タコノキ属

タコノキ属（パンダナス）

タコノキ属、またはパンダナス属 (Pandanus) は、熱帯地方に広く分布する常緑樹の仲間です。世界では約600種もの種類が存在し、アジア、アフリカ、そして環太平洋地域といった熱帯や亜熱帯の地域でその姿を見ることができます。

形態

タコノキ属の植物は、直立するものもあれば、地面を這うように成長するものもあり、樹高は1メートルに満たないものから、20メートルを超えるものまで多様な形態を示します。一般的には、がっしりとした幹から大きく枝を広げ、その周囲には落葉した跡が無数に残されています。特徴的なのは、地面から多数の太い支柱根を出し、枝や葉、そして果実の重さを支えている点です。

葉は長く、厚く、硬い帯状で、その長さは種類によって30センチメートルから2メートル以上に、幅も1.5センチメートルから10センチメートルと大きく異なります。葉の基部は茎を抱くようについており、葉が落ちた後もその跡は茎に残ります。さらに、葉の縁や中心脈には鋭い棘があります。

タコノキ属は雌雄異株であり、雄花と雌花は別々の個体につきます。雄花は2～3センチメートルほどの長さで、白い花びらに包まれ芳香を放ちます。雌株は、苞葉に包まれた球状の果実をつけます。この果実は直径10～12センチメートルにもなり、パイナップルのような形状で、多数の多角形の小さな果実が集まってできています。外側は肉質で、内側は繊維質です。果実は成熟すると緑色から明るいオレンジ色へと変化し、種によっては食用となります。その実を食べるのは人間だけではありません。コウモリ、ネズミ、カニ、ゾウ、オオトカゲなど、様々な動物たちがタコノキの果実を食物として利用しています。しかしながら、タコノキの種子の散布は、動物によるものよりも、水に流されて運ばれることが主な方法と考えられています。

利用

タコノキ属の植物は、古くから様々な用途に利用されてきました。

工芸

特に、その葉は手工芸品の材料として広く用いられています。若い葉は切っても再生するため、定期的に採取することが可能です。葉を細かく裂いてロープやマット、その他様々な製品へと加工されます。場合によっては染色なども施され、より精巧な製品が作られます。このような作業は、伝統的に女性たちが担ってきました。

食材

東南アジアでは、ニオイタコノキ（P. amaryllifolius）の葉が香辛料として重宝されています。ナシレマなどのご飯料理やカレー、カヤジャムなどのデザートなど、幅広い料理に使用され、独特の芳香を与えます。特にデザートでは、チョコレートとの組み合わせが人気です。インドネシア語やマレー語では「daun pandan」、中国語では「斑蘭」と呼ばれ、料理では葉をひも状に裂いて結び、鍋に入れて使用し、食べ終わる前に取り除きます。また、乾燥した葉や葉から抽出したエキスなども販売されています。

インドでは、アダンなどの花から蒸留した抽出液であるキューラ（Kewra）が、飲み物やデザートの風味付け、宗教儀式、髪飾りなど幅広い用途で使われます。

沖縄県では、アダンがお盆の供物として用いられます。かつては新芽や果実の一部が食用とされていましたが、現在では、八重山列島の精進料理を除いて、ほとんど食用として利用されることはありません。

その他の利用

オセアニアでは、タコノキ属植物のほぼすべての部位が、様々な用途に利用されています。ハワイなどのポリネシア地域では、果実の繊維がブラシやデンタルフロスとして使われ、葉は腰蓑やカヌー、茅葺屋根の材料として利用されています。また、家屋の建材、衣服や織物、医療、インテリアなど、その用途は多岐に渡ります。

興味深いことに、ニューカレドニアのカレドニアガラスは、タコノキの葉を道具として利用します。葉を細く裂いて棒状にし、その縁のギザギザを利用して、朽ち木の中にいる虫を捕まえるのです。

各地の呼称

タコノキ属の植物は、地域によって様々な名前で呼ばれています。例として、チャモロ語、中国語（広東語・北京官話）、ディベヒ語、ハワイ語、ヒンディー語、インドネシア語、日本語、パンパンガ語、クメール語、ラーオ語、マレー語、マラヤーラム語、マラーティー語、マーシャル語、ペルシア語、フィリピン語、ラロトンガ語、サモア語、シンハラ語、タガログ語、タヒチ語、タイ語、トンガ語、ベトナム語など、多くの言語における名称が知られています。

参考文献

Wagner WL, Herbst DR, Sohmer SH (1999). Manual of the flowering plants of Hawaii (Rev Sub edition ed.). University of Hawaii Press. pp. 1948. ISBN 978-0824821661
佐竹義輔・亘理俊次・原寛・冨成忠夫 編『日本の野生植物 木本〈2〉』平凡社、1989年。ISBN 978-4582535051
* 風間計博「キリバス南部珊瑚島におけるパンダナス果実保存食品の維持と消失--植物利用と村集会所・土地・先祖との連環」『History and anthropology』第33巻、2005年、182-37頁

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