テラドライブ

テラドライブ（TERADRIVE）

テラドライブは、セガ・エンタープライゼス（後のセガ）が日本IBMと共同開発し、1991年5月に発売した、メガドライブ内蔵パソコンの製品名です。

概要

テラドライブは、メガドライブと同じ黒基調のデスクトップ筐体に、パーソナルコンピュータとメガドライブの機能を統合したIBM製マザーボードを搭載しています。前面のスイッチでPCまたはメガドライブのいずれかを選択して起動でき、同時稼働も可能でした。表示には専用モニタ、またはPC用モニタとビデオモニタの併用が推奨されました。OSにはIBM DOSバージョンJ4.0/V（いわゆるDOS/V|DOS_V）が採用されています。

単にPCとメガドライブを一つの箱に入れただけでなく、80286プロセッサとメガドライブのMC68000プロセッサは互いのバスで接続され、連携できる点が特徴でした。当時、DOS/Windows機とMacintoshでそれぞれ採用されていた2大CPUの併用という大胆な構成は話題を呼びましたが、PC側のCPUはあくまで80286であり、当時のMacintoshのOSである漢字Talkが動作するわけではありませんでした。

またPC部は、単なる互換機にとどまらず、IBM純正PCとしての性格も持ち合わせており、ROM DOSや漢字ROM、専用メニューなど、当時のIBM製PCに相当する機能を備えていました。ただし、発売元はあくまでセガです。コンシューマーゲーム機のバリエーションとしては非常に高価である一方で、PCとして見た場合は比較的安価に提供されました。しかし、発売当時としてもマシンパワーが低く、陳腐化も早かったと言えます。今後の標準として「Windows （V3.0）対応」も謳われていましたが、マイクロソフト製Windows 3.1日本語版以降には対応していません。

ハードウェア

ここでは主としてPC側のハードウェアについて記述します。メガドライブ側のハードウェアにも本機特有の仕様がいくつかありますが、それ以外の部分はメガドライブを参照してください。

筐体

全体的に黒い色調で統一され、電源スイッチやLEDなど、ごく一部にオレンジが使われています。専用モニタを載せた形状は一見すると当時のデスクトップ・パソコンとして一般的な横置きの直方体ですが、モニタを除く本体のカタログ寸法は幅36 cm×奥行き33.4 cmと正方形に近く、高さは足（1 cm厚）を含めても8 cmと薄い、いわゆるピザボックス型の省スペースパソコンです。

フロントパネルは、前面向かって左にはメガドライブのカートリッジを挿入するスロットが、右にはFDの挿入口が付いています。中央部はモデルによって形状が若干異なり、MODEL2では2台目のFDDが、MODEL3ではHDDが搭載されています。

CPU

テラドライブのPC側に使われているCPUは80286/10MHzです。当時は386SXの登場で32ビット機が急速に普及しつつあったものの、安価な下位機種にはV30HLなどの16ビットCPUがまだ使われていた時代であり、テラドライブでは同じ16ビットでも機能面で有利な80286を採用していました。これはDOS/V|DOS_Vが80286以上を前提としたOSであることから当然の仕様ではありましたが、当時話題となっていたMS-Windows(v3.0)をスタンダードモードで動作させることができる最低ラインのCPUでもあり、Windows対応も売り文句のひとつになっていました。しかし動作クロックは当時の最低クラスだったうえ、ソケットを介さずマザーボード直付けで交換も困難でした。また数値演算用コプロセッサを利用することもできませんでした。

80286とメガドライブのMC68000は同じ基板上で動いており、内部で共有ポートを介し接続され、連携できるようになっていました。また後述のようにPCとメガドライブを別個に同時に稼動させることもできましたが、この場合、MC68000自体も通常のメガドライブより高いクロック周波数で動作させることができました。

さらにメガドライブと同様にZ80も搭載しており、マニュアルでは合計40bitとも表現されています。これらのCPUはセカンドソース品が使用され、コストダウンがはかられていました。

画面表示

主としてPC時に31kHz、メガドライブ時に15kHzの画面出力が使われます。またVGA端子とAV端子（RCA）の2系統の出力を持ち、背面に切替スイッチがあります。AV出力はメガドライブのような専用ケーブルではなく、汎用のRCAケーブルが使用可能です。一般的なビデオモニタはAV端子からの31kHz入力には対応していないが、AV出力設定時はPC画面もデフォルト（英語モード）では320x200 (15kHz) の画面モードになるのでAV端子にもPC画面の表示が可能です（一般的な日本語モードは31kHz以上のため不可）。VGA端子にはどちらの周波数も出力できるため、15kHz/31kHzの両方に対応した専用のパソコン用ディスプレイ（HTR-2200）も用意されました。専用ディスプレイが無くても通常のミニD-sub15ピン接続のPC用モニタと、家庭用テレビなどのビデオモニタを併用することで一通りの機能は利用できました。ただしS端子やD端子に出力する手段は無いため、メガドライブ画面にAV端子以上の画質を求めるのであれば、15kHz入力に対応したVGAモニタが必要となります。

オンボードVGAの表示能力は640x480x16色または320x200x256色です。実際にはSVGAモードを持つチップセットを搭載していますが、標準ではSVGA機能は利用できなくなっています。

メモリ

主記憶用SIMMスロットは30ピンのソケットが2本しかなく、モデルごとに異なる容量のSIMMが標準で搭載されています。交換は同容量2枚1組で行いますが、高位アドレスが配線されていなかったため、（無改造では）最大1MBのSIMMまでしか利用できません。マザーボード上のRAMは512KBであるため、合計2.5MBまで増設できます。

拡張スロット

PC側の拡張スロットはISA1本と不足しており、本来-12Vが供給されているべき端子に電源が来ておらず、サウンドボードのSound Blasterなどが動作しない（有償での改造サービス有り）。なおカタログスペック上はISAとは書いておらず、ハーフサイズのATバス準拠ということになっています。

メガドライブ側の拡張用スロットは天板を突き抜けて上面にあります。ROMカートリッジ用スロットは前面にあり、メガドライブ2と同様にカセットのロック機構はありません。ゲームカートリッジはシール面を上向きにしてセットするため、シールの文字が上下逆になります。どちらも物理的な形状の問題があり、（無改造では）メガアダプタ・メガCD・スーパー32Xなどが接続できません。

ストレージ

内蔵3.5インチFDDは1.44MB/720KBの2モードで、いわゆるPC-9800シリーズ等に使われた1.25MBのフォーマットには非対応です。このドライブは一般的なAT互換機のものと互換性は無く、他機種に流用するにはある程度の改造が必要になります。またベゼルはフロントパネルと形状の合う専用品です。

MODEL3には30MBのHDDが内蔵されていますが、ハードディスクのインタフェースが一般的なIDEではなくIBM独自であるうえ、筐体内部には4ピンの電源ケーブルも存在しないため、交換や流用は困難でした。増設する場合は拡張スロットにSCSIなどのインターフェースを別途搭載し、外付けする形となります。

またメガCDと互換性のある専用CD-ROMドライブも企画されていたようですが、発売されることはありませんでした。

キーボード

専用キーボードはPS/2接続の外付け106キーボードであり、コンパクトなPC筐体とは対照的に、通常サイズのフルキーボードが採用されています。「SEGA」のロゴが入っていることを除けば実質的には当時のIBM PCのキーボードの廉価版に相当し、押下したときにカチンという感触のあるメカニカルなキーが使われています。

その他のハードウエア

PC側の音源は（標準では）BEEPのみですが、メガドライブのゲームと同様に、本体前面にあるヘッドホン端子（ステレオ）に出力させることができます。スピーカー（モノラル）も内蔵しており、ヘッドホンを繋がない場合はそちらから出力されます。背面のAV端子のオーディオ出力はステレオに対応した赤と白のRCA端子が用意されています。

内蔵ソフトウェア

セットアップメニュー

PCモードで起動時にF1キーを押すとBIOSメニューに入り、TERAメニューにおける国別キーボードの選択や起動音の有無などが設定できます。

TERAメニュー

PCモードで電源を入れるとまずROMドライブからTERAメニューが立ち上がり、テキストファイルの閲覧（英語のみ）・FDのフォーマット・ディスクコピー・日付/時刻設定といった操作を行うことができます。

OS

各モデルともIBM DOS J4.0/VのFDが添付され、HDD内蔵モデルではプリインストールされていました。Windowsについては標準搭載したモデルは無く、別売でした。

漢字ROM

当時のPS/55|PS_55シリーズと同様に、漢字のフォントデータがROM内に用意されています。これに対応したDOS/V|DOS_V用フォントドライバを用いることで、DOS/V|DOS_V上の日本語フォントに利用できます。

PCとメガドライブの併用と連携

同時使用

PCモードでVGA出力に設定されているときにF2キーを押しながら起動するか、またはPC起動後にソフトウエア的な手段でビデオ側にメガドライブの画面が出力されるようになり、PCとメガドライブが独立して別個に使用できる状態になります。

TERAメニューでの連携機能

TERAメニューではPCとメガドライブの機能が連携されており、裏でメガドライブが動いていないときであればメガドライブ側のコントローラでもメニューを操作できるという特徴を持ちます。

その他の連携ソフト

専用ソフトは『パズルコンストラクション』が発売された程度です。

仕様

バリエーション

本体

MODEL1: メインRAM640KB、3.5インチFDD1基搭載。148,000円
MODEL2: メインRAM1MB、3.5インチFDD2基搭載。188,000円
MODEL3: メインRAM2.5MB、3.5インチFDD1基+30MB HDD1基搭載。248,000円

オプション

専用ディスプレイ（HTR-2200）: 14インチ、ドットピッチ0.31mm。79,800円
専用マウス（HTR-2300）: ボール式、200カウント/インチ。6,800円

発売後の状況

テラドライブは家庭でのマルチメディア環境の本格的な普及を目指し開発された意欲的な製品でしたが、価格を抑えるためPCとしての性能と拡張性が低かったことから普及には至らず、後継機種、上位機種とも発売されませんでした。当時のIBM製高級機と差別化するためにわざと性能を落としたという評価もあります。

関連項目

セガガガ - 同名のスーパーコンピュータが登場
レンタヒーロー - オテラドライブというテラドライブのパロディPCが登場
ムシキング・テリー - テラドライブ、ジェネシス等のセガに関連した名前の技を持つプロレスラー
Amstrad Mega PC - イギリスのPCメーカーアムストラッド社からリリースされたメガドライブ搭載PC/AT互換機

外部リンク

セガハード大百科 - テラドライブ

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