蜂須賀重喜

蜂須賀重喜：波乱の生涯を送った阿波徳島藩主

蜂須賀重喜（はちすか しげよし）は、江戸時代中期の阿波国（現在の徳島県）徳島藩の第10代藩主です。1738年、出羽秋田新田藩主・佐竹義道の四男として生まれ、幼名を岩五郎、初名を佐竹義居と名乗りました。その後、徳島藩主蜂須賀家の養子となり、波乱に満ちた生涯を送ることになります。

藩主就任と藩政改革

1754年、重喜は徳島藩第9代藩主・蜂須賀至央の末期養子となり、10代藩主として藩を継ぎました。養子入りに際し、名を政胤と改め、後に将軍徳川家重から偏諱を受け、重喜と名乗るようになります。この養子縁組は、相次ぐ後継ぎの早世により、家老の賀島出雲の提案で決まりました。

重喜は、藩主就任後、藩政改革に取り組みます。財政再建のための倹約令の発令、役席役高制の導入、若年寄の設置などがその主な内容です。特に役席役高制は、身分序列の固定化を招いた享保の改革の足高制を模倣したものでしたが、身分序列の崩壊を招くという点で、その性格は異なっていました。

隠居と晩年

しかし、重喜の藩政は長くは続きませんでした。1769年、藩政の不行き届きを理由に幕府から隠居を命じられ、長男の喜昭（後の治昭）に家督を譲ります。隠居後は、江戸や国元で過ごしましたが、贅沢な生活を送っていたため、幕府から咎められることもありました。晩年は、富田屋敷で過ごし、1801年に64歳で亡くなりました。

文化人としての側面

重喜は、文化人としても知られています。蜂須賀家の膨大な蔵書は、重喜の時代以降に増加したとされており、その収集は「阿波国文庫」として知られています。また、重喜以降、蜂須賀家では公家との婚姻が進むようになります。これは、7代藩主の墓が京都にあったため、墓参を名目に京都入りができたことが影響していると言われています。

公家との繋がり

重喜以降、蜂須賀家では公家との婚姻が進みました。これは、7代藩主蜂須賀宗英の墓が京都の清浄華院にあり、墓参と称した京都入りができたためと言われています。このため、重喜の娘たちは公家と婚姻関係を結び、家格の向上に貢献しました。

系譜と家族

重喜は、16男14女という多くの子宝に恵まれました。正室の他に複数の側室を持ち、多くの子孫がいます。長男の治昭は後を継いで藩主となり、次男以下の男子は臣籍に下り、家老などの藩政に参画しました。また、娘たちも公家や有力大名と婚姻関係を結び、家格の向上に貢献しました。

父: 佐竹義道
母: 内藤政森の娘
養父: 蜂須賀至央
正室: 伝姫（立花貞俶の四女）
主な子供:
治昭（長男、後の徳島藩主）
喜翰（次男、通称若狭）
儀子（次女、鷹司政熙正室、鷹司政通生母）
幸子（三女、醍醐輝久正室）
伊与姫（末女、戸沢正胤正室）

偏諱を与えた人物

重喜は、多くの人物に偏諱を与えています。特に、自身の名である「喜」の字を、息子たちや藩主一門に与え、自身の血筋を後世に伝えることに尽力しました。

蜂須賀喜昭（長男、のち治昭に改名）
蜂須賀喜翰（次男）
蜂須賀喜和（三男）
蜂須賀喜儀（四男、初名：喜起）
蜂須賀喜寛（六男、別名：允迪）
蜂須賀喜端（十男、別名：允澄）
蜂須賀喜憲（藩主一門）

関連作品

蜂須賀重喜は、小説や映画、テレビドラマなど、様々なメディアで描かれています。特に、吉川英治の小説『鳴門秘帖』では、幕府転覆の黒幕として描かれており、そのイメージは広く知られています。

小説
『阿淡夢物語』
吉川英治『鳴門秘帖』
映画
『鳴門秘帖』（1926-27年、1954年、1957年、1961年）
『甲賀屋敷』
テレビドラマ
『鳴門秘帖』（1959年、1966年、1977-78年、1990年、2018年）

脚注

[1] 浪華散人著『阿淡夢物語』

参考文献

『新訂寛政重修諸家譜』第六
『藩史大事典』
『阿波近世用語辞典』
中嶋繁雄『名君・暗君 江戸のお殿様』

関連項目

飯塚桃葉
柴野栗山
秋田騒動
阿波国文庫
東洲斎写楽

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