インドの鉄道

インドの鉄道

インドの鉄道は、その総延長が62,000kmを超える世界第4位の規模を誇る、重要な交通インフラです。運営の主体は国有のインド鉄道であり、鉄道省が管轄しています。その他、デリー・メトロのような都市鉄道事業者も存在します。

歴史

インドはアジアで最初に鉄道が導入された国の一つです。1830年代には建設現場での資材運搬用に鉄道が敷設され始め、1853年にはボンベイ（現ムンバイ）とターネーを結ぶ約40kmの路線が開業しました。

当初、鉄道は宗主国であったイギリスが、インドからの綿花、石炭、紅茶といった資源を輸送する手段として利用しました。そのため、インドの搾取を目的とした道具とみなされ、民族運動の標的となることもありました。しかし、中にはインド人資本家が建設した鉄道も存在し、飢饉の際に物資を輸送して地域を救ったことから「飢餓鉄道」と呼ばれるものもありました。

輸送状況

インドでは航空網も発達していますが、中長距離の移動手段として鉄道が広く利用されています。最優等列車である「ラージダーニー・エクスプレス」のエアコン付き一等寝台の運賃は、航空運賃の約1/4と比較的安価です。一般庶民向けのエアコンなし二等座席車はさらに安く、その差は10倍以上にもなります。主要都市間を結ぶ幹線や都市近郊では電化が進んでいますが、郊外ではディーゼル機関車も活躍しています。蒸気機関車は観光用を除いてほぼ全廃され、日本の新幹線方式による高速鉄道の導入も計画されています。

事業者

インドの鉄道事業は、国有のインド鉄道が中心ですが、港湾や鉱山などの産業用鉄道や、プランテーション用の専用鉄道などには私鉄も存在します。主な公営鉄道としては、以下のものがあります。

コルカタ地下鉄道
デリー地下鉄道
コンカン鉄道

鉄道網

インドの鉄道は、軌間が1,676mmの広軌で建設されましたが、地方路線では1,000mmや762mmの狭軌も採用されました。特殊な例として、輸送量が少なく険しい地形を考慮した610mmのダージリン・ヒマラヤ鉄道もあります。独立後、幹線では広軌への統一が進められ、主要都市間で直通運転が可能になりました。

輸送形態

観光列車

インドでは、観光客向けに豪華な観光列車が運行されています。これらの列車は特別な内装や給仕が提供され、2泊から1週間程度のツアーが組まれています。料金は他の列車に比べて高額で、例えば「ゴールデン・チャリオット」は7泊で約10万ルピーです。

主な観光列車には以下のようなものがあります。

パレス・オン・ホイールズ
ヘリテージ・オン・ホイールズ
ロイヤル・ラージャスターン・オン・ホイールズ
マハーラージャズ・エクスプレス
ゴールデン・チャリオット
ロイヤル・オリエント・トレイン
デカン・オデッセイ・トレイン
フェアリー・クイーン・トレイン

長距離列車

インドの長距離急行列車は、インド鉄道が運営しています。長距離列車のみを掲載した時刻表「Trains at a Glance」が発行されており、800往復以上の列車が運行されています。列車編成は、一等と二等の二等級制で、寝台車や座席車、エアコンの有無などによって5～8種類の車両があります。運賃には大きな差があり、一番安い車両と高い車両では15～40倍の差があります。駅の待合室も、乗車する車両の運賃に見合った設備が用意されています。主要路線はデリー、コルカタ、ムンバイ、チェンナイの4大都市間を結ぶ路線で、これらの都市を結ぶ優等列車が多数運行されています。

長距離優等列車

インドの主な長距離優等列車は以下の通りです。

ラージダーニー急行: 首都デリーと各州の主要都市を結ぶ夜行列車。
シャターブディー急行: 日着圏内の大都市間を結ぶ列車。
ドゥロント急行: 目的地までノンストップで直行する速達列車。

その他、以下のような列車も運行されています。

タージ急行: デリーとタージ・マハルのあるアグラ間を結ぶ観光客向け列車。
インターシティ急行: 主要都市間を結ぶ急行列車。
リンク急行: 主要都市間を結ぶ急行列車。
メイル: かつて速達郵便の輸送も担っていた列車。
パッセンジャー: 各駅停車。

中距離の移動にはバスも利用されますが、長距離移動は鉄道が最大の手段です。予約が取りにくい状況ですが、最近ではインターネット予約が可能になり、Eチケットが発行されるようになりました。

中距離列車

中距離列車は各地方鉄道が運営し、大都市と中小都市を結びます。普通列車や快速列車などがありますが、本数は多くありません。

近郊電車

デリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタ、ハイデラバード、プネー、ラクナウ・カーンプルなどでは通勤用の近郊電車が運行されています。これらの路線は各地方鉄道が管理しており、3両に1両の動力車を持つ動力分散方式で運転されています。1両あたりの定員は96人ですが、ラッシュ時の乗車率は300%に達することがあります。運賃が安く、運転間隔が短いことから、多くの人が利用しています。

地下鉄

2014年現在、デリー、コルカタ、バンガロールには地下鉄が開通しており、チェンナイでも建設中です。デリー・メトロは路線を拡大しており、将来的には世界最大級の都市鉄道網になると見込まれています。

路面電車

コルカタでは路面電車（トラム）が運行されています。

国際列車

現在、インドの鉄道はパキスタン、バングラデシュ、ネパールの鉄道と接続しており、今後はスリランカやブータンにも接続する計画があります。

文化

インドには世界遺産に登録されているナローゲージ鉄道が3つあります。ダージリン・ヒマラヤ鉄道、ニルギリ山岳鉄道、カールカー＝シムラー鉄道で、これらは「インドの山岳鉄道群」として登録されています。また、ムンバイのCST駅も歴史的建築物として世界遺産に登録されています。

隣接国との鉄道接続状況

接続あり: パキスタン、ネパール、バングラデシュ
* 接続なし: 中華人民共和国、ブータン、ミャンマー

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