藤原通俊

藤原通俊（ふじわら の みちとし）は、平安時代中期から後期にかけて活躍した公卿であり、歌人としても知られています。藤原北家小野宮流の出身で、父は大宰大弐を務めた藤原経平です。官位は従二位・権中納言にまで昇りつめました。

生涯

後冷泉天皇の時代、康平2年（1059年）に従五位下に叙爵されたことから、その官僚としてのキャリアをスタートさせました。妹の藤原経子が白河天皇の寵愛を受け皇子を産んだこともあり、通俊は白河天皇の側近として重用されるようになります。少納言や五位蔵人を歴任した後、承保2年（1075年）には正五位下・左少弁に叙任されました。その後も弁官を歴任し、順調に昇進を重ね、応徳元年（1084年）には参議兼右大弁に任ぜられ公卿の仲間入りを果たしました。白河朝末の応徳3年（1086年）には従三位に叙せられています。

白河院政期に入ると、寛治2年（1088年）には白河院別当に任ぜられ、引き続き院近臣として白河上皇に仕えました。同年には正三位に叙せられ、寛治6年（1092年）には大蔵卿も兼ねました。寛治8年（1094年）には従二位・権中納言に至り、その官歴は頂点を極めます。承徳2年（1098年）には、姉である藤原睦子の娘、藤原苡子が堀河天皇に入内し女御となりました。しかし、翌年の承徳3年（1099年）に53歳でこの世を去りました。

文化人としての通俊

通俊は、白河天皇の歌壇で重要な役割を果たし、「承暦内裏歌合」をはじめとする多くの歌合でその才能を発揮しました。また、承保2年（1075年）には、勅撰和歌集の撰集を命じられましたが、当時それほど歌人として名高いわけではなかった通俊が選ばれた理由は明確にはなっていません。しかし、彼は歌壇の先人たちに協力を求め、周防内侍、康資王母、源経信らの意見も参考にしながら、応徳3年（1086年）に『後拾遺和歌集』を撰進しました。この和歌集の撰集においては、歌壇の重鎮であった源経信と密接な関係を持ち、『難後拾遺』『後拾遺問答』を交わすなど、彼の意見が選歌に大きな影響を与えました。通俊自身も『後拾遺和歌集』に5首を含む、計27首の和歌が勅撰和歌集に収録されていますが、残念ながら家集は現存していません。

また、通俊は小野宮流の有職故実にも精通しており、多くの公事に奉仕し、能吏としての評価も高かった人物です。漢詩文にも優れており、大江匡房と並び称されるほどの才能を持っていました。

官歴

康平2年（1059年） 正月5日：従五位下
康平5年（1062年） 4月12日：因幡権守
延久2年（1070年） 正月6日：従五位上、殿上
延久5年（1073年） 正月30日：兵部少輔
延久6年（1074年） 正月28日：少納言兼五位蔵人
承保2年（1075年） 正月5日：正五位下。6月13日：左少弁
承保4年（1077年） 10月3日：右中弁。11月8日：装束使。12月18日：従四位上
承暦2年（1078年） 正月20日：兼越前権守
承暦3年（1079年） 正月5日：正四位下
承暦4年（1080年） 正月：右宮城使。8月21日：蔵人頭
永保2年（1082年） 正月21日：左中弁。3月27日：兼右京大夫
永保3年（1083年） 10月1日：正四位上
応徳元年（1084年） 6月23日：参議兼右大弁、8月5日：右京大夫如元
応徳2年（1085年） 2月15日：兼伊予権守
応徳3年（1086年） 11月20日：従三位
寛治2年（1088年） 正月19日：正三位。12月22日：兼越前権守
寛治6年（1092年） 9月7日：兼大蔵卿
寛治7年（1093年） 2月：伊予権守
寛治8年（1094年） 6月13日：権中納言、止右大弁。12月：兼治部卿、従二位
承徳3年（1099年） 8月16日：薨去

系譜

父：藤原経平
母：筑前乳母（高階成順の娘）
養母：藤原家業の娘
妻：藤原顕綱の娘
男子：藤原定通（1095?-1115） - 藤原宗通の養子
生母不明の子女
男子：俊慶 - 興福寺得業
男子：相源 - 延暦寺大僧都
男子：仁俊 - 園城寺阿闍梨
女子：藤原経実室


藤原通俊は、その多才ぶりで平安時代中期から後期にかけての朝廷で重要な役割を果たした人物でした。

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