ビワコオオナマズ

ビワコオオナマズについて

ビワコオオナマズ（学名：Silurus biwaensis）は、ナマズ科に属する淡水魚で、琵琶湖とその周辺水系にのみ生息する日本固有種です。マナマズ（Silurus asotus）と同属ですが、より大型に成長し、日本に生息するナマズ科の魚類の中では最大級の大きさを誇ります。

歴史

明治時代以降、日本でも西洋の分類学に基づいた魚類の研究が進められましたが、当初は琵琶湖のナマズもマナマズの一種として扱われていました。しかし、琵琶湖の漁師の間では、昔から複数の種類のナマズが生息していることが認識されていました。その知見が学術的に認められたのは1961年、友田淑郎によってビワコオオナマズとイワトコ[[ナマズ]]が新種として記載された時です。

地元では単に「オオナマズ」と呼ばれていましたが、利根川水系でも大型のマナマズが捕獲されることがあったため、区別するために「ビワコオオナマズ」という標準和名が与えられました。種小名の「biwaensis」は、琵琶湖を意味する「Biwa」と、「～に由来する」という意味のラテン語の接尾辞「-ensis」を組み合わせたもので、「琵琶湖産」であることを示しています。

分布

ビワコオオナマズは、琵琶湖とその流出河川である淀川水系にのみ生息する固有種です。以前は琵琶湖のみに生息すると考えられていましたが、近年の調査で淀川などの下流域にも生息していることが確認されました。

形態

ビワコオオナマズは、日本産ナマズ類の中で最も大きく成長する種類で、最大で体長120cm、体重20kgに達することがあります。一般的に雌の方が雄よりも大きく、特に100cmを超える大型個体はほとんどが雌です。

ナマズ科の魚類に共通する特徴として、平らな頭部、大きな口、短い背鰭と長い臀鰭を持ちます。長く発達した口ひげは感覚器としての役割を果たします。稚魚の時には3対の口ひげがありますが、成長とともに下顎の1対は消失し、成魚では上顎と下顎に1対ずつ、合計4本になります。上顎のひげはマナマズに比べて短く、胸鰭に達することはありません。体色は黒色調で金属光沢を帯び、腹部は一様に白いです。

ビワコオオナマズは、マナマズやイワトコ[[ナマズ]]と外見がよく似ていますが、頭部がより長く、平たいこと、下顎がより突出していることなどで区別できます。また、尾鰭は二又に分かれ、上葉が下葉よりも長いのも特徴です。骨格を比較すると、マナマズ、イワトコ[[ナマズ]]とは異なる特徴を多く持っていることがわかります。

生態

ビワコオオナマズは、琵琶湖の食物連鎖の頂点に立つ魚類です。夜行性ですが、日中も活発に活動することが確認されています。イワトコ[[ナマズ]]が甲殻類や水生昆虫を主に捕食するのに対し、ビワコオオナマズは魚食性が強く、アユ、ビワマス、フナ類、さらには外来種のブルーギルなどを捕食します。また、大型のブラックバスを捕食できる数少ない在来魚の一つでもあります。

繁殖

繁殖期は6月下旬から8月にかけての梅雨明け時期で、降雨によって水位が上昇した夜間に、礫底の浅瀬に集まり産卵します。繁殖行動は独特で、雄が雌に巻き付くようにして行われます。雄は腹部を上にして雌の背中に乗り上げる形で巻き付き、そのまましばらく動かずにいます。その後、雌が体を震わせることで産卵が行われ、雌雄は寄り添いながら2度旋回遊泳します。この旋回遊泳は、卵を分散させ、捕食圧を減らすためと考えられています。また、孵化した後の仔魚の生活範囲が重複しないようにする目的もあるとされています。

マナマズでは、雄2匹と雌1匹で繁殖行動を行うこともありますが、ビワコオオナマズの場合は常に1つがいで行われます。産卵期には、湖岸のヨシ原に多くの個体が集まり、夜明けまで産卵が繰り返されます。

成長

卵は黄褐色のゼリー状で、イワトコ[[ナマズ]]の卵とは異なり、粘着性のゼリー層で覆われており、砂礫に付着して発生します。水温22℃の条件下では50時間以内に孵化します。仔魚期以降の成長過程についてはまだ不明な点が多いですが、成長は比較的早く、4〜5年で全長60〜80cmに達すると考えられています。雌は一般的に雄よりも大きく成長し、寿命も長く、大型個体では10年程度生きることもあります。

利用

肉は白身ですが、独特の臭みがあるため食用にはあまり利用されません。鮒寿司の原料となるニゴロブナを獲るための刺し網にかかることがありますが、通常はそのまま廃棄されます。

参考文献

川那部浩哉・水野信彦 編『日本の淡水魚』（改訂版）山と溪谷社、1989年11月。ISBN 4-635-09021-3。
江島勝康『世界のナマズ』（増補改訂版）マリン企画、2008年5月。ISBN 978-4-89512-515-4。
『鯰―イメージとその素顔』川那部浩哉監修、八坂書房〈琵琶湖博物館ポピュラーサイエンスシリーズ〉、2008年2月。ISBN 978-4-89694-904-9。

関連項目

魚の一覧

外部リンク

* FishBase‐ビワコオオナマズ （英語）

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