デノン

デノンの歴史とブランドの変遷

デノン（DENON）は、1939年に設立された株式会社日本電音機製作所をルーツとする音響機器ブランドです。その起源は、1934年に坪田耕一によって設立された日本電気音響研究所に遡ります。当初は円盤録音機の開発に力を注ぎ、1939年に株式会社化された際に「DENON」ブランドが誕生しました。このブランド名は、社名の「電音機」に由来し、当初は「デンオン」と読まれていましたが、海外での発音のしやすさから「デノン」が国際的に採用されました。

1944年には社名を日本電気音響株式会社に変更し、1947年には日本コロムビア株式会社の系列下に入りました。1963年には日本コロムビアに吸収合併され、同社の音響機器事業のブランド名として使用されるようになります。しかし、2001年に日本コロムビアの経営再建のため、株式会社デノンとして分社化され、独立した企業となりました。

分社化とディーアンドエムホールディングス傘下へ

2001年10月1日、日本コロムビアのAV機器製造部門が分離独立し、株式会社デノンが設立されました。リップルウッドの子会社であるニューデノンが日本コロムビアからデノン株式の98%を買収し、デノンはリップルウッドの実質的な連結子会社となります。2002年5月14日には、日本マランツ株式会社との株式移転により、株式会社ディーアンドエムホールディングスが設立され、デノンはその完全子会社となりました。

2005年4月1日には、ディーアンドエムホールディングスと合併し、民生機販売会社として株式会社デノンコンシューマーマーケティングが分割設立されました。ディーアンドエムホールディングスの傘下には、マランツ、マッキントッシュ、ラボ、D&Mプロフェッショナル、SNELL、ボストンアコースティックなどのブランドがありますが、各々の設計部や販売網は独立しており、現在もブランド間の差別化が図られています。

日本電気音響研究所の創設と初期の技術革新

1934年、早稲田大学理工学部を卒業したばかりの坪田耕一が「日本電気音響研究所」を設立しました。坪田は学生時代から円盤録音機のカッターの研究をしており、1938年には日本フィルモンに入社し、国産初の円盤録音機を完成させました。

当時、磁気テープ録音機の音質は実用レベルに達しておらず、録音と再生は円盤録音機やオプティカル・サウンドで行われていました。円盤録音機はレコード会社などで使用されていましたが、大型で移動が困難でした。1936年のベルリンオリンピックでは、テレフンケン製の小型円盤録音機が使用され、その即時性が放送に貢献しました。NHKは1940年の東京オリンピックに向けてテレフンケン製の円盤録音機を導入するとともに、国産化を模索し、坪田もその一翼を担いました。

株式会社日本電音機製作所の設立とDENONブランドの誕生

1939年5月、研究所を会社組織に改め、「株式会社日本電音機製作所」が設立されました。この時からDENONブランドが使用され始めました。同年9月には、NHK仕様の円盤録音機DENON TPR-14-Cが完成し、NHKに納入されました。

日本コロムビアとの合併とオーディオ機器事業の発展

1963年、日本電気音響は日本コロムビアに吸収合併され、日本コロムビアの音響機器事業となりました。旧電音の三鷹事業所では、ダイレクトドライブターンテーブルやオープンリールテープレコーダーが開発され、川崎事業所ではテレビ、ステレオ、楽器類、白物家電などが製造されました。

1970年代にはHi-Fi市場が隆盛し、三鷹事業所は業務用機器の技術を応用した民生用オーディオ機器を開発しました。特に有名なモデルとしてDP-3000ダイレクトドライブターンテーブルやDH-710オープンリールテープレコーダーがあります。川崎事業所ではハイファイオーディオアンプやチューナー、スピーカーなどがDENONブランドで発売されました。

1983年には三鷹事業所が福島県白河市に移転し、「白河事業所」として稼働を開始しました。現在も、この工場でデノンの主要製品が製造されています。

コロムビアブランドとDENONブランドの展開

1970年代から1980年代にかけて、ポータブルレコードプレーヤーやカラオケ機器などのゼネラルオーディオ機器は、OEMで日立製作所や三菱電機に供給されました。また、カラーテレビや家庭用ビデオデッキは日立からOEM供給を受け、コロムビアブランドで販売されました。1990年代には、大型テレビのみDENONブランドで販売されました。

1974年に発売されたポータブルレコードプレーヤー「てんとう虫」をはじめとするユニークな製品も開発されました。特に、1980年に発売された「フリースタイル」は、スピッツのシングル「ロビンソン」のMVに使用されたことで人気が再燃し、デノンへの分社化後も製造が続けられました。2019年には、太知ホールディングスにより復刻版が発売されています。

デノンの技術革新と代表的な製品

デノンは、1972年に世界で初めて実用化したPCMレコーダー「DN-023R」など、数々の技術革新を成し遂げてきました。また、アンプ、プレーヤー、スピーカーなど、幅広いオーディオ製品を製造しており、特にピュアオーディオ分野で強いブランド力を誇っています。

DENONレーベルの展開

日本電音が日本コロムビアに合併されてからは、音楽レーベルの名称にも『DENON』が用いられています。当初はポップス系のレーベルとして存在し、その後、クラシックやジャズなど高音質を期待されるジャンルの音楽のためのレーベルとしてリニューアルしました。

株式会社デノンの設立と現在

2001年、リップルウッド・ホールディングス主導による日本コロムビアの経営再建の際に、音響機器事業が分離独立し、株式会社デノンが設立されました。新会社では、DENONの読みを「デノン」とし、日本国内の新たな商標としました。現在は、ディーアンドエムホールディングス傘下で、高品質なオーディオ製品を提供し続けています。

デノンの事業領域と競合

デノンは、ホームシアター向けの音響機器、ハイコンポ、Hi-Fiコンポーネント、デスクトップオーディオ、電子楽器などを製造販売しています。日本では、マランツ、ラックスマン、ティアック、ヤマハ、アキュフェーズなどのブランドと競合しています。

代表的な製品一覧

• - AVサラウンドアンプ
• - ブルーレイディスク/DVDプレーヤー
• - プリメインアンプ
• - AM/FMチューナー
• - スーパーオーディオCDプレーヤー
• - CDプレーヤー
• - カートリッジ
• - スピーカーシステム
• - ホームシアターシステム
• - システムオーディオ
• - レコードプレーヤー
• - ヘッドホン・イヤホン
• - Bluetoothスピーカー
• - Wi-Fiスピーカー

玉音放送とデノン

1945年8月15日の玉音放送では、昭和天皇の肉声がDENON製の機器で録音されました。

デノンのCMキャラクター

デノンのCMには、麗美、笑福亭鶴瓶、島田奈美、後藤久美子、国実百合、アブドーラ・ザ・ブッチャーなど、多くの著名人が起用されました。

デノンは、長年の歴史と技術革新を誇る音響機器ブランドとして、これからも高品質な製品を提供し続けることでしょう。

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