カトワーンの戦い

カトワーンの戦い：中央アジアの覇権をかけた激突

1141年9月9日、カトワーン草原（現在のウズベキスタン付近）において、西遼とセルジューク朝・西カラハン朝連合軍が激突したカトワーンの戦い。
この戦いは、中央アジアの勢力図を大きく塗り替えるとともに、その後の歴史に様々な影響を与えることになった。

戦いの背景

12世紀初頭、中国北部を支配していた遼（契丹）は、女真族の金によって滅ぼされた。
遼の皇族であった耶律大石（やりつたいせき）は、遼の遺民を率いて中央アジアへ進出し、東カラハン朝の拠点であるベラサグンを制圧。
ここに西遼（カラ・キタイ）を建国した。

勢力を拡大する西遼は、1137年にホジェンド近郊で西カラハン朝を破り、君主マフムード2世を臣従させた。
敗北したマフムード2世は、叔父にあたるセルジューク朝のスルターン・アフマド・サンジャルに救援を要請。
これに応じたサンジャルは、大軍を率いて西カラハン朝の首都サマルカンドに入城し、西遼に対抗する姿勢を示した。

一方、西遼はセルジューク朝の臣従国であったホラズム・シャー朝を懐柔し、セルジューク領への侵入を画策。
さらに、セルジューク朝と対立していたカルルク族を味方に引き入れ、着々と戦いの準備を進めていった。

戦闘の経過

両軍の兵力については諸説あるが、西遼軍は2万から30万、セルジューク軍は7万から10万と推定されている。
西遼軍には、3万から5万のカルルクの遊牧民も加わっていた。

1141年9月9日、サマルカンド北方のカトワーン草原において、ついに両軍は激突。
耶律大石は、部隊を3つに分け、右翼と左翼にそれぞれ精鋭部隊を配置し、セルジューク軍を包囲する作戦に出た。

西遼軍の猛攻により、セルジューク軍は総崩れとなり、本隊はサマルカンドから12km離れたDarghamというワジへと追い込まれた。
退路を断たれたセルジューク軍は壊滅的な打撃を受け、サンジャル自身も辛うじて戦場から脱出することに成功したものの、多くの司令官や后が捕虜となった。

戦いの影響

カトワーンの戦いにおける勝利後、耶律大石はサマルカンドに90日間滞在し、現地のイスラム教徒の貴族から臣従の誓いを受け、マフムード2世の兄弟であるイブラーヒームを新たな西カラハン朝の君主とした。
また、ホラズム・シャー朝も西遼の従属国となり、1142年には西遼の将軍エルブズがホラズム地方に侵入し、君主アトスズに年3万ディナールの貢納を課した。

カトワーンの戦いは、セルジューク朝の衰退を決定づけるとともに、中央アジアにおける西遼の覇権を確立する出来事となった。
さらに、この戦いの情報がシリアの十字軍を通じてヨーロッパに伝えられ、キリスト教国の君主プレスター・ジョンの伝説を生み出すきっかけになったとも言われている。

カトワーンの戦いは、単なる軍事的な衝突にとどまらず、政治、経済、文化など、多岐にわたる分野に影響を与えた、歴史的なターニングポイントであったと言えるだろう。

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