顧譚

顧譚（こ たん）

顧譚（205年 - 246年）は、中国三国時代の呉に仕えた武将、政治家です。字は子黙（しもく）。呉の名門である顧家の出身で、祖父は顧雍、父は顧邵という家柄です。母は陸遜の姉妹にあたります。

生涯

父の顧邵は人望が厚く、孫策の娘を妻に迎えるなど将来を嘱望されていましたが、豫章太守在任中に亡くなりました。

顧譚は若くして、会稽の謝賛や鍾離駰と並び称されるほどの評判を得ていました。身長は七尺八寸（約180cm）と高く、賈誼のような人物を理想とし、口数が少なく笑顔もあまり見せず、落ち着いた容姿と威厳を備えていました。軽はずみな発言をすることはなく、相応しい人物でなければ一日中何も話さないこともあったと伝えられています。

孤高な性格で人に媚びることがなかったため、恨まれることもありましたが、顧譚の上疏を聞いた孫権は、その才能を高く評価し、側近の徐詳以上であると称賛し、手厚い待遇を与えました。

20歳頃、諸葛恪、張休、陳表と共に、孫登（皇太子）の太子四友となり、中庶子・舗正都尉を歴任しました。

嘉禾6年（237年）には、喪に服するために職務を放棄する者が相次いだ際、その対応について意見を述べています。

赤烏年間には諸葛恪の後任として左節度となり、帳簿の計算を暗算でこなすなど、優れた事務処理能力を発揮し、部下からの信頼も厚かったとされています。奉車都尉の官位も加えられました。薛綜が選曹尚書に任命された際、その職を顧譚に譲ろうとしたという逸話も残っています。後に薛綜が選曹尚書を退任すると、後任として顧譚が選ばれました。孫権の姪の結婚式に出席した際、泥酔して騒ぎ、祖父の顧雍に叱責されたというエピソードも伝えられています。

赤烏4年（241年）に皇太子の孫登が亡くなると、孫登は遺言の中で、用いるべき人材の一人として顧譚の名を挙げています。

赤烏6年（243年）に祖父の顧雍が亡くなると、平尚書事に任命されました。

孫権が魯王孫覇を寵愛し、皇太子である孫和と同様の扱いをするようになると、顧譚は嫡庶の区別を明確にするよう諫言しました。このことが孫覇の恨みを買い、孫覇派の全寄との関係も悪化しました。さらに、241年の魏との芍陂の戦いの論功行賞を巡り、全寄の父である全琮の一族と、顧譚の弟や友人である張休らが対立しました。

赤烏8年（245年）、全寄は父と共謀して顧譚らを讒言し、顧譚、弟の顧承、張休、姚信らを交州へ流罪に処しました。孫権は当初、張休を処罰することをためらいましたが、全琮父子の強い抗議を受け、処罰せざるを得なくなりました。顧譚の才能を惜しんだ孫権は、顧承を許す代わりに顧譚に群臣の前で謝罪させようとしましたが、顧譚はこれを拒否し、讒言者を批判しました。この態度に役人は顧譚を死刑にすべきだと報告しましたが、孫権は顧雍の功績に免じて流罪にとどめました。

交州に流された顧譚は、悲しみを込めて『新言』二十篇を著しました。当時の顧譚の家には財産がほとんどなく、奴婢も十人に満たなかったと伝えられています。翌年、42歳で亡くなりました。

小説『三国志演義』には登場しません。

評価

陸機は、孫登が皇太子として東宮を確立するにあたり、孫権が教育係として優れた人材を選抜し、顧譚はその中でも特に清廉で識見に優れ、尊重されたと賞賛しています。太尉の范慎、謝景、羊徽といった高官も、顧譚の下に置かれたとされています。

薛綜は選曹尚書の職を譲る際、「顧譚は細やかな心遣いと精密さを持ち、正道を貫いて教化を及ぼし、才能は人物を照らし、徳は衆望に叶います」と評しました。

孫登も顧譚を高く評価していましたが、太子賓友となった羊衜は、「顧譚は精確だが冷酷である」と評しています。

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