バハラーム6世

バハラーム・チョービン：サーサーン朝の異端の王

バハラーム・チョービン（生没年不詳 - 591年）は、サーサーン朝のシャーハンシャーです。パルティア系のミフラーン家出身で、軍司令官から王位を簒奪し、短期間バハラーム6世として統治しました。

生涯

出自と初期のキャリア

バハラームはミフラーン家の出身で、レイの統治者から軍司令官に昇進しました。588年には、エフタルと突厥の侵略に対し、ホラーサーンのスパーフベドとして勝利を収めました。この功績により、帝国内での地位を確立しましたが、王ホルミズド4世の不信感を買い、指揮権を剥奪されます。

反乱と簒奪

バハラームはホルミズド4世に対し、「アルサケス朝の復活」を掲げて反旗を翻しました。反乱軍が首都クテシフォンに向かう中、ホルミズド4世は暗殺され、息子のホスロー2世が即位しますが、バハラームがクテシフォンに到着すると、ホスロー2世は東ローマ帝国に亡命します。

統治と没落

バハラームは自らをゾロアスター教の救世主になぞらえ、王位を簒奪しました。しかし、東ローマ帝国の支援を得たホスロー2世の反撃により敗北し、西突厥へ亡命。その後、ホスロー2世の刺客により暗殺されました。

死後の影響

バハラーム・チョービンの生涯は、イスラーム教徒のペルシア征服後も語り継がれ、「バハラーム・チョービン・ナーマ」などの文学作品にも描かれています。

名前について

バハラームの名前は、アヴェスター語で勝利の神を意味します。チョービンは「投げ槍のような」という意味で、彼の体型に由来します。フィルドゥシーは「シャー・ナーメ」で、彼を「背が高い、黒い巻き毛で色黒な戦士」と表現しています。

背景

バハラームは、七大貴族の一つであるミフラーン家出身です。ミフラーン家はレイを根拠地とし、サーサーン朝の実権を握った時期もありました。ホスロー1世の軍制改革により、パルティア系貴族が重用され、バハラームの祖父や父も軍司令官を務めました。

台頭

バハラームはレイのマルズバーンからキャリアをスタートし、ダラの要塞攻略の功績で北部の軍司令官に昇進しました。588年には、突厥とエフタルの侵攻を撃退し、ホラーサーンの総督に相当する役職を与えられました。彼は1万2千の精鋭騎兵を率い、突厥の可汗を射殺するなどの武功を挙げました。

反乱の背景

バハラームは東ローマ帝国との戦いで敗北したことを口実に、ホルミズド4世から要職を解かれ、辱めを受けました。宮廷では粛清が行われ、ミフラーン家出身の大宰相も処刑されました。バハラームは、突厥に対する勝利から貴族たちの妬みを買っていたとも言われています。ホルミズド4世は、バハラームの戦利品横領を疑い、屈辱的な仕打ちをしたため、バハラームは反乱を決意しました。

反乱の勃発

ホルミズド4世の仕打ちに憤慨したバハラームは反乱を起こし、多くの人々が彼に賛同しました。

終末論との関連

バハラームは自身の正当性をゾロアスター教の終末論に求めました。彼は救世主「カイ・バハラーム・ヴァルジャーヴァンド」とみなされ、アルサケス朝の再建を目指しました。

王都でのクーデター

ホルミズド4世はクーデターにより廃位され、殺害されました。ホスロー2世が即位しますが、バハラームはクテシフォンへの進軍を続けました。

治世

統治

590年夏、バハラームはシャーハンシャーに即位し、アルサケス朝の支配を復活させようとしました。彼は硬貨を鋳造し、寛容な宗教政策を行いましたが、サーサーン朝貴族の支持を得られず、ホスロー2世の陣営につく者が多くいました。

ホスローの逆侵攻と復位

ホスロー2世は東ローマ帝国の支援を得て逆侵攻を開始し、591年にはメソポタミアに侵攻しました。バハラームは敗北し、東方へ逃亡しました。

亡命と死

バハラームは突厥に亡命し、軍の指揮官として活躍しましたが、ホスロー2世の刺客により暗殺されました。

遺族の運命

バハラームの妹で妻であったゴルディヤは、ヴィスタムに嫁ぎました。バハラームには3人の息子がおり、それぞれ異なる運命を辿りました。

死後の影響

バハラームの生涯は文学作品に描かれ、理想的な騎士として語り継がれています。彼の物語は、ペルシア文学や民族意識に大きな影響を与えました。また、彼の末裔はサーマーン朝を建国しました。

家系図

(家系図に関する記述は省略)

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参考文献

Encyclopedia Iranica, "vii. Bahrām VI Čōbīn", Shahbazi, A.Sh
Cited by Richard Frye

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