1999年の日本競馬

1999年の日本競馬

1999年（平成11年）は、日本競馬界にとって国内外で大きな話題に事欠かない一年となりました。特に、エルコンドルパサーのフランス長期遠征と凱旋門賞での激闘は、多くの競馬ファンの記憶に深く刻まれています。

エルコンドルパサーの欧州挑戦

前年のNHKマイルカップとジャパンカップを制し、日本のトップホースへと成長したエルコンドルパサー（牡5歳、旧表記）は、この年、春から秋にかけてフランスへの長期遠征を敢行しました。トニー・クラウト厩舎に預託された同馬は、ヨーロッパの強豪を相手に4戦を戦いました。

初戦となったイスパーン賞（G1）では惜しくも2着に敗れたものの、続くサンクルー大賞（G1）では、前年の凱旋門賞馬サガミックスや欧州年度代表馬ドリームウェルといった強敵を破り、見事に海外G1初制覇を果たしました。秋には凱旋門賞への前哨戦であるフォワ賞（G2）を快勝し、最大の目標である凱旋門賞（G1）へと駒を進めました。

凱旋門賞当日、レースは史上稀に見る極悪な不良馬場で行われました。エルコンドルパサーは先行策を取り、最後の直線入り口では後続を大きく引き離し、勝利に近づいたかに見えました。しかし、欧州の怪物モンジューが驚異的な末脚で追い上げ、ゴール前でわずか半馬身だけエルコンドルパサーを差し切り優勝。エルコンドルパサーは惜しくも2着となりました。しかし、3着以下には6馬身もの大差をつける圧巻の走りであり、その粘り強い走りと、渡邊隆オーナーのスポーツマンシップ溢れる姿勢は、ヨーロッパの競馬関係者からも惜しみない称賛を受けました。

このレースを最後にエルコンドルパサーは引退し、帰国後のジャパンカップ当日には東京競馬場で盛大な引退式が行われました。また、ジャパンカップでは、凱旋門賞でエルコンドルパサーを破ったモンジューが出走しましたが、これまた同期のライバルであるスペシャルウィークが見事に打ち破り、日本の意地を見せました。エルコンドルパサーは、国内でのレース出走はなかったものの、その欧州での圧倒的な実績が評価され、この年のJRA賞年度代表馬および最優秀5歳以上牡馬に選出されました。

その他の海外・国内の主要な出来事

エルコンドルパサー以外にも、海外で日本馬が活躍を見せました。アグネスワールドは、凱旋門賞と同じ日のアベイ・ド・ロンシャン賞（G1）を制覇。国内でのG1勝利こそありませんでしたが、ヨーロッパのG1を2勝するという快挙を成し遂げました。また、日本生産馬としては初めて、シーヴァがアイルランドのタタソールズゴールドカップ（G1）を優勝しました。

国内では、歴史的な出来事がありました。1月31日には、フェブラリーステークスにおいて、地方競馬・岩手所属のメイセイオペラが優勝。これは、地方競馬所属馬として初めてのJRA・G1制覇という、日本の競馬史における記念すべき出来事となりました。

投票方式にも変化がありました。4月には大井競馬場でワイド馬券が日本で初めて発売され、10月には中央競馬でも先行導入、12月には北海道を除く全国で発売が開始されました。

その他、多岐にわたる出来事が発生しました。

1月：エアグルーヴ、南井克巳騎手の引退式。タイキシャトルが顕彰馬に選出。
3月：ミスタートウジンがJRA史上最高齢で故障発生。エミレーツ・ワールドレーシング・チャンピオンシップにジャパンカップがシリーズ入り。
4月：厩務員組合のストライキにより中央競馬の一部開催が中止。障害競走にグレード制が導入され、第1回中山グランドジャンプ（JGI）が実施。福永祐一騎手がレース前の落馬で大怪我を負うアクシデントが発生。
5月：スペシャルウィークが天皇賞（春）を制覇。白井寿昭調教師がグレード制施行後初の開催3日連続重賞制覇を達成。ドージマファイターが足利競馬場で日本記録となる27連勝を達成。
6月：園田競馬場でサラブレッド系競走を開始。武豊騎手が日本ダービーをアドマイヤベガで制し、史上初のダービー連覇と史上最多タイとなる2勝目を記録。
7月：改修された小倉競馬場で2年ぶりに開催。アグネスワールドが芝1200mの日本レコードを樹立。
8月：ホッカイドウ競馬所属のエンゼルカロが函館3歳ステークスを制し、ホッカイドウ競馬初のJRA重賞制覇。リワードニンファが芝1600mの日本レコードを樹立。
9月：ナリタブライアンの像が栗東トレーニングセンターに建立。休養明けのホッカイルソーがオールカマーを制覇。
10月：ホッカイドウ競馬でモミジイレブンが3歳三冠達成。外国産馬のクラシック・天皇賞への出走枠が設けられることが発表される。
11月：スペシャルウィークが天皇賞（秋）を制し、史上3頭目の天皇賞春秋連覇を達成。審議対象レースのパトロールフィルム全レース公開が開始。翌年からのジャパンカップダート新設などが決定。
* 12月：トレーニングセール出身馬ヤマカツスズランが阪神3歳牝馬ステークスを制し、初のG1勝利。競馬評論家の大川慶次郎氏が逝去。有馬記念はわずか4センチ差の大接戦となる。

表彰

この年のJRA賞年度代表馬には、欧州での活躍が評価されたエルコンドルパサーが選出されました。ダートグレード競走最優秀馬およびNARグランプリ年度代表馬は、地方競馬所属ながらJRA・G1を制したメイセイオペラが受賞しています。

この年も多くのスターホースが誕生し、また長年ターフを彩った名馬や関係者が引退、あるいはこの世を去りました。国内外での歴史的な挑戦や記録更新、制度変更など、1999年は日本競馬の大きな節目となる一年だったと言えるでしょう。

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