ナクチュ市

ナクチュ市

ナクチュ市は、中華人民共和国チベット自治区の北部に位置する地級市です。東経84度55分から95度5分、北緯29度55分から36度30分に広がり、チベット高原の広大な景観と独特の文化が息づいています。ナクチュはチベット語で「黒い川」を意味し、その名の通り、地区内を流れるナク川（中国語名：那曲または黒河）は、この地の象徴となっています。

地理

ナクチュ市は、チベット自治区の北部、チャンタン高原の東部に位置します。南はチャムド市、ニンティ市、ラサ市に、西はガリ地区に、東は四川省カンゼ・チベット族自治州に、北は青海省玉樹チベット族自治州と新疆ウイグル[[自治区]]にそれぞれ接しています。広大な高原地帯が広がり、独特の生態系を育んでいます。

行政区画

ナクチュ市は、1つの市轄区と10の県を管轄しています。

セニ（色尼）区
ラリ（嘉黎）県
ビル（比如）県
ニェンロン（聶栄）県
アムド（安多）県
シェンザ（申扎）県
ソク（索）県
パングン（班戈）県
バチェン（巴青）県
ニマ（尼瑪）県
双湖県

歴史

ナクチュの歴史は、旧石器時代にまで遡ります。この地では、遊牧文化の痕跡を示す多くの打製石器が発見されています。記録に残る最古の政権は、象雄王国（シャンシュン王国）で、この地は「卓岱」と呼ばれ、遊牧部落を意味していました。住民は「卓巴」や「羌巴」と呼ばれ、遊牧民としての生活を送っていました。

象雄の衰退後、7世紀前後には蘇毘部落がこの地を支配し、その後、吐蕃王朝が全チベットを統一しました。吐蕃王朝は、この地を軍事的な要所として重視し、西域や河湟江岷地区への拡張拠点としました。宋朝時代には、那曲、羊八井、幇倉、朗如が北方四部落として知られていました。

13世紀には、元朝がこの地に駅站を設置し、モンゴル軍が駐屯しました。グシハンによるチベット征服の際には、ホル王がグシハンに降伏し、所領を安堵されました。清朝時代には、この地域はタンラ山脈を境界として分割され、ホル王とその属下は西蔵に帰属しました。清王朝はナクチュに坎嚢宗を建立し、ガンデンポタンの直接統治としました。

辛亥革命後、王朝の勢力が衰退し、ガシャはバンチェン・ラマの領地も接収しました。ガンデンポタンは1916年に霍爾地区総管を設置し、500年以上にわたる霍爾王の歴史は終わりを迎えました。1942年には霍爾基を廃止し、蔵北に絳曲基巧を設置しました。

1950年代には、中国人民解放軍がこの地に進駐し、1959年の民主改革後、チベット自治区籌備委員会は蔵北の行政区画を大きく調整しました。黒河基巧弁事所が設立され、1965年には那曲行署へと改名されました。

2017年には、ナクチュ地区が地級市のナクチュ市に昇格しました。この間、行政区画は変遷を重ね、現在に至っています。

年表

1951年5月23日 - 中華人民共和国チベット地方チャン・チキャプが成立。ナクチュゾン、ナムルゾンなどが発足。
1955年3月9日 - チャン・チキャプが黒河弁事処に改称。
1959年7月5日 - パングン県、ダムサギャ県が発足。
1959年10月 - 黒河県、アムド県、シェンザ県が発足。
1960年1月7日 - 黒河県、アムド県などがナクチュ専区に編入。
1960年8月 - ニェンロン県、ソク県が県制施行。
1964年7月27日 - ラリ県を編入。
1964年10月31日 - ラサ市ショバ県の一部がラリ県に編入。
1965年8月23日 - チベット自治区成立。
1965年11月3日 - 黒河県がナクチュ県に改称。
1970年11月20日 - ナクチュ専区がナクチュ地区に改称。
1983年10月8日 - ニマ県が発足。
2012年11月15日 - 双湖県が発足。
2017年7月18日 - ナクチュ地区がナクチュ市に昇格。

資源

ナクチュ市には、金、銀、クロム、鉛、亜[[鉛]]、食塩、リチウムなど、232種類の鉱物資源が確認されています。特に、金、鉛、亜[[鉛]]、食塩、ホウ砂、玉石などの埋蔵量が豊富で、クロムやアンチモンなどは中国でも有数の産出量を誇ります。また、地熱、銅、鉄、ホウ素、マグネサイトなども豊富で、リチウムの開発も期待されています。

経済

民主改革以前、ナクチュは手工業が中心の経済圏であり、近代工業からは程遠い状態でした。交易は物々交換が主流で、家畜製品や薬草などが取引されていました。民主改革以降、近代的な工業体系が整備され、国有企業を中心に、サービス業、軽工業、採鉱、発電などの産業が発展しました。特に、民族工芸品は、敷物、民族衣装、靴、帽子、家具、刀、銀製品、銅製品など40種類以上が生産されており、国内外の市場で高い評価を得ています。

交通

鉄道

中国[[国家鉄路集団]]
青蔵鉄道

道路

高速道路
京蔵高速道路
国道
G109国道
G317国道

関連項目

チベットの伝統的な地方区分
ウー
ツァン
ンガリ
アムド
カム

脚注

参考文献

A. Gruschke: The Cultural Monuments of Tibet’s Outer Provinces: Kham - Volume 1.
Tsering Shakya: The Dragon in the Land of Snows.

外部リンク

* チベット地域情報昌都 （中国語）

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