グレート・アントニオ

グレート・アントニオ：伝説の怪力プロレスラー

グレート・アントニオ（本名：アントニオ・バリチェビッチ）は、1925年10月10日にクロアチアのザグレブで生まれ、2003年9月7日にカナダのモントリオールで亡くなったプロレスラー、そしてストロングマンです。その怪力ぶりは伝説的で、数々の驚異的な記録を打ち立てました。

カナダへの移住とストロングマンとしてのキャリア

1945年、クロアチアがユーゴスラビアに併合された後、アントニオはカナダのノバスコシア州ハリファックスに移住しました。そこで彼はその並外れた怪力を活かし、スポーツエンターテイメントの世界でキャリアをスタートさせます。1952年には、433トンもの列車を19.8メートルも牽引し、ギネス世界記録に登録されました。さらに1960年には、乗客を乗せた4台の路線バスを牽引するという偉業を成し遂げ、再びギネス世界記録を更新しました。

プロレスラーとしての活躍

サーカスやカーニバルのアトラクションで活躍する傍ら、アントニオはプロレスのリングにも上がりました。1959年にはテキサスのダラス地区を皮切りに、カナダやアメリカ各地を転戦。ヒューストンではトシ東郷＆デューク・ケオムカ、カルガリーではバション兄弟といった強豪と対戦しました。トロントではジン・キニスキー、ミネアポリスではバーン・ガニアなど、名だたるレスラーたちと拳を交えました。特にミネアポリス地区（後のAWA）のカナダでの拠点であったウィニペグでは、巨漢レスラーのヘイスタック・カルホーンとの対戦も実現しています。

1960年には、ニューヨーク地区（後のWWWF）にも参戦し、ブルーノ・サンマルチノ、アントニオ・ロッカらと対戦しました。ヒールとしてのポジションで、パンピロ・フィルポやドクター・ジェリー・グラハム、ワルドー・フォン・エリックらとタッグを組みました。

日本での騒動

1961年5月、グレート東郷のブッキングで日本プロレスの『第3回ワールド大リーグ戦』に初来日。蔵前国技館では力道山のインターナショナル・ヘビー級王座に挑戦しました。来日時には羽田空港で報道陣にソファーを投げつけ、神宮外苑絵画館前で大型バス3台を牽引するなど、そのパフォーマンスは大きな話題となりました。しかし、試合自体では実力を発揮できず、力道山とのタイトルマッチではストレート負けを喫しました。さらに、観客動員への貢献を鼻にかけ、ボーナスの支払いや契約延長を要求するなど増長した態度を見せたため、同シリーズに来日していたミスターXやカール・クラウザーらに制裁を受け、契約満了をもってシリーズ途中で帰国することになりました。

その後のキャリア

帰国後はオクラホマ地区を経て、テキサスのアマリロ地区に登場。ドリー・ファンク・シニアが保持していたアマリロ版のNWA北米ヘビー級王座に挑戦しました。その後も、"タフ" トニー・ボーンやスニー・ウォー・クラウドといったレスラーとの対戦を重ねました。1963年を最後にアメリカでの試合記録は途絶え、その後はサーカス業界に戻ったとされています（カナダでは1964年、1965年、1971年に試合記録が残っています）。

1977年には新日本プロレスに乱入し、16年ぶりの再来日を果たしました。中堅・若手選手とのハンディキャップマッチや坂口征二とのシングルマッチを経て、最終戦ではアントニオ猪木と対戦しましたが惨敗しました。この再来日時にもバス牽引のデモンストレーションを行いましたが、前回のような派手さはありませんでした。この猪木戦を最後に、アントニオはプロレスの世界から完全に引退しました。

晩年

1981年には映画『人類創世』に出演し、モントリオールの地方テレビ局にも出演するなどしましたが、その後は定職につかず、経済的に困窮しました。自身のポストカードを売るなどしてホームレスとして生活し、晩年の20年ほどを過ごしました。モントリオールの街では、駅のホームやドーナツ店でよく見かけられ、自身を地球外生命体だと主張するなど、奇妙な行動が目立ちましたが、地元では愛される存在でした。

死後

2003年9月7日、モントリオールで心臓発作により77歳で亡くなりました。彼の死後、市民によって彼を顕彰する壁画やベンチなどが作られました。晩年に集めていた膨大なコレクションの中には、著名人からの手紙や写真が含まれており、その特異な人物像を物語っています。

グレート・アントニオは、カナダでは広く知られた存在であり、子供向けの絵本や音楽作品の題材にもなっています。彼の生涯は、その怪力ぶりとともに、波乱に満ちたものでした。

得意技

ボディ・プレス
ハンマー・パンチ

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