カスピ海横断鉄道

カスピ海横断鉄道：中央アジアの動脈

カスピ海横断鉄道は、中央アジア西部をシルクロードに沿うように伸びる鉄道であり、トランス・カスピ海鉄道、中央アジア鉄道、ザカスピ鉄道とも呼ばれます。19世紀に中央アジアへ領土を拡大したロシア帝国によって建設されました。

建設の背景

1879年に建設が開始された背景には、コーカンドでのロシア軍の敗北がありました。ロシア軍は、この地域での反乱を鎮圧するために軍を展開する必要に迫られ、そのための輸送手段として鉄道建設を推進しました。大英帝国のインド副王であったジョージ・カーゾンは、この鉄道がアジアにおけるイギリスの脅威になると述べています。

歴史

ミハイル・スコベレフ率いるロシア軍がザカスピを征服すると、カスピ海に近い内陸都市キジル・アルバト（現在のトルクメニスタンのセルダル）とロシア帝国・ザカスピ州を結ぶ鉄道が1879年に狭軌で建設されました。その後すぐにロシア式の広軌に改められ、1886年にはアシガバートやメルブ（現在のマル）まで延伸されました。

1888年にはブハラを経てサマルカンドまで完成し、カスピ海側の起点はカスピ海の港町クラスノボツク（現在のトルクメンバシ）に変更されました。1898年にはタシュケントやアンディジャンまで完成しましたが、1901年まではアムダリヤ川を渡る堅固な橋が完成しておらず、木製の仮橋が洪水で何度も流されました。

1905年にはトルクメンバシからバクーへカスピ海を連絡する鉄道連絡船が登場し、1906年にはトランス・アラル鉄道（オレンブルク-タシュケント間）が完成し、トルクメンバシからオレンブルクまで繋がりました。

ロシア革命時には、鉄道の建設作業員が革命の中心勢力となり、タシュケントのソビエト設立に中心的な役割を果たしました。鉄道は赤軍の軍事拠点となり、英印軍との戦闘が行われました。この鉄道の開通によって、タシュケントは赤軍の重要な軍事拠点となりました。

路線

カスピ海に面したトルクメニスタンのトルクメンバシを起点に、鉄道は南東へ延びています。カラクム砂漠の外縁部に沿って進んだ後、カラクーム運河に平行してトルクメニスタンの首都アシガバートに到達します。そこから南東に向かい山岳地帯の麓を進み、テジェンに至ります。テジェンからは、イランのマシュハドに繋がる鉄道が1990年代に完成しました。カスピ海横断鉄道は、テジェンから北東に向かい、マル (Mary) に至ります。マルからアフガニスタン国境のクシカ (Guşgy、Gushgy、Kushka) への支線は1890年代に完成しました。

カスピ海横断鉄道はさらにテュルクメナバート（かつてのチャルジョウ）でウズベキスタンのウルゲンチなどに達する支線を分岐し、ウズベキスタンのブハラではタジキスタンの首都ドゥシャンベやテルメズに向かう支線を分岐します。最後にカスピ海横断鉄道は、ウズベキスタンのサマルカンドを経て、ウズベキスタンの首都タシュケントに至り、終点となります。

シルダリヤ (Sirdaryo) では、アンディジャンなどフェルガナ盆地に向かう支線が分岐します。タシュケントでは、キルギスの首都ビシュケクやカザフスタン最大の都市アルマトイ（かつてのアルマアタ）を経てシベリアのノヴォシビルスクに至るトルキスタン・シベリア鉄道や、ロシアのオレンブルクに至るトランス・アラル鉄道、カザフスタンの首都アスタナに向かう鉄道など、各路線と接続しています。

カスピ海横断鉄道は、中央アジアの交通・経済において重要な役割を果たし、現在も地域の発展に貢献しています。

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