ザ・ファンクス

ザ・ファンクス：日本プロレス界に旋風を巻き起こした伝説の兄弟タッグ

ザ・ファンクスは、アメリカ合衆国出身のプロレスラー、ドリー・ファンク・ジュニアとテリー・ファンクからなる兄弟タッグチームです。1970～80年代、日本プロレスおよび全日本プロレスにおいて、圧倒的な人気を誇りました。 それまでの外国人レスラーがヒール（悪役）として描かれるのが通例だった日本プロレス界において、ファンクスは異例的にベビーフェイス（善玉）として迎え入れられ、多くの日本人レスラーと共闘する姿が、日本のファンの心を掴みました。

蔵前国技館での伝説と人気爆発

ファンクスの人気が爆発的に高まったのは、1977年12月、蔵前国技館で開催された世界オープンタッグ選手権決勝戦でした。この試合で、テリー・ファンクがアブドーラ・ザ・ブッチャー＆ザ・シークの凶悪な攻撃を受け、右腕を負傷して一時退場。しかし、劣勢に立たされたドリー・ファンク・ジュニアを救うべく、テリーは再びリングに舞い戻り、驚異的な闘志を見せつけました。この感動的なシーンは、日本のプロレスファンの心に深く刻まれ、日本プロレス史における名場面として語り継がれています。この試合以降、ファンクスとブッチャー＆シークの対戦は全日本プロレスの看板カードとなりました。

熱狂的なファンクス旋風

ファンクスは、特に若い女性を中心に熱狂的な人気を集め、彼らを応援する女性ファンの親衛隊が結成されるほどでした。全日本プロレスのリングサイドには、チアガールが登場するなど、ファンクス人気は社会現象と言えるほどの盛り上がりを見せました。スタン・ハンセンの自伝には、「全日本のエースは馬場・鶴田でなくファンクス。新日本と全日本の差は猪木とファンクスの差」という記述があり、その人気ぶりを如実に示しています。1981年には、インターナショナル・ヘビー級王座にドリーが戴冠、初防衛戦の相手は弟のテリーという、兄弟対決が実現しました。

新世代の台頭とテリーの引退

しかし、1980年代に入ると、スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディといった新世代レスラーの台頭により、ファンクスの勢いは徐々に衰えていきました。1982年の世界最強タッグ決定リーグ戦では、決勝でハンセン＆ブロディに反則勝ちで優勝するなど、苦しい戦いを強いられることになります。テリーの膝の故障も、ファンクスの衰退に影響を与えました。1983年、テリーは惜しまれつつも現役を引退。彼の引退試合は、ファンクス人気を象徴する感動的な興行となりました。テリーは1984年に現役復帰しますが、以前のような熱狂は戻ってきませんでした。

アメリカでの活躍とWWF参戦

アメリカでは、テキサス州アマリロを拠点にNWAウエスタン・ステーツ・スポーツを主宰するなど、プロモーターとしても活躍しました。アマリロではベビーフェイスとして人気を博しましたが、他の地域ではヒールとして活動。フロリダやジョージアでは、ブリスコ・ブラザーズとの抗争が繰り広げられました。1986年には、WWF（現WWE）にも参戦。ハルク・ホーガンやブリティッシュ・ブルドッグスらと激闘を繰り広げました。テリーの負傷後は、ドリーがジェシー・バーをジミー・ジャック・ファンクとして新たなファンクスを結成するなど、様々な試みを行いました。

後年の活躍とレガシー

その後、ECWやスモーキー・マウンテン・レスリングなどにも参戦し、1999年にはFMWの10周年記念興行で来日。2001年には新日本プロレスに初参戦し、2013年には22年ぶりに全日本プロレスに帰還、両国国技館で試合を行いました。2009年には、WWE殿堂入りを果たし、その功績は後世に語り継がれています。2023年8月23日、テリー・ファンクの死去により、ファンクスとしての活動は幕を閉じました。

数々のタイトル獲得と名勝負

ザ・ファンクスは、NWA世界タッグ王座、NWA世界ヘビー級王座、インターナショナル・タッグ王座など、数々のタイトルを獲得。ジャイアント馬場＆アントニオ猪木、アブドーラ・ザ・ブッチャー＆ザ・シーク、スタン・ハンセン＆ブルーザー・ブロディなど、多くの伝説的レスラーと名勝負を繰り広げました。彼らのスピニング・トー・ホールドは、「ファンク一家の伝家の宝刀」と呼ばれ、ファンクスの代名詞となりました。

日本におけるファンクス家の影響

日本では、ドリー・ファンク・シニア、スタン・ハンセン、テッド・デビアス、ディック・スレーターなど、多くのレスラーがファンクス家と関わっており、「ファンク一家」と呼ばれることもあります。彼らの存在は、日本プロレス界に大きな影響を与え、現在もなお多くのファンから愛され続けています。

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