1992年の日本競馬

1992年の日本競馬

1992年（平成4年）の日本競馬は、数々のドラマと新たな潮流が生まれた一年でした。前年からのスターホースたちが激突し、新しい才能も続々と登場。競馬ファンにとって忘れられない出来事が多く発生しました。

スターホースたちの競演

この年の牡馬クラシック戦線で圧倒的な存在感を放ったのは、前年の朝日杯3歳ステークスを制したミホノブルボンです。血統的に距離への懸念が囁かれる中、逃げのスタイルを貫き、皐月賞、そして日本ダービー（東京優駿）を無敗で快勝。前年のトウカイテイオーに続き、関西所属馬による無敗の二冠達成という快挙を成し遂げました。シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠馬誕生がかかった菊花賞では、ライバルのライスシャワーに惜しくも敗れ去り、惜しくも偉業達成はなりませんでした。ミホノブルボンを管理した戸山為夫調教師が坂路中心の調教を取り入れたことも、大きな注目を集めました。

また、日本競馬を代表する二頭、メジロマックイーンとトウカイテイオーの対決も大きな話題となりました。前年の天皇賞・春覇者メジロマックイーンと、無敗の二冠を達成しながら骨折で秋のクラシックを断念したトウカイテイオーが、天皇賞・春で激突。両馬とも前哨戦を圧勝して本番に臨み、単勝オッズではトウカイテイオーが1.5倍、メジロマックイーンが2.2倍と圧倒的な支持を集めました。メジロマックイーンが5歳以降に出走したレースで単勝一番人気を譲ったのは、このレースだけでした。結果はメジロマックイーンが快勝し、トウカイテイオーは5着に敗退。トウカイテイオーはこのレースで軽度の骨折を発症しましたが、秋に見事復帰し、ジャパンカップでは父シンボリルドルフ以来となる日本調教馬による優勝を果たしました。一方のメジロマックイーンは宝塚記念を前に重傷を負い、長期休養。この二強の対決は、最初で最後となりました。

外国産馬の存在感増す

この年は外国産馬の活躍も目立ちました。4歳馬（現表記3歳）のヒシマサルとシンコウラブリイがそれぞれ重賞3勝を挙げるなど躍進。GI制覇こそエルウェーウィンの朝日杯3歳ステークス一勝にとどまりましたが、日本国内で調教を受けた外国産馬によるJRA重賞勝利数は、前年の2勝から8勝へと大幅に増加し、今後の勢力図変化を予感させました。

1992年の主な出来事

年間を通して、競馬界では様々な動きがありました。

1月、川崎競馬の佐々木竹見騎手が長年の功績を表彰されました。また、「怪物」と呼ばれた名馬タケシバオーがこの世を去りました。
2月、中央競馬の保田隆芳調教師が文部大臣賞を受賞。ダイヤモンドステークスでは小林稔厩舎の管理馬が重賞では23年ぶりとなる1～3着独占を果たしました。笠松競馬場ではオグリキャップの功績を称えるオグリキャップ記念が創設され、ジャパンカップが国際セリ名簿基準委員会により国際GIに認定されました。
3月、中山競馬場で初のヤングジョッキーズワールドチャンピオンシップが開催され、L.デットーリ騎手が初代優勝者となりました。
4月、中央競馬の競馬学校に史上初めて女子生徒が入学。パソコン通信を利用したJRA-VANの運用が開始され、競馬ファンへの情報提供が進みました。一方で、騎手による不祥事も発生し、騎手免許剥奪という厳しい処分が下されました。
5月、東京都渋谷に「プラザエクウス」が開館し、新たな情報発信拠点となりました。益田競馬では吉岡牧子騎手が女性騎手最多勝記録を更新。武蔵野ステークスではナリタハヤブサが重い斤量を背負いながらダート1600mの日本レコードを樹立しました。
9月、岡部幸雄騎手がイギリスでの騎乗で初勝利を挙げ、日本人騎手の国際的な活躍の足掛かりを築きました。しかし、同月には玉ノ井健志騎手がレース中の落馬事故により尊い命を落とす悲劇も発生しました。
10月には美浦トレーニングセンターにウッドチップコースが新設され、調教施設の改善が進みました。
11月には競馬セキュリティサービス株式会社が設立され、香港の国際競走が中止になるなどの出来事がありました。

新しい馬券と高配当

前年秋から導入された馬番連勝複式馬券（馬連）が定着し、GIレースで万馬券が続出しました。特に阪神3歳牝馬ステークスでは120,740円の高配当となり、当時のGI競走・重賞競走での最高配当記録となりました。

主な競走結果

中央競馬 GI

桜花賞：ニシノフラワー
皐月賞：ミホノブルボン
天皇賞（春）：メジロマックイーン
安田記念：ヤマニンゼファー
優駿牝馬（オークス）：アドラーブル
東京優駿（日本ダービー）：ミホノブルボン
宝塚記念：メジロパーマー
天皇賞（秋）：レッツゴーターキン
菊花賞：ライスシャワー
エリザベス女王杯：タケノベルベット
マイルチャンピオンシップ：ダイタクヘリオス
ジャパンカップ：トウカイテイオー
阪神3歳牝馬ステークス：スエヒロジョウオー
朝日杯3歳ステークス：エルウェーウィン
スプリンターズステークス：ニシノフラワー
有馬記念：メジロパーマー

中央競馬 障害GI

中山大障害（春・秋）：シンボリクリエンス

地方競馬 主要競走

帝王賞：ラシアンゴールド、ナリタハヤブサ（同着）
東京ダービー：グレイドシヨウリ
東京大賞典：ドラールオウカン

表彰

JRA賞

年度代表馬・最優秀4歳牡馬：ミホノブルボン
最優秀5歳以上牡馬：メジロパーマー
最優秀4歳牝馬・最優秀スプリンター：ニシノフラワー
最優秀障害馬：シンボリクリエンス

NARグランプリ

サラブレッド系年度代表馬：グレイドショウリ

リーディング

リーディングオーナー（中央）：社台レースホース
リーディングブリーダー（中央）：社台ファーム
リーディングサイアー（中央）：ノーザンテースト

この年に誕生した主な競走馬

マヤノトップガン、フジキセキ、ジェニュイン、ダンスパートナー、マーベラスサンデーなど、後のクラシックやGI戦線で活躍する多くの名馬がこの年に誕生しています。

この年に死去した主な馬・人物

「怪物」タケシバオー、日本競馬を代表する種牡馬トウショウボーイといった名馬たちがこの世を去りました。また、将来を嘱望された玉ノ井健志騎手も不慮の事故により逝去されました。

1992年は、ミホノブルボン、トウカイテイオー、メジロマックイーンといった個性豊かなスターホースたちが輝きを放ち、外国産馬や新しい馬券の導入など、日本競馬が変化と進化を続ける活気に満ちた一年でした。

もう一度検索