DV (ビデオ規格)

DV（ディジタルビデオ）規格とは

DVは、1994年にHDデジタルVCR協議会によって発表された家庭用デジタルビデオ規格です。NTSC方式の映像をデジタル記録・再生できる初の家庭用規格として登場しました。当初はハイビジョン映像の記録を目的としていましたが、製品化されたのはSD画質（標準画質）のカムコーダーでした。その後、HD記録の製品化は進まず、SD記録が普及し、DVは事実上SD映像規格となりました。

DVカセットの種類

DVには、以下の2種類のカセットが存在します。

標準DVカセット：据え置き型デッキや大型カムコーダー用
MiniDVカセット：小型・家庭用カムコーダー用

どちらのテープも幅は6.35mmで、カセットサイズによる画質の違いはありません。記録時間は、標準DVカセットでSPモード180分、LPモード270分、MiniDVカセットでSPモード60分、LPモード90分です。MiniDVカセットは、標準DVカセット対応のデッキでもアダプターなしで再生可能です。

DV規格の市場動向

MiniDVは、アナログ方式の8ミリビデオやVHS-Cと比較して、小型軽量かつ高画質でした。当初はテープ価格が高かったものの、2000年代前半には価格が下がり、家庭用ビデオカメラ市場は急速にDV方式へと移行しました。ソニー、パナソニック、JVCケンウッド、シャープ、キヤノン、日立製作所など、多くのメーカーがDVカメラを発売しました。一方で、標準DVカセットのカムコーダーは少なく、据え置き型デッキが中心でした。

DVは、従来のVHSよりも高画質でしたが、1994年当時の放送用途にはオーバースペックであり、価格も高かったため、家庭用としてはあまり普及しませんでした。しかし、業務用としては、Uマチックの代替として広く利用され、各社からDVをベースとした業務用規格が開発されました。施工会社や特機店で販売され、企業や学校などでも民生用DVデッキが映像編集に利用されました。

その後、DVDやハードディスク、SDメモリーカードなど、テープ以外の記録メディアが登場し、DVカメラの市場は縮小しました。2000年代後半には、放送のハイビジョン化に伴い、DV規格の機器の生産は終了しました。しかし、テープの生産は、HDV規格の用途もあり、現在も継続しています。

HDV規格

DV規格にはHD仕様がありましたが、製品化されませんでした。しかし、DVのテープやメカニズムを利用したHDV規格が、日本ビクター、ソニー、キヤノン、シャープによって策定されました。民生市場では、DVDやHDD、メモリーカードに記録するAVCHD方式が主流となり、HDVの録画・再生機器の生産は終了しています。業務用市場では、磁気テープへの信頼が高く、低コストであるため、販売が継続されましたが、光ディスクやメモリーカードへの移行が進み、2015年12月をもって機器の生産が終了しました。

DV圧縮の特徴

DV圧縮には以下のような特徴があります。

色差コンポーネント映像：525/60システムの場合は4:1:1、625/50システムの場合は4:2:0でサンプリングします。
フレーム内圧縮：時間軸方向への圧縮を行わないため、編集が容易です。
ビットレート：約25Mbpsです。
コンポーネント映像信号：ITU-R BT.601に準拠しています。
色滲み：輝度信号に比べて色信号の帯域が狭いため、色滲みが発生する場合がありますが、アナログ方式に比べれば問題にならないレベルです。
ブロック歪み：まれにブロック歪みやモスキートノイズが発生することがあります。
映像・音声の分離記録：耐障害性やトリックプレイを考慮した記録方法を採用しています。
音声：非圧縮のリニアPCM方式で記録します。サンプリング周波数は48/44.1/32kHz、量子化ビット数は16または12、ステレオです。

DV規格のその他

初の家庭用DVカムコーダーは、1995年7月発売のソニー製DCR-VX1000です。
初の家庭用DVデッキは、1997年9月18日発売のソニー製DHR-1000です。
ほとんどのDV機器にはIEEE 1394（DV端子）が搭載されており、デジタルダビングが可能です。これにより、無劣化での編集が可能になりました。
多くのノンリニア編集ソフトウェアやDVD オーサリングツールが、DV機器との連携機能を持っています。
一部のDVD/BDレコーダーにはi.LINK端子が搭載されており、DVカメラの映像をデジタルダビングできます。
業務用のDVCAMやDVCPROは、DV規格をベースに開発されました。DVCPRO50は、放送局やポストプロダクションでも使用されています。
HDVは、DVと同じカセットとトラックパターンを採用することで、機器価格を抑えています。
WindowsやmacOSには、DVコーデックが搭載されています。
DV規格以前の家庭用ビデオデッキでは±３フレームの編集精度だったものが、DV規格では±0フレームとなり、編集精度が向上しました。