R-7 (ロケット)

R-7 大陸間弾道ミサイル

R-7（ロシア語: Р-7）は、ソビエト連邦のセルゲイ・コロリョフ率いるOKB-1が開発した、世界初の大陸間弾道ミサイル（ICBM）です。その後の宇宙開発の基礎となり、多くの派生ロケットを生み出しました。ソ連での愛称は「セミョールカ（Семёрка）」で、ロシア語で数字の7を意味します。NATOコードネームは「サップウッド（Sapwood）」、アメリカ国防総省の識別番号はSS-6です。

開発の経緯

R-7の開発は、1949年にドイツ人技術者チームが3000kgの弾頭と3000kmの射程を持つG-4ロケットの開発に着手したことから始まります。その後、ソビエト連邦はG-4を基にR-3ロケットの開発を進めましたが、最終的にR-7の開発に移行しました。政府からの要求仕様は、射程8000km、重量170トンの二段式ミサイルで、3000kgの分離式弾頭を搭載することでした。後に、弾頭重量は5500kgに増やされました。設計は大幅に変更され、1954年5月20日に最終設計が承認されました。

クラスター式のロケットは、ドイツ人技術者達の発案によるものです。彼らはG-4の改良型であるG-5を開発していましたが、ソビエト側の情報共有は行われませんでした。しかし、ドイツ人達の設計成果はソビエト側に伝えられ、彼らの設計に取り入れられました。当初、単燃焼室のRD-105、RD-106エンジンを開発していましたが、燃焼の不安定性の問題から、4燃焼室を持つRD-107、RD-108エンジンに変更されました。

1956年後半から、クイビシェフの第一航空工場「プログレス」でミサイルの製造が開始されました。最初のR-7は、カリーニングラードの第88工場で製造された部品を組み立てたものでした。1957年3月には最初のR-7が発射準備施設に送られ、同年5月5日に発射施設に到着しました。

テスト飛行

1957年5月15日、バイコヌール宇宙基地で最初のテスト飛行が行われましたが、ストラップオンブースターの燃料漏れにより失敗しました。その後もテストが繰り返され、7月12日の3回目のテストでは、発射から33秒後に制御回路の故障により失敗しました。8月21日の4回目のテストで、初めて6000kmの長距離飛行に成功しました。この成功は、8月26日にタス通信によって発表されました。

改修された8K71PS（スプートニク・ロケット）は、10月4日にスプートニク1号、11月3日にスプートニク2号を軌道に投入し、世界初の人工衛星打ち上げロケットとなりました。初期のテストから設計修正が必要であることが判明し、テスト飛行は1959年12月まで続けられました。

R-7Aへの改良

修正を経て完成した8K74（R-7A）は、8K71に比べて軽量化され、高性能な誘導装置とエンジンを搭載し、燃料搭載量も増加しました。これにより、射程が延長されました。R-7Aは、1957年10月と1958年にノヴァヤゼムリャでテストされ、2.9Mtの威力を発揮しました。

配備と運用

最初の戦略ミサイル部隊は、1959年2月9日にロシア西部のプレセツクで運用可能となりました。プレセツクには4基の発射台が建設され、1959年12月15日には最初のR-7Aミサイルがテストされました。運用された発射サイトは、プレセツクの4基と、カザフスタンのバイコヌールの2基の計6基でした。プレセツクには2つのR-7Aミサイル連隊が配備され、それぞれのミサイルはニューヨーク、ワシントンD.C.、ロサンゼルス、シカゴを目標としていました。1962年のキューバ危機時には、実用弾頭を搭載したミサイルがプレセツクの発射台で発射準備態勢に置かれました。

しかし、R-7の運用には多くの問題がありました。まず、巨大な発射基地は偵察衛星から隠すことができませんでした。また、発射準備に約20時間かかり、極低温燃料を使用するため、燃料注入後のアラート態勢を長時間維持できませんでした。これらの問題から、R-7は第一世代ICBMとしては失敗作とみなされました。そのため、ソ連は第二世代ICBMの開発を急ぐことになりました。

退役と宇宙開発への転用

R-7は1962年までに配備が完了しましたが、1968年には退役しました。しかし、そのロケットや発射台は宇宙開発に転用され、ボストークやソユーズロケットの基礎となりました。R-7の技術は、21世紀に入った現在でも使われ続けており、国際宇宙ステーションへの人員・物資輸送にはR-7の直系であるソユーズとプログレス補給船が用いられています。

要目

R-7は全長34m、直径3m、発射重量は280トンで、液体酸素とケロシンを推進剤とする二段ロケットです。射程は8,800km、CEPは5,000mでした。R-7Aは全長が28mと短くなりましたが、射程は9,500kmに伸びました。R-7Aの弾頭は、RDS-37またはRDS-46A再突入体と威力3Mtの46A核爆弾を組み合わせた単一弾頭でした。

発射の初期段階では、4基のRD-107ブースターと中央のRD-108メインエンジンによって加速されます。RD-107とRD-108は基本的に同じエンジンで、V. P. グルシコが率いるOKB-456によって設計されました。燃料ポンプは4基の燃焼室に燃料を送ります。この構造は、燃焼室の大型化と振動を避けるための工夫です。第二段のRD-108エンジンは4基のノズルと4基の姿勢制御用バーニアノズルを備え、第一段のRD-107ブースターは4基のノズルと2基のバーニアノズルを備えています。

誘導システムは、R-5Rの無線指令システムを元にした慣性誘導でした。軽量化の結果、R-7は自立して発射することができず、トラス構造の支柱に吊り下げられた状態で発射されます。この方式は「チューリップ発射方式」と呼ばれ、エンジン点火後、支柱が倒れる様子はソ連/ロシアのロケット発射固有の風景となっています。

脚注

CEP: 確率円半径（円形の誤差範囲を示す指標）
Mt: メガトン（核兵器の爆発力を示す単位）
RD: ロケットエンジンを表す記号

関連項目

宇宙へ 〜冷戦と二人の天才〜
* ディアトロフ峠事件

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