顧雍

顧雍（こ よう）

顧雍（168年 - 243年）は、中国後漢末期から三国時代の呉に仕えた政治家です。字は元歎（げんたん）。呉郡呉県（現在の江蘇省蘇州市）の名家の出身であり、孫権の時代に呉の丞相を務めました。

生涯

若き日

顧雍は若い頃から学問に励み、蔡邕（さいよう）に琴と学問を学びました。蔡邕は彼の才能を高く評価し、その将来性を予見したと言われています。州や郡の役所からの推薦を受け、20歳頃に合肥県長に任じられました。その後も婁、曲阿、上虞の地方官を歴任し、各地で優れた治績を上げました。

孫権への仕官

孫権が会稽太守になると、顧雍は郡の丞に任命され、太守の職務を代行しました。会稽で反乱が起こった際には、自ら兵を率いて鎮圧し、その手腕を高く評価されました。その後、孫権の元に戻り、左司馬に任じられます。孫権が呉王になると、昇進を重ねて大理奉丞となり、尚書令の職務を任され、陽遂郷侯に封じられました。

呉の丞相として

黄武4年（225年）には太常に任じられ、醴陵侯に改封されました。孫邵の死後、多くの重臣が張昭を丞相に推薦しましたが、孫権は顧雍を後任に選びました。顧雍は丞相として、公平さを重んじた人事を行い、自らの感情に左右されることがありませんでした。民衆の意見を積極的に聞き入れ、適切な政策を孫権に提案しました。建策が採用された場合は孫権の手柄とし、採用されなかった場合は決して他言しなかったため、孫権からの信頼は厚かったです。公の場では穏やかな物腰で意見を述べましたが、正しいと信じることは臆せず主張しました。

呂壱事件と晩年

嘉禾年間には、呂壱（りょいつ）という人物が権力を濫用し、多くの人々を陥れる事件が起こりました。顧雍自身も呂壱から謂れのない非難を受けましたが、呂壱が逮捕されると、自ら取り調べを行い、事件の真相を究明しました。呂壱に対して寛大な態度で接し、周囲からはその人格を賞賛されました。

赤烏6年（243年）に病死。76歳でした。死の直前には、孫権が見舞いに訪れ、その死を悼みました。

人物・逸話

顧雍は寡黙で落ち着いた性格であり、その行動は常に適切でした。孫権は彼を「顧君はものを言わぬが、言えば必ず的を射る」と評し、その洞察力の高さを評価しました。酒宴の席では、周囲の者が顧雍の目を気にして騒ぐのを控えたため、孫権は「顧公が同席すると、酒が楽しめなくなる」とこぼしたという逸話も残っています。

一族

顧雍の一族は呉の名家として知られ、多くの人材を輩出しました。長男の顧邵（こしょう）は若くして亡くなりましたが、その才能は高く評価されていました。孫の顧譚（こたん）と顧承（こしょう）も優れた人物として知られていましたが、二宮の変に巻き込まれ、不遇の死を遂げました。次男の顧裕（こゆう）の子である顧栄（こえい）は、東晋の時代に活躍しました。

評価

陳寿は『三国志』において、顧雍を「父祖以来の業績を基礎としながらも、それを智謀によって運営することで、栄華と官位を極めることに繋がった」と評価しています。東晋の袁宏は、その著書『三国名臣序賛』において、顧雍を呉の名臣の一人として挙げています。

三国志演義

小説『三国志演義』では、張紘（ちょうこう）の推薦で孫権に仕えることになっています。赤壁の戦いでは、降伏派の一人として登場し、曹操への降伏を主張します。孫権が即位すると、丞相に任命されています。

脚注

[1] 『三国志』呉志 顧雍伝
[2] 『三国志演義』

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