DARKNESS IV

『DARKNESS IV』（ダークネスフォー）は、シンガーソングライター浅川マキによって2007年 2月14日にリリースされたベストアルバムです。彼女の軌跡をたどるベストアルバムシリーズ『ゼロアワー』の第4弾であり、このシリーズの終章を飾る作品として位置づけられています。

本作は2枚組で構成されており、それぞれ異なるテーマのもとに楽曲が選曲されています。

DISC 1: 初期作品集（VOL.3）

DISC 1は「初期作品集（Vol.3）」と題され、浅川マキの初期における重要な活動を記録した音源を中心に構成されています。彼女の伝説的なデビューライブであるアンダーグラウンドシアター蠍座でのパフォーマンスや、紀伊國屋シアターで行われた大晦日公演からのライブ音源が収録されています。また、『裏窓』をはじめとする初期のスタジオアルバムからも厳選された楽曲が収められています。

収録曲には、『裏窓』からの「トラブルインマインド」「翔ばないカラス」「町の酒場で」「ケンタウロスの子守唄」「ロンサムロード」や、『MAKI II』収録の寺山修司作詞による「わたしが娼婦になったなら」などが含まれます。蠍座でのライブ音源としては、同じく寺山修司作詞による「愛さないの愛せないの」「十三日の金曜日のブルース」「山河ありき」（いずれも『浅川マキの世界』初出）が聴けます。紀伊國屋ホールでの1971年大晦日公演からは、ロッド・スチュワートのカバーである「ガソリンアレイ」や、浅川自身の作詞・作曲による「さかみち」などが収録されています。特筆すべきは「こんな風に過ぎて行くのなら」で、これは1990年代のアルバム『こんな風に過ぎて行くのなら』からの収録ですが、オリジナルは1973年のアルバム『裏窓』に収められた楽曲のセルフカバーバージョンとなっています。

初期を支えた参加ミュージシャンには、萩原信義（ギター）、富倉安生（ベース）、白井幹夫（ピアノ）、小松崎政雄（ドラムス）、南里文雄（トランペット）、今田勝（ピアノ）、稲葉国光（ベース）、市原宏祐（テナーサックス）、渋谷森久（ピアノ）、つのだひろ（ドラムス）、土方隆行（ギター）、後藤次利（ベース）、富樫春生（ピアノ）、山木秀夫（ドラムス）などが名を連ねています。

DISC 2: My Favorite Songs

DISC 2は「My Favorite Songs」と題され、浅川マキ自身がお気に入りの楽曲を選曲したコンピレーションとなっています。こちらは主に1990年代の楽曲が中心です。1990年代のアルバムからは、『BLACK -black に good luck-』より「憂鬱(II)」「憂鬱なひとり歩き」「少年(II)」の3曲が選ばれています。特に「少年(II)」は、1971年のアルバム『MAKI II』に収録されていた「少年」の大胆なセルフカバーバージョンです。『CAT NAP』からは「むかし」「こころ隠して」、『マイ・マン』からは「今夜はおしまい」「夜」がそれぞれ2曲ずつ収録されています。また、文芸坐ル・ピリエでの大晦日公演を収録したライブアルバム『黒い空間』からも「あの人は行った」「LOVE TIME」が選ばれています。これらの楽曲の間には、「～語り～」と記された浅川マキ自身の語りが挿入されています。

この時代の楽曲を支えた演奏者には、下山淳（ギター）、奈良敏博（ベース）、池畑潤二（ドラムス）、近藤等則（トランペット）、本多俊之（アルトサックス）、杉本喜代志（ギター）、川端民生（ベース）、つのだひろ（ドラムス）、飛田一男（ギター）、山下洋輔（ピアノ）、森山威男（ドラムス）、渋谷毅（ピアノ）、植松孝夫（テナーサックス）などが参加しています。海外のミュージシャンでは、Cecil Monroe（ドラムス）、Bobby Watson（ベース）、Gemi Taylor（ギター）、Keith R. Haines（ギター）、David C. Brown（ドラムス）といった面々も演奏に加わっています。

制作に携わった人々

本作の制作には、田村仁（プロデュース＆フォトグラフ）、吉野金次（GREEN DOOR）、松村崇（MASTERED）、木下孝（クロックワイズ）、柴田徹（せなまる舎）といったエンジニアやスタッフが関わっています。アドバイザーとして寺本幸司が、エグゼクティブプロデューサーとして中曽根純也と小林壮一がクレジットされています。また、浅川マキの活動を支えた「蠍座」の葛井欣士郎、「紀伊國屋ホール」の柳義男、「池袋・文芸坐」の永田稔といった人々への感謝も記されています。

『DARKNESS IV』は、浅川マキの初期の緊迫感溢れるライブから、円熟期ともいえる1990年代の個性的な楽曲まで、彼女の多岐にわたる音楽世界を俯瞰できる、シリーズの締めくくりにふさわしいベストアルバムと言えるでしょう。

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