1972年ケーニヒス・ヴスターハウゼン墜落事故

1972年ケーニヒス・ヴスターハウゼン墜落事故

1972年8月14日、インターフルークのチャーター便が、ベルリン・シェーネフェルト空港からブルガス国際空港へ向かう途中で、東ドイツのケーニヒス・ヴスターハウゼン近郊に墜落しました。この事故により、乗員8名と乗客148名、計156名全員が死亡するという、ドイツ国内で発生した航空事故としては最悪の惨事となりました。

事故機

事故を起こした機体は、ソ連製のイリューシンIl-62型機（機体記号：DM-SEA）で、4基のクズネツォフNK-8エンジンを搭載していました。1970年4月に初飛行を行い、事故発生時までの飛行時間は3,520時間でした。乗員は、51歳の機長、35歳の副操縦士、32歳の航空機関士、38歳の航空士の4名に加え、4名の客室乗務員で構成されていました。それぞれの乗員の飛行時間は、機長が8,100時間、副操縦士が6,041時間、航空機関士が2,258時間、航空士が8,570時間でした。

事故の経緯

インターフルークのチャーター便は、現地時間16時30分にベルリン・シェーネフェルト空港を離陸しました。夏休み期間中であったこともあり、乗客はほぼ満席の148名でした。離陸は順調に進みましたが、13分後の16時43分、コトブス上空で乗員は昇降舵の不具合を報告し、進路を約10度変更しました。当初、乗員は事態を深刻に捉えておらず、シェーネフェルト空港への引き返しを要求したものの、緊急着陸の必要性は感じていませんでした。

16時51分、着陸重量を減らすために燃料投棄が開始されました。この頃、客室乗務員が機体後部で煙を視認したと報告しています。16時59分25秒には、シェーネフェルト空港が視認できる位置に到達していましたが、機体の上下制御に問題が発生し、乗員はメーデーを発出しました。この時点で機体後部の耐久性が火災によって低下し、水平尾翼がほぼ機能不全に陥っていたことは、乗員には知られていませんでした。メーデー発出から数秒後、機体後部が脱落し、機体は制御不能に陥り急降下を開始しました。機体前部は降下速度に耐えきれず空中分解し、機体の破片がケーニヒス・ヴスターハウゼン周辺に散乱しました。

事故原因

事故調査の結果、機体後部で発生した火災が事故の直接的な原因であると結論付けられました。火災が発生した区画は、客室からアクセスできず、煙感知器も設置されていなかったため、乗員は事態の深刻さを早期に把握することができませんでした。火災の原因は、熱風送風管からの漏洩でした。約300℃の熱風が漏れ出し、電気系統の絶縁体とフライ・バイ・ワイヤを損傷させました。乗員が報告した昇降舵の異常は、ワイヤの損傷が原因でした。離陸後、電気系統の短絡により発生した火花が、機体後方の第四貨物室で火災を引き起こしました。火災は拡大を続け、煙が客室に到達、最終的には機体構造を弱め、後部が脱落し、墜落に至りました。

追悼

ケーニヒス・ヴスターハウゼン近郊のヴィルダウの墓地には、犠牲者の名前が刻まれた黒い追悼碑が建てられています。

関連事故

LOTポーランド航空5055便墜落事故: 本事故と同様に、Il-62型機が機内火災により墜落した事故です。
南アフリカ航空295便墜落事故: ボーイング747-200B型機が機内火災により制御不能に陥り、空中分解して墜落した事故です。
ナイジェリア航空2120便墜落事故: DC-8型機が機内火災により墜落した事故で、火災の原因は、タイヤが破裂した着陸脚が地面との摩擦で高温になり、パイロットが気づかずに収納したことでした。
バリュージェット航空592便墜落事故: DC-9型機の貨物に不適切に処理された酸素発生器が積載されたことが原因で火災が発生、マイアミ国際空港への引き返し中に操縦不能となり、エバーグレーズの湿地帯に墜落しました。

外部リンク

aviation-safety.netでの事故情報
www.interflug.biz
* Edgar A. Haine (2000). Disaster in the air.

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