1969年南アフリカグランプリ

1969年南アフリカグランプリ：スチュワートの圧勝劇と各チームの状況

1969年のF1世界選手権は、3月1日、南アフリカのキャラミサーキットで開幕しました。このレースは、80周に渡る激しい戦いの末、マトラのジャッキー・スチュワートが4番グリッドから見事優勝を飾りました。2位にはロータスのグラハム・ヒル、3位にはマクラーレンのデニス・ハルムが入り、表彰台を飾りました。

各チームの状況とエントリー

1969年シーズンは、例年通り南アフリカグランプリで幕を開けました。しかし、開催時期はこれまでの1～3月から変更され、各チームのエントリー発表は開幕の数週間前に行われました。

多くのチームが2台のマシンで参戦する中、フェラーリは創業者のエンツォ・フェラーリの決断により、当初は1台のみのエントリーという異例の発表をしました。これは、多額の費用がかかるF1、F2、スポーツカー、Can-Am、ヒルクライムなど、あらゆるカテゴリーへの参戦による深刻な財政難が原因でした。当初の発表では驚きの声が上がりましたが、最終的にはクリス・エイモン1名のみの参戦となりました。ブラバム、BRM、マトラ・インターナショナル、マクラーレンは2台、ロータスは3台のエントリーでした。

この状況は、フェラーリのチーム事情を反映していました。主力ドライバーのジャッキー・イクスがブラバムに移籍したことで、エイモンのみが残留。開発責任者のマウロ・フォルギエリは四輪駆動マシンや新型エンジンの開発に専念するため、一時的に職を解かれるなど、チームは苦境に立たされていました。使用マシンである312は、ノーズ形状や排気管位置に変更が見られましたが、基本設計は前年モデルを踏襲していました。

一方、ロータスは前年度チャンピオンのグラハム・ヒルに加え、ブラバムからヨッヘン・リントを獲得。さらに、マリオ・アンドレッティがアメリカでのスケジュールと調整しながらスポット参戦しました。マクラーレンはデニス・ハルムとブルース・マクラーレンのコンビを継続。マトラはワークスチームがスポーツカーに専念したため、ケン・ティレル率いるセミワークスのマトラ・インターナショナルのみが参戦し、ジャッキー・スチュワートとジャン＝ピエール・ベルトワーズがドライバーを務めました。BRMはホンダからジョン・サーティース、ロータスからジャッキー・オリバーを獲得し、大幅なラインナップ変更を実施。ブラバムはレプコエンジンの信頼性不足からフォード・コスワース・DFVエンジンに変更、マシンもBT26Aへと進化させ、ドライバーにはジャック・ブラバムとジャッキー・イクスを起用しました。この年、ホンダ、クーパー、イーグルがF1から撤退し、新たなワークスチームの参戦はありませんでした。

プライベートチームでは、ロブ・ウォーカー/ジャック・ダーラッシャー・レーシングチームのジョー・シフェール、レグ・パーネル・レーシングに移籍したペドロ・ロドリゲスなどが参戦。南アフリカやローデシアからの地元ドライバーも多数エントリーしました。サム・ティングルとバシル・ヴァン・ルーヤンは、このレースがF1における最後の出場となりました。

予選から決勝まで

予選では、新しいDFVエンジンを評価したジャック・ブラバムがポールポジションを獲得し、ヨッヘン・リント、デニス・ハルムと共にフロントローを形成しました。

決勝レースは、ブラバムとスチュワートが先頭を争う展開から始まりました。しかし、7周目にブラバムのマシンはリアウィングが破損し、ピットインを余儀なくされました。これにより、スチュワートがトップに立ち、以後独走状態を続けました。ブラバムのトラブルにより、リントが2位に浮上しましたが、すぐにヒルに抜かれました。その後は、スチュワート、ヒル、ハルム、シフェール、マクラーレンの順位に変動はなく、スチュワートがヒルに18秒差をつけて優勝しました。アンドレッティはトランスミッショントラブルでリタイアしました。

スチュワートは全周回をトップで走りきり、ファステストラップも記録する完璧な走りで、1969年シーズンの幕開けを飾りました。この勝利は、彼の才能とマトラマシンのポテンシャルの高さを証明するものでした。 各チームの状況、マシンの進化、ドライバーの活躍など、このレースは1969年シーズンの行方を占う上で重要な意味を持つものとなりました。

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