THE BEATLES/シェアスタジアム

THE BEATLES／シェアスタジアム：ビートルズと5万人の熱狂の記録

1965年8月15日、ニューヨークのシェイ・スタジアム。この地で、ビートルズは歴史的なコンサートを開催しました。その模様を収めたドキュメンタリー映画『THE BEATLES／シェアスタジアム』は、ポピュラー音楽史に燦然と輝く、伝説の一夜を今に伝えています。

熱狂の渦：5万人のビートルマニア

このコンサートは、野球場で行われた初のポピュラー音楽コンサートとして知られています。5万5千人を超える熱狂的なファン、通称ビートルマニアたちが詰めかけ、会場は凄まじい熱気に包まれました。ドキュメンタリーでは、マンハッタンからヘリコプターで会場へ向かうビートルズの姿や、楽屋での様子、そして何よりも、オーディエンスの圧倒的な熱狂が克明に記録されています。14台のカメラが捉えた、圧巻のライブパフォーマンスと、忘れられない一夜を彩る様々な場面は、今観てもその興奮が伝わってきます。

完全収録ならず：幻の楽曲

コンサートの演奏曲は全て収録されたわけではありません。「シーズ・ア・ウーマン」と「みんないい娘」の2曲は、残念ながらこのドキュメンタリーには収録されていません。これは、当時の技術的な制約や編集上の都合によるものと考えられます。

後日作業と音源差し替え

ドキュメンタリーの完成度を高めるため、いくつかの楽曲にはオーバーダビングが施されました。「アイ・フィール・ファイン」、「ディジー・ミス・リジー」、「涙の乗車券」、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」、「ベイビーズ・イン・ブラック」、「ヘルプ!」、「アイム・ダウン」の7曲は、1966年1月5日にCTSスタジオで追加レコーディングが行われています。一方、「ツイスト・アンド・シャウト」は1965年のハリウッド・ボウル公演のライブ音源に、「アクト・ナチュラリー」は『ヘルプ!』アルバム収録のスタジオ音源にそれぞれ差し替えられました。これは、時間の都合によるやむを得ない措置だったと考えられます。

世界への発信と、日本での上映

『THE BEATLES／シェアスタジアム』は、1966年3月1日にイギリスのBBC Oneで初放送されました。その後、西ドイツ、アメリカでも放送され、劇場公開もされました。アメリカではABCで1967年1月10日に放送されました。日本でも1970年代にフィルムコンサートとして上映され、多くの日本人がこの歴史的コンサートを目撃しました。宣伝広告のデザインは、ビートルズがハンブルクで活動していた時代からの友人であるクラウス・フォアマンが担当しました。

セットリスト

その後のリリースと評価

1978年にはビデオカセットとして発売されましたが、現在はビートルズの公式カタログから削除されています。しかし、その歴史的価値は高く評価されており、1995年の『ザ・ビートルズ・アンソロジー』や2015年の「エイト・デイズ・ア・ウィーク」のミュージックビデオでも、シェイ・スタジアム公演の映像が使用されています。また、海賊盤も多く存在します。1996年には『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に「みんないい娘」のライブ音源が収録されました。2016年には、ロン・ハワード監督によるドキュメンタリー『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』が公開され、4Kリマスターされたシェイ・スタジアム公演の映像が使用されました。この作品には、三塁側にいたファンが撮影した未公開の16mmカラー映像も含まれています。サウンドもジャイルズ・マーティンによってリマスタリングされており、かつてないほど鮮明な音質で、歴史的コンサートを体感することができます。

『THE BEATLES／シェアスタジアム』は、単なるコンサート映像にとどまらず、時代を象徴する出来事、そしてビートルズという伝説的バンドの偉大さを改めて認識させてくれる、貴重なドキュメンタリー作品です。

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