鷹司松平家

鷹司松平家（吉井家）の歴史：公家から大名へ、そして華族へ

鷹司松平家は、五摂家の一つである鷹司家の庶流を祖とする、特異な歴史を持つ家系です。江戸時代を通じて公家から大名に転じた唯一の家として知られ、明治維新後は華族として子爵位を授けられました。その興亡と変遷は、日本の歴史における激動の時代を反映しています。

江戸時代：徳川家との深いつながり

鷹司松平家の始まりは、鷹司信平が江戸幕府三代将軍徳川家光に仕えたことに遡ります。信平は将軍家光と険悪な関係にあった姉・孝子（本理院）を頼って江戸に下向し、家光の歓迎を受けました。その後、四代将軍家綱の計らいにより和歌山藩主徳川頼宣の次女・松姫を正室に迎え、紀州徳川家の御連枝一門として松平姓を賜り、鷹司松平家を創始しました。

当初は7000石の知行を有する寄合旗本でしたが、五代将軍綱吉の御台所信子（浄光院）が鷹司家出身であったことから、信平の孫・松平信清は加増され、1万石で矢田藩を立藩。後に吉井に移封され、吉井藩主となりました。吉井藩は1万石という小藩でしたが、五摂家庶流という高貴な出自と御台所の親戚という立場、さらに紀州徳川家とのかかわりから、高い家格を有していました。江戸城内では御三家や加賀前田家と同じ大廊下（下之間）の待遇を受け、官位も国主大名と同位の従四位下・侍従を歴任しました。また、参勤交代も免除されていました。

鷹司松平家は、宗家である鷹司家とは養子縁組や婚姻関係がほとんどなく、例外的に8代当主・信充の正室が関白鷹司政熙の娘であったのみです。これは、鷹司松平家が、独立した家系として独自の道を歩んできたことを示しています。歴代当主は家祖信平以来「信」の通字を、庶子は「房」の通字を用いています。これらの通字は、信平の父・鷹司信房にまで遡り、信長の支援による鷹司家の再興に由来するとされています。

4代当主・信友が紀州徳川家から信有を養子に迎えた以降、信友の直系と信有の血筋が交互に家督を継承しました。しかし、幕末までに両方の血筋が断絶し、他家からの養子を迎えることになります。11代当主・松平信発の隠居に伴い、米沢藩主上杉斉憲の五男である信謹が家督を相続しました。

明治維新後：吉井家への改姓と華族

鳥羽・伏見の戦い後、新政府は徳川慶喜追討令を発し、慶喜は朝敵となりました。これを受けて、松平姓を名乗る大名家に対して本姓への復氏命令が出され、当時の当主松平信謹は藩名と苗字を吉井に改めました。明治2年の華族制度発布により吉井家は華族に列し、吉井信謹は吉井藩知事に任じられました。しかし、後に知事を辞任しています。版籍奉還による家禄は現米216石、金禄公債は9780円99銭5厘でした。

明治17年の華族令により華族五爵制が施行されると、吉井信宝は子爵に叙せられました。信宝は、長男信康に家督を継承させ、大正12年に死去しました。信康は、爵位と家督を相続しました。

鷹司松平家の特異性

鷹司松平家は、公家から大名、そして華族へと変遷した稀有な家系です。徳川家との深いつながり、五摂家という高貴な出自、そして独自の血筋の継承など、その歴史は複雑で興味深いものです。吉井藩は小藩ではありましたが、その家格と歴史的意義は、決して小さなものではありませんでした。

系譜と参考文献

（この部分には、歴代当主の系譜図と、参考文献リストが挿入されます。）

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