。

1575年、備中兵乱で石川氏が毛利氏に滅ぼされると、清水宗治が城主となりました。清水宗治は、石川氏の娘婿でありながら、毛利氏に味方した経緯は不明です。一説には、石川氏滅亡以前から宗治が城主であったとも言われています。

1582年、織田信長の家臣・羽柴秀吉は中国攻めの先鋒として高松城を攻めました。城の周囲が沼地に囲まれていたため、攻城戦は長期化しました。黒田孝高の献策により、城を堰堤で囲む土木工事が開始され、これにより城を水没させるという水攻めが実行されました。

この水攻めは、人夫に過分な金子を与えて突貫工事で行われ、約11日後には堤防が完成しました。梅雨時ということもあり、堰堤内には水が溢れ、高松城は水没しました。この時、秀吉は信長を招く準備をしていましたが、本能寺の変によって計画は頓挫します。信長の死を知った秀吉は、毛利軍に知られないように密使を暗殺し、毛利軍との和議を成立させました。

和議の条件として、城兵の命と引き換えに清水宗治は切腹しました。その後、秀吉は主君の仇である明智光秀を討つため、「中国大返し」を行い、京へと向かいました。

高松城はその後、宇喜多氏の領地となり、花房正成が城主となりました。関ヶ原の戦いの後には、宇喜多氏の旧臣であった花房職秀が城主となり、城域も整備されましたが、一国一城令により廃城となりました。

現在、高松城には秀吉が築いた堰堤の一部や、石積みがわずかに残るのみで、往時の姿はほとんど残っていません。しかし、城跡は公園として整備され、宗治自刃の碑や首塚、胴塚が建てられています。また、資料館も開館しており、水攻めの歴史を学ぶことができます。堰堤跡は、高松城水攻め史跡公園として整備されており、発掘調査によって土杭などが確認されています。

城跡と堰堤跡は、「高松城跡 附：水攻築堤跡」として国の史跡に指定されています。また、1902年には博覧会の会場としても利用されました。2017年には、続日本100名城に選定されています。

遺構

堰堤：秀吉が築いた水攻めのための堤防の一部が残っています。
石積み：城の一部で使用されていた石積みがわずかに残っています。
宗治蓮：沼に自生する蓮が見られます。
本丸跡：清水宗治公の首塚と供養塔があります。

関連建造物

高松城址公園資料館：「高松城の戦い」のジオラマなどが展示されています。続100名城スタンプも設置されています。月曜日は休館です。

現地情報

所在地：岡山県岡山市北区高松558-2
交通アクセス：JR吉備線備中高松駅下車、徒歩10分。山陽自動車道岡山ICから約10分。
駐車場：高松城址公園の南側と西側に無料駐車場があります。

参考文献

岡山県高等学校教育研究会社会科部会歴史分科会 編『新版 岡山県の歴史散歩』山川出版社、1991年。
西ヶ谷恭弘 編『定本 日本城郭事典』秋田書店、2000年。
林信男 編『備中高松城水攻の検証』1999年。
渡邊大門『戦国の交渉人―外交僧安国寺恵瓊の知られざる生涯―』洋泉社、2011年。
高橋伸二編著『備中高桧城水攻め築堤跡』岡山市教育委員会文化財課、2008。
光成準治「高松城水攻め前夜の攻防と城郭・港」『倉敷の歴史』18号、2008年。

関連項目

清水宗治
備中高松城の戦い
中国地方の[[史跡一覧]]
太田城 (紀伊国)、忍城（日本三大水攻めの城）
日本のダムの歴史

外部リンク

実地検証〜高松城水攻め〜（2009年4月12日時点のアーカイブ）
清水宗治Web
国指定文化財等データベース
* 全国遺跡報告総覧　奈良文化財研究所

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