顧栄

顧栄（顧榮、こ えい）

顧栄（生年不詳 - 312年）は、中国の三国時代の呉から西晋時代にかけて活躍した官僚・軍人です。字は彦先。呉国呉県（現在の江蘇省蘇州市）を本貫とし、祖父は呉の丞相を務めた顧雍という名門の家柄でした。東晋の元帝（司馬睿）に仕え、その才能を高く評価され、「五儁」の一人として知られています。

生涯

顧栄は、呉の宜都郡太守であった顧穆の子として生まれました。若くして呉に仕え、黄門侍郎や太子輔義都尉などの官職を歴任しました。280年に呉が西晋によって滅ぼされると、顧栄は陸機・陸雲兄弟と共に洛陽に移り住み、その優れた才能から「三俊」と称されました。

西晋では、郎中、尚書郎、太子中舎人、廷尉正などの官職を歴任しました。永康元年（300年）に趙王司馬倫が淮南王司馬允を殺害した際には、司馬允の属僚を皆殺しにしようとする司馬倫に対し、顧栄は公平な審理を行い、多くの人々を赦免しました。司馬倫が帝位を簒奪した際には、その子である司馬虔の下で長史を務めました。

その後、斉王司馬冏が司馬倫を打倒すると、顧栄は大司馬主簿に任じられました。しかし、司馬冏が権力を濫用するのを見て、身に危険が及ぶことを恐れ、酒に溺れる日々を送りました。友人の馮熊の働きかけにより、中書侍郎に任じられると、職務中は酒を飲まなくなったと言われています。

太安元年（302年）に長沙王司馬乂が司馬冏を破ると、顧栄は葛旟を討った功績により喜興伯に封じられ、太子中庶子に転じました。司馬乂が驃騎将軍となると、その下で長史を務めました。

永安元年（304年）に成都王司馬穎らが司馬乂を破ると、顧栄は司馬穎の下で丞相従事中郎となりました。恵帝が東海王司馬越に連行されて鄴に移ると、顧栄は侍中を兼ねて陵園に派遣されました。河間王司馬顒の部将である張方が洛陽を占拠したため、進むことができず、陳留に避難しました。同年11月、恵帝が張方に迫られて長安に移ると、顧栄は散騎常侍として召されましたが、朝廷の混乱を見て応じず、故郷の江南に戻りました。東海王司馬越が徐州で兵を集めると、顧栄は軍諮祭酒に任じられました。

永興2年（305年）には、広陵相の陳敏が歴陽で反乱を起こし、長江を南に渡って江南での割拠を図りました。顧栄は陳敏によって右将軍・丹陽国内史に任じられましたが、陳敏が江南の士人を殺害しようとした際には、これを諫めて止めさせました。永嘉元年（307年）には、周玘や甘卓・紀瞻らと密かに協議し、陳敏を討つために挙兵しました。顧栄は長江の橋を破壊し、南岸に兵を集めました。陳敏は1万人余りの兵を率いて出兵しましたが、長江を渡ることができませんでした。甘卓が陳敏の兵に向かって演説し、士気を動揺させることに成功しました。顧栄が羽扇をあおいで兵を進めると、陳敏の兵は潰走しました。陳敏の乱が平定されると、顧栄は故郷に戻りました。東海王司馬越によって侍中として召し出され、彭城まで進みましたが、禍を予見して軽舟で逃げ帰りました。

琅邪王司馬睿が江南に駐屯すると、顧栄はその下で軍司となり、散騎常侍の位を加えられました。司馬睿の諮問に答え、その進言はいずれも聞き入れられたと言われています。

永嘉6年（312年）、在官のまま死去しました。侍中・驃騎将軍・開府儀同三司の位を追贈され、諡は元とされました。建武元年（317年）に司馬睿が晋王となると、顧栄は公に追封されました。子の顧毗が後を継ぎ、官は散騎侍郎に上りました。

顧栄は、その卓越した才能と高潔な人柄によって、当時の人々から深く尊敬されました。彼の生涯は、西晋末期の混乱とした時代を生き抜いた一人の官僚の姿を鮮やかに描き出しています。

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