トマス・モウブレー (初代ノーフォーク公)

初代ノーフォーク公トマス・モウブレー

初代ノーフォーク公トマス・モウブレー（1366年 - 1399年）は、中世イングランドの激動期を生きた貴族です。モウブレー男爵家の出身で、その生涯はリチャード2世の治世における権力闘争と密接に結びついていました。

生涯

1379年、兄の急死によりモウブレー男爵とノッティンガム伯を継承。1383年にはガーター勲章を受勲し、軍務伯にも任命されました。当初はリチャード2世の専制的な政治に不満を抱き、グロスター公トマス・オブ・ウッドストックらと共に訴追派貴族として活動。1388年の非情議会では、国王の寵臣たちの追放に貢献しました。

しかし、その後はリチャード2世に重用され、1391年にカレー総督に任命。1397年にはノーフォーク公を叙爵され、ヘンリー・ボリングブルック（後のヘンリー4世）と共に国王側へ鞍替えしました。この間、かつての同志であったグロスター公らが反逆罪で逮捕・処刑されるという政変が起こります。

1398年、ボリングブルックに反逆罪で訴えられ、決闘寸前まで発展。リチャード2世の介入により、2人とも国外追放処分となります。翌1399年、ボリングブルックが挙兵しリチャード2世を廃位、ヘンリー4世として即位。その混乱の中、トマスはヴェネツィアでペストに罹り客死しました。エルサレムへの巡礼の途上であったと伝えられています。

死後

トマスの死後、ノーフォーク公爵位は一旦消滅。長男トマスはノーフォーク伯などの爵位を継承しますが、1405年に反乱を起こし処刑されるなど、モウブレー家は不遇の時代を迎えます。ノーフォーク公爵位が復活するのは、次男ジョンが叙爵された1425年のことでした。

子女

トマスは2度の結婚をしました。

最初の妻：エリザベス・ル・ストレンジ（1383年死別、子なし）
2番目の妻：エリザベス・フィッツアラン（アランデル伯リチャード・フィッツアランの娘）
トマス（1385年 - 1405年） - ノーフォーク伯
マーガレット（1388年 - ?） - サー・ロバート・ハワードと結婚。ノーフォーク公ジョン・ハワードの母。
ジョン（1392年 - 1432年） - ノーフォーク公
エリザベス（? - ?） - 第3代サフォーク伯マイケル・ド・ラ・ポールと結婚
イザベル（1400年 - ?） - 初代バークレー男爵ジェームズ・バークレーと結婚

参考文献

森護『英国の貴族 遅れてきた公爵』大修館書店、1987年。
青山吉信編『世界歴史大系 イギリス史1 -先史～中世-』山川出版社、1991年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

関連項目

リチャード二世 (シェイクスピア) - ウィリアム・シェイクスピアの戯曲。登場人物の一人としてトマス・モウブレーが登場します。
* ジョン・ファストルフ

トマス・モウブレーの生涯は、中世イングランドの政治情勢と貴族社会の複雑さを物語るものです。リチャード2世の治世における権力闘争、そしてその後のモウブレー家の興亡は、歴史ファンにとって興味深いテーマと言えるでしょう。

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