TDK AD

TDK ADシリーズ：音楽録音用カセットテープの歴史

TDK（東京電気化学工業）が製造・販売していた「AD」（アコースティック・ダイナミック）は、1977年から2001年まで展開されたコンパクトカセットのブランドです。東京芝浦電気（現・東芝）のAurexブランドでもOEM供給されていました。ADは、その優れた音質と安定性から、音楽録音用カセットテープのスタンダードとしての地位を確立しました。本稿では、ADシリーズの派生モデルであるAD-X、AD-S、AD1、AD2についても記述します。

ADシリーズの誕生と進化

ADは、1977年3月1日に発売されました。これは、前身であるSD（スーパーダイナミック）の後継として登場し、同社の主力カセットシリーズとなりました。1979年から1993年にかけて、数回のリニューアルが実施され、磁性体やカセットハーフの仕様が変更されました。これにより、音質の向上や耐久性の向上が図られました。

ADシリーズは、音楽用カセットテープの標準的な製品として、幅広いユーザーに利用されました。特に、ノーマルポジション用カセットテープの代表格として、多くのオーディオファンに愛されました。その信頼性の高さから、音楽録音の基準となる製品として認識されるようになりました。

ADシリーズの派生モデル

AD-X: ADの上位版として1982年に登場し、1995年まで販売されました。より高音質での録音を求めるユーザー向けに開発されました。
AD-S: ADのカセットハーフをより高精度に仕上げたモデルとして1983年に登場し、1986年まで販売されました。カセットメカニズムの精度を重視するユーザーに評価されました。
AD1: 1995年にADから改称され、2001年まで販売されました。ADの基本性能を継承し、ノーマルポジション用カセットテープの定番として長く親しまれました。発売当初は「AD Type1」という商品名でした。
AD2: 1995年に発売されたハイポジション用カセットテープです。発売当初は「AD Type2」という商品名でした。高音域での優れた録音特性を持ち、より高音質な録音を求めるユーザーに支持されました。

生産終了とその後

1995年、AD Type2（後のAD2）の発売に伴い、ノーマルポジション版はAD Type1（後のAD1）に改称されました。1990年代後半には、MD、DAT、CD-R/RWなどのデジタルオーディオ記録メディアの普及が進み、カセットテープの需要は低迷しました。2001年末、TDKはADシリーズの生産・出荷を終了し、24年の歴史に幕を閉じました。同時に、メタルポジションのMA-EXも生産終了となりました。

ADシリーズの生産終了後、TDKの音楽録音用カセットテープのラインナップは、CDing1、CDing2がその役割を担うこととなりました。

参考資料

FUTABASHA SUPER MOOK 〜TDKカセットテープ・マニアックス〜 (双葉社, 2023)
ONTOMO MOOK stereo編 カセットテープ完全アルバム (音楽之友社, 2023)

関連項目

TDK SD
TDK D
TDK ED
TDK OD
TDK AR
TDK AE
* TDK SF → TDK SR

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