Cinepak

Cinepak（シネパック）は、かつてSuperMac Technologiesの一事業部であったSuperMatchによって開発されたビデオコーデックです。

概要

1992年にApple ComputerのQuickTimeの一部として初めてリリースされました。このコーデックは、1倍速（150kバイト/秒）のCD-ROMの転送速度で320x240ピクセルの解像度のビデオをエンコードできるように設計され、当時のPC環境における動画再生を大きく進歩させました。翌1993年にはWindows環境にも移植され、広く利用されるようになりました。

また、Atari Jaguar CD、メガCD、セガサターン、3DOといった、1990年代に発売されたCD-ROMを搭載する家庭用ゲーム機でも利用され、当時のゲームにおける動画表現を支えました。

Cinepakは、初期のQuickTime (MOV) やマイクロソフトのVideo for Windows (AVI) における主要なビデオコーデックとして普及しましたが、1990年代後半にはRealVideo、MPEG-1、Sorenson Video、Indeo Videoといった後発のコーデックに徐々に取って代わられました。そして、2000年代初頭以降はMPEG-4（DivXやXvidなど）やWMVといったより新しい形式が主流となり、Cinepakは過去の技術となりました。しかしながら、Cinepakで圧縮されたムービーは、多くのムービー再生ソフトウェアで現在でも再生が可能です。

技術的な特徴

Cinepakは、他の多くのコーデック（特にJPEGやMPEGファミリー）が採用しているDCT（離散コサイン変換）アルゴリズムとは異なり、ベクトル量子化アルゴリズムを使用しています。これにより、比較的に低速なCPUでも効率的に動画を再生することが可能でした。例えば、68040の25MHzクラスのCPUにおいて、320x240ピクセルのビデオを毎秒30フレームで再生することができました。しかし、ビットレートを低く設定するとブロックノイズが発生しやすいという欠点があり、フルモーションビデオゲームにおいてはその画質がしばしば批判の対象となりました。

Cinepakは、ムービーをキーイメージとイントラコードイメージに分割して処理を行います。各イメージは、キーイメージ内に転送される独立した256色のカラーパレットを持つ複数の水平な帯で分割され、それぞれの帯はさらに4x4ピクセルのブロックに細分化されます。圧縮プログラムは、各ブロックに最も適した1つまたは2つの帯のパレットカラーを決定するために、ベクトル量子化アルゴリズムを使用します。そして、1カラーバイトまたは2カラーバイトのいずれかに加え、どのピクセルがどの色になるのかを決定する16ビットのベクタでブロックの連続をエンコードします。イントラコードフレームに対するキーフレームのレートを調整することで、データレートを制御し、ブロックとブロックのランレングスで防げなかったエラーを補正していました。

このコーデックの初期の名前はCompactVideoでした。そのため、FourCC識別子（動画ファイル形式を識別するための4文字のコード）は"CVID"となっています。

コンテナ形式

Cinepakは、主にAVIとMOVといったコンテナ形式で使用されていました。

外部リンク

Cinepakコーデックの技術資料（WebArchive）
Cinepak - MultimediaWiki（英語）

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