クタイ

クタイ・ハトゥン：モンケ・カアンの第2皇后

クタイ・ハトゥン（生没年不詳 - 1254年）は、モンゴル帝国の第4代皇帝モンケ・カアンの第2皇后であり、コンギラト部出身の女性です。彼女は、『元史』では忽台皇后、『集史』ではقوتای خاتون、ウィリアム・ルブルックの『旅行記』ではCotaと記されています。至元2年（1265年）には貞節皇后として追諡されました。

生涯

クタイ・ハトゥンは、コンギラト部の族長モンゲチンの娘として生まれました。コンギラト部は、チンギス・カンの正妃ボルテを輩出した名門であり、チンギス・カン一族との姻戚関係を通じて繁栄していました。

しかし、モンケ・カアンの治世になると、デイ・セチェン家は冷遇され、代わりにオイラト部のクドカ・ベキ家が重用されるようになります。この背景には、モンケ即位時にクーデターを企てたオゴデイ家のシレムンとデイ・セチェンが密接な関係にあったことが影響していると考えられています。

モンケの妃の中でも、オイラト出身のオグルトトミシュが寵愛を受け、周囲からも重んじられていたのに対し、クタイ・ハトゥンに関する記述は史料にほとんど残っていません。子供についても記録がなく、ルブルックの『旅行記』には、彼女が病に倒れた際、モンケが放置して移動し、その結果亡くなったと記されています。

クタイ・ハトゥンの死後、妹のイェスルが彼女の地位を引き継ぎ、モンケの第2皇后となりました。『集史』には、モンケが1259年に亡くなった際、クタイ・ハトゥンがモンケの棺を弔ったとありますが、これは実際には妹のイェスルのことと考えられています。

ルブルックの旅行記

1254年、フランス王ルイ9世の命によりモンケ・カアンのもとを訪れたウィリアム・ルブルックは、モンケの妃たちと面会し、クタイ・ハトゥンについても記録を残しています。

ルブルックの記録によれば、クタイ・ハトゥンはモンケの第2皇后であり、偶像崇拝者（仏教徒？）であり、1254年に病気で亡くなったとされています。この記述は、『集史』の内容とも一致しています。

まとめ

クタイ・ハトゥンは、モンケ・カアンの第2皇后として短い生涯を終えました。彼女に関する史料は少ないものの、ルブルックの旅行記などから、当時のモンゴル帝国の宮廷における后妃の地位や生活の一端を垣間見ることができます。また、彼女の出自であるコンギラト部の盛衰や、モンケ・カアンの治世における政治的な変化も、彼女の生涯を通じて知ることができます。

参考文献
宇野伸浩「モンゴル帝国のオルド」『東方学』第76輯、1988年
宇野伸浩「チンギス・カン家の通婚関係の変遷」『東洋史研究』52号、1993年
志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
村岡倫「モンケ・カアンの後裔たちとカラコルム」『モンゴル国現存モンゴル帝国・元朝碑文の研究』大阪国際大学、2013年
* 護雅夫訳 『中央アジア・蒙古旅行記』講談社、2016年

もう一度検索