ウインドシンセサイザー

ウインドシンセサイザーとは

ウインドシンセサイザーは、管楽器の演奏方法を模倣し、息の吹き込みや指使いによってシンセサイザーの音色をコントロールする電子楽器です。一般的には「ウインドシンセ」と略されます。木[[管楽器]]の操作法に基づくリリコン系と、金管楽器の操作法に基づくスタイナー系が存在しますが、リリコン系の機種が多く普及しています。ヤマハのEZ-TPは金管楽器型ながら独自の構造を持ちます。

初期の代表的な製品名である「リリコン」や「EWI」が、ウインドシンセサイザーの総称として使われることもありますが、この呼び方は減少傾向にあります。ちなみに、「ウィンドシンセ」という名称は、河合楽器製作所が商標権を保有しています。

管楽器奏者からのアプローチ

管楽器はそれぞれ固有の音色と音域を持ち、音色の変化はマウスピースやミュートの変更に限られます。しかし、ウインドシンセサイザーを使えば、様々な音色を演奏でき、音域の制限もありません。EZ-TPは息の流れではなく、歌声からMIDI信号を生成する独自方式を採用しており、ブレスコントロールが苦手な方でも歌が上手ければ演奏可能です。この歌声が楽音に変換される感覚は、管楽器の演奏における声帯から口唇への振動に似ています。

シンセサイザー奏者・シーケンサー利用者からのアプローチ

MIDIは鍵盤楽器を中心に発展し、シーケンサーも鍵盤楽器の演奏法に依拠しています。しかし、鍵盤楽器では微妙なピッチや強弱の変化を表現するのが難しく、管楽器のような滑らかな演奏は困難です。ウインドシンセサイザーを使えば、音量や音色、ピッチの変化をより自然に表現でき、打ち込み特有の機械的な印象を軽減できます。管楽器とシンセサイザーの両方に精通した演奏者にとって、ウインドシンセサイザーは理想的な電子楽器と言えるでしょう。

ただし、管楽器の運指を覚える負担は大きく、和音の演奏はできません。この課題を克服するために、シンセサイザーと鍵盤ハーモニカを融合させた電子鍵盤ハーモニカ（Hohner Electra-Melodica）も存在します。

ウインドシンセサイザーの構造

ウインドシンセサイザーは主に以下の3つの要素で構成されています。

1. マウスピース

マウスピースには、息の強さを感知するセンサーと、リードをくわえる圧力センサーが内蔵されています。息の強さによって音量やアタック感をコントロールし、息を感知すると同時に運指情報をMIDI信号として出力します。リードへの圧力は、主にピッチベンドの制御に使用され、ビブラート効果を得ることも可能です。ビブラート機能は、必要に応じて減弱・停止させることもできます。

2. キー装置

キー装置は、運指によって音の高さを決定します。多くの場合、サクソフォーンの運指を簡略化したものが採用されており、リコーダーの運指を知っていればある程度演奏できます。金管楽器を模した機種は、トランペットの運指を簡略化したものです。ピッチベンド用のホイールを備えた機種もあります。

3. インターフェース

インターフェースは、ウインドシンセサイザーで生成されたデータを音源モジュールなどに送信するための接続部分です。MIDI信号だけでなく、独自の信号で専用音源に接続する機種もあります。カシオのデジタルホーンやヤマハのEZ-TPのように、音源、アンプ、スピーカーを内蔵した機種もあり、利便性が高いです。これらの機種でもMIDI OUT端子があれば、外部音源を使用できます。

利用場面

ウインドシンセサイザーは、管楽器系の音色を奏でるのに最適です。特に、ヴァイオリンなどの擦弦楽器の音色との相性が良く、小規模楽団で活躍します。フュージョン音楽でよく使われますが、吹奏楽でのソロ楽器や、教育現場でも利用されています。入手困難な民族楽器や古楽器の音色を演奏するのにも適しており、鍵盤では表現しにくい迫力ある演奏が可能です。ステージでのパフォーマンスにも適しています。

打ち込みで制作された楽曲にウインドシンセサイザーの演奏を加えることで、平坦な印象を解消できます。シーケンサーでリアルタイム録音する際には、アフタータッチやピッチベンドのMIDIデータが過剰になる可能性があるため、データの整理が必要になる場合があります。

調性の設定と調律

ウインドシンセサイザー自体は移調楽器ではありませんが、サクソフォーンやクラリネットの楽譜をそのまま使えるように、変ロ調や変ホ調に設定する機能があるのが一般的です。この機能がない機種でも、音源側でトランスポーズを設定すれば同様の効果が得られます。他の楽器と合奏する際は、音源を適切に調律する必要がありますが、気温による影響は考慮する必要はありません。

代表的な演奏家

ウインドシンセサイザーを専門とするプロの演奏家は少ないと考えられます。サクソフォーン奏者が持ち替えで使用することが多く、日本ではT-SQUAREの伊東たけし、本田雅人、宮崎隆睦などが有名です。海外では、マイケル・ブレッカーやトム・スコットなどが知られています。クラリネット奏者の若林愛も、ユニット「Megumi♡Kei」でウインドシンセサイザーを演奏しています。

主なウインドシンセサイザー

コンピュトーン Lyricon
Steinerphone
Synthophone
Morrison Digital Trumpet
カシオ計算機 デジタルホーン
鈴木楽器製作所 MIDIリコーダー / MIDIメロディオン
AKAI EVI1000 / EWIシリーズ
ヤマハ WX7 / WX11 / WX5
ローランド エアロフォン
Sweden Berglund Instruments NuRAD

関連項目

MIDI
ブレス・コントローラ
* コントロールチェンジ

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