鮑勛

鮑勛（ほう くん）

鮑勛（? - 226年）は、中国後漢末期から三国時代の魏にかけての政治家で、字は叔業（しゅくぎょう）。鮑勲とも表記されます。遠祖は并州上党郡屯留県の人であり、後に兗州泰山郡東平陽県に移住しました。前漢の司隷校尉であった鮑宣の九世の孫にあたり、父は鮑信、兄は鮑卲、甥は鮑融（鮑卲の子）です。

生涯

212年、父・鮑信の功績により、曹操に召し出され丞相掾（じょうしょうえん）となりました。この頃、兄の鮑卲も新都亭侯（しんとていこう）に封じられています。

217年、曹操の嫡子である曹丕（そうひ）が太子に立てられると、鮑勛は太子中庶子（たいしちゅうしょし）に任じられました。鮑勛は誰に対しても公平な態度で接したため、太子中庶子であった間は曹丕の思い通りにはなりませんでした。魏郡（ぎぐん）に赴任した際には、曹丕の正妻である郭夫人（かくふじん）の弟が犯した死刑相当の罪を、曹丕から懇願されても独断で赦すことはなかったため、恨みを買うことになったと言われています。

220年、曹操が死去し曹丕が後を継ぐと、鮑勛は駙馬都尉（ふばとつい）・侍中（じちゅう）を兼任しました。曹丕（文帝）が即位した後も、「狩猟などの遊びは後回しにされて、まずは内政を整えるべきです」と常に上奏しました。このため、曹丕は鮑勛を煙たがり、上奏文を即座に破り捨てることまでするようになったと伝えられています。

223年、司馬懿（しばい）・陳羣（ちんぐん）の上奏により、御史中丞（ぎょしちゅうじょう）に任命されました。

225年、曹丕が呉を討とうとした際、鮑勛は「呉と蜀は山川を頼みとしているため簡単に討つことはできません。今遠征を行ったとしても、敵の連中に利するだけに終わるでしょう」と諫めました。しかし、曹丕はさらに腹を立て、鮑勛を左遷し治書執法（じしょしつほう）としました。

曹丕が寿春（じゅしゅん）から帰還したとき、鮑勛は陳留太守（ちんりゅうたいしゅ）の孫邕（そんゆう）が設営途中の陣営堡塁（じんえいほるい）を横切った罪を見逃したことがありました。孫邕を追及しようとしていた軍営令史（ぐんえいれいし）の劉曜（りくよう）が罪を犯すと、鮑勛は劉曜の免職を上奏しました。すると劉曜は、鮑勛が孫邕の罪を見逃したことを密かに上奏したと言われています。これに対し曹丕は、鮑勛を逮捕して廷尉（ていい）に引き渡すよう命じました。廷尉の高柔（こうじゅう）は、鮑勛の罪は懲役5年との判断を示しましたが、三官（さんかん）は法律によれば罰金で済むことだと主張しました。しかし、曹丕は激怒し三官以下を逮捕してしまいました。その後も、鍾繇（しょうよう）・華歆（かきん）・陳羣らが鮑勛の父の功績を持ち出し弁護しましたが、曹丕は許そうとせず、ついに226年夏に鮑勛を処刑させました。

鮑勛は父と同様によく施しをしたため、彼が刑死した際には家に財産がほとんどありませんでした。また、鮑勛の死の20日後の5月17日に曹丕が病死したため、鮑勛を悼まない者はいなかったと言われています。

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