1971年ドイツグランプリ

1971年ドイツグランプリ：スチュワートの圧倒的な勝利と、新たな時代の幕開け

1971年8月1日、ドイツグランプリがニュルブルクリンクで開催されました。前年は安全上の懸念からホッケンハイムリンクで開催されましたが、今回はコースの再舗装、ランオフエリアの追加、コーナーの再設計、バリアやフェンスの設置など、安全対策が徹底的に行われたことで、2年ぶりにニュルブルクリンクでのF1開催が実現しました。ただし、レース距離は安全確保のため12周に短縮されました。

このレースには、いくつかの注目すべき出来事がありました。まず、ブラバムチームのオーナー交代です。ロン・トーラナックからバーニー・エクレストンへのチーム売却がほぼ完了しており、エクレストンは既にチームの未来を見据えていました。また、技術面では、ティレルに端を発したインダクションポッドが、マーチも採用するなど、技術革新が進んでいました。

ドライバーの出場状況にも変化がありました。国際スポーツ委員会は、ジャン＝ピエール・ベルトワーズにブエノスアイレス1000kmレースでの事故責任を問いただし、8ヶ月間のライセンス停止処分を科しました。そのため、ベルトワーズはマトラから欠場となり、マトラはクリス・エイモン1台のみでの参戦となりました。BRMはペドロ・ロドリゲスの後任としてビック・エルフォードを起用し、フェラーリはアメリカのレースを欠場したマリオ・アンドレッティを起用するなど、各チームは様々な戦略を立てていました。マーチはアンドレア・デ・アダミッチとナンニ・ギャリのためにアルファロメオエンジンを搭載したマシンを用意する一方で、ロニー・ピーターソンのみがフォード・コスワース・DFVエンジン搭載マシンを使用しました。ロータスは72Dのみ、マクラーレンはコスワースの工場休暇の影響でジャッキー・オリバーのDFVエンジンを用意できず、デニス・ハルムとピーター・ゲシン2台のみの参戦となりました。ヨアキム・ボニエは自身のチームでル・マン24時間レース優勝ドライバーのヘルムート・マルコを起用予定でしたが、パーツ不足によりボニエのみの参加となりました。サーティースはディーター・クエスターのマシンを用意できませんでしたが、出場を見送りました。

予選では、ジャッキー・スチュワートとジャッキー・イクスのポールポジション争いが期待されましたが、スチュワートがイクスに0.2秒差をつけてポールポジションを獲得しました。スチュワートのタイムは7分19秒0と、2年前のイクスのポールポジションタイムよりも23秒も速いものでした。トップ2には3秒以上の差をつけ、3位以下は大きく遅れをとりました。

決勝レース当日には多くの観客が集まりました。スタート直前にグラハム・ヒルとレイネ・ウィセルがマシントラブルに見舞われたため、グリッドに並ぶのは20台となりました。スタートでイクスがリードを奪いましたが、すぐにスチュワートがトップに立ちました。2周目、イクスはスピンオフしてリタイア。その後、スチュワートは圧倒的な速さでレースを支配し、チームメイトのフランソワ・セベールと共にティレルは1-2フィニッシュを達成しました。この勝利でスチュワートは今シーズン5勝目、通算10回目のポールポジションを獲得しました。この結果、スチュワートはドライバーズチャンピオンシップで大きくリードを広げ、2度目のチャンピオン獲得を確実なものとしました。セベールは、見事な追い上げで2位を獲得し、レガツォーニが3位、アンドレッティが4位でフィニッシュしました。シェンケンは6位入賞し、ブラバムに今シーズン初のポイントをもたらしました。一方、ボイトラーはコースショートカットにより失格となりました。

このレースは、スチュワートの圧倒的な勝利、ティレルの強さ、そして新たな技術や安全対策が導入されたことなど、様々な意味でF1の歴史に刻まれた重要なレースでした。また、セベールのファステストラップ、シェンケンの初入賞、マルコの初エントリーなど、多くのドライバーにとって忘れられないレースとなりました。

主な結果

優勝：ジャッキー・スチュワート
2位：フランソワ・セベール
3位：クレイ・レガツォーニ
ファステストラップ：フランソワ・セベール (7分20.1秒)
* 平均速度：184.191 km/h

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