セリア (ブルネイ)

ブルネイの石油の町、セリア

セリアは、ブルネイ・ダルサラーム国のブライト地区に位置する、同国で3番目に大きな町です。正式名称はプカン・セリア（Pekan Seria）で、「町」を意味するマレー語の「プカン」が冠されています。また、スリアとも表記されます。本稿では、セリアの郊外にあるパナガ、カンポン・バル、アンドゥキ地域についても言及しますが、同じセリア郡のバダスは対象外とします。

町名の由来

セリアの旧称は「野生鳩の野原」を意味するパダン・ベラワでした。現在のセリアという名前は、1929年にブルネイで初めて石油が発見された場所の近くを流れる川の名前に由来します。現地では、セリア川で石油が発見されたことが、この地域がセリアと呼ばれるようになった理由だとされています。

位置と地理

セリアはブライト地区のセリア郡に属し、碁盤目状に整備された市街地が特徴です。主要な道路は、北からテンガー通り、東からローロン・サトゥ・バラット通り、南からボルキア通り、西からローロン・ティガ・バラット通りが町を繋いでいます。町の面積は0.603平方キロメートルです。

セリアは、ブライト地区の行政庁所在地クアラブライトから西へ16km、首都バンダルスリブガワンから北東へ100kmの場所に位置します。また、ブライト地区のラビ郡はセリアの東に位置しています。

歴史

戦前

1929年、セリア川西岸のパダン・ベラワで最初の商業油田が発見されました。1932年からは石油の輸出が開始されましたが、ブルネイには積み出し設備がなかったため、パイプラインを通してミリ（サラワク州）に送られ、そこから輸出されました。この方法は1972年の石油危機まで続きました。

セリアの町は、1936年に地方公共団体として官報に公示されました。それまではクアラ・ブライト衛生局とクアラ・ブライト行政当局の管轄下にありました。

戦中

第二次世界大戦中、セリアは日本軍がボルネオ島に上陸した最初の地点となりました。1941年 12月16日、日本軍の川口支隊が侵攻を開始しましたが、イギリス軍は事前に油田を破壊していました。しかし、日本軍は速やかに油田を復旧させ、3年後には生産量を戦前の水準までほぼ回復させました。終戦間際には、日本に供給される石油の大半がセリア産となりました。

1945年6月10日、オーストラリア軍がムアラに上陸すると、日本軍による破壊活動が始まりました。6月29日にオーストラリア軍がセリアに到着した時には、38か所の油井が炎上し、町は混乱を極めていました。8月にはアメリカの消防部隊が到着し、11月には生産が復活、12月には原油の輸出が再開されました。

戦後

セリアは1962年 12月8日に発生した、イギリス軍によって鎮圧された小規模な反乱（アザハリの反乱）の中心地の一つとなりました。

その後、ブルネイ国王オマル・アリ・サイフディン三世の治世下で、スルタン・オマル・アリ通りを中心に商業施設が発展しました。

セリアの郊外 地域

セリア町にはカンポン（村）はありませんが、近隣のカンポンはセリアの郊外として機能しています。

パナガ

パナガはクアラ・ブライトとセリアの中間に位置し、ブルネイシェル石油の社宅や施設が多くあります。ウタラ通りには外国籍の居住者が多く、ブルネイシェル石油本社やパナガ・クラブなどの施設があります。テンガー通りにはカナダ風のログハウスが並び、パナガ警察署周辺はマレー人が多数派を占めています。パナガの西部にはイギリス軍の直轄地があります。セリアの北西部には、イギリス陸軍隊員とブルネイシェル石油の従業員の住宅が混在しています。

カンポン・バル

カンポン・バルはセリアの東、ベラ川の左岸に位置し、中国人居住区が中心です。かつて日本人が整備した木製鉄道の廃線跡が残っています。

その他

カンポン・ローロング・ティガ・セルタンは政府が開発した新しい村で、セリアの南に位置します。カンポン・パーピンダハン・バルも同様の村で、セリアの西にあります。サンゲイ・ベラはセリアの北西に位置する工業地域で、ブルネイ唯一の石油精製工場があります。アンドゥキはセリアとルムトの間に位置し、アンドゥキ飛行場とレクリエーション地区があります。その他、カンポン・ペラコン、カンポン・ジャバン（別名: カンポン・セティンガン）などの地域があります。

天然資源

セリアはブルネイの石油産業の中心であり、1929年に発見された油田は、現在も操業を続けています。町中には無数のうなずきロバ（石油汲み上げ装置）が見られ、セリアの象徴となっています。1953年には、主要な油井が突然噴出する事故が発生しました。

パナガに本社を置くブルネイシェル石油は、石油・天然ガス産業に関する様々な施設をセリアに置いています。セリアには、セリア原油ターミナル、新ガス圧縮プラント、新工業地域などがあります。

観光地

- セリアモスク: ブルネイ初のモスクで、ドーム状の建築様式が特徴です。
- 石油・ガス発見センター: ブルネイシェル石油が運営する対話型博物館です。
- 10億バレル記念碑: セリア石油産出地帯で原油が10億バレル産出されたことを記念した碑です。
- うなずきロバのモニュメント: セリアを象徴する石油掘削機のモニュメントです。
- 自由の像: マウラナ通りとウタラ通りのラウンドアバウトに設置されています。
- サンゲイ・セリア三角江: 渡り鳥の観察場所として知られています。
- サイチョウ生息地: パナガはサイチョウと人間が近接して暮らす珍しい地区です。

スポーツとレクリエーション

パナガ・クラブには18ホールのゴルフコースがあり、ブルネイシェル・レクリエーションクラブには馬術競技場があります。アンドゥキのレクリエーション記念公園では、釣りやウィンドサーフィンが楽しめます。石油・ガス発見センターには、ブルネイ唯一の映画館があります。

NHL選手のクレイグ・アダムスはセリア出身です。

交通

道路

セリアのほとんどの道路は舗装されています。スルタン・オマル・アリ通りは主要な商店街となっています。

セリアは、クアラ・ブライト方面からの道路と、ルムト、ラビ、バンダルスリブガワン方面からの道路が交わる地点です。セリアバイパスは、マレーシアとの国境付近からムアラに至る道路で、セリア南部を通過します。

タクシー乗り場とバスターミナルはスルタン・オマル・アリ通りとブンガ・ピナン通りの交差点にあります。バスはクアラ・ブライト、バンダルスリブガワン、サンゲイ・リアン方面に運行しています。