パルテニオン山

パルテニオン山（古希: Παρθένιον ὄρος）は、ギリシャ南部のペロポネソス半島、アルカディア県とアルゴリダ県の県境に位置する山です。その名称は「乙女の山」という意味を持ち、標高は1215メートルに達します。この山は、古代より神話や歴史において重要な役割を果たしてきました。

地理
パルテニオン山は、アルカディア県の中心都市トリポリから東へ約16キロメートル離れた地点にあります。具体的には、北東部のアルゴリダ県アフラドカンボス村と、南西部のアルカディア県パルテニ村の間に広がっています。古代においては、パルテニオン山は強力なテゲア王国の領域の一部であり、アルゴリス地方にあるヒュシアイの小さな平野と、テゲアの広大な平原を隔てる自然の境界線としての役割を担っていました。古代ギリシャの地理学者であるストラボンは、著作の中でアルカディア地方の有名な山として、ポロエ山、リュカイオン山、マイナロス山と並んでパルテニオン山の名を挙げています。

神話と伝説
パルテニオン山は、ギリシア神話における数々の伝説の舞台となりました。特に有名なのは、二人の英雄、パルテノパイオスとテレポスが、それぞれ生まれた直後にこの山で捨てられたという物語です。パルテノパイオスは、俊足の女狩人アタランテの子として知られ、テレポスは、偉大な英雄ヘラクレスと、テゲアにあるアテナ・アレア神殿の女神官アウゲとの間に生まれた息子で、テゲア王アレオスの孫にあたる人物です。幼いテレポスは、捨てられた後、人間の助けなく雌のシカに乳を与えられて奇跡的に生き延びたと語り継がれています。

牧羊神パンの出現
また、パルテニオン山は、半人半獣の牧羊神パンが出現した地としても非常に有名です。歴史家ヘロドトスは、その著書『歴史』の中でこの出来事を詳しく記述しています。紀元前490年、ペルシア戦争におけるマラトンの戦いの直前、援軍を求めるためにスパルタへと向かうアテナイの伝令使フィリッピデスが、パルテニオン山のそばを通りかかりました。その時、パンが突如としてフィリッピデスの前に姿を現したとされています。パンはフィリッピデスの名を大声で呼び止め、自分はこれまでアテナイ人に対して友好的であり、何度も彼らを助けてきたにもかかわらず、なぜアテナイ人が自分に対して適切な敬意を払わないのかと問い質しました。そして、この神の言葉をアテナイへ帰って伝えるよう、フィリッピデスに命じたのです。この出来事の後、フィリッピデスがアテナイにパンの言葉を伝えた結果、アテナイの人々はパンに対する敬意を示すため、アクロポリスの麓にパンのための聖域を建立したと伝えられています。

古代の遺構と特産品
山中には、神話に登場するテレポスを祀る神苑や、パンを崇める神域が存在したと考えられています。さらに、パルテニオン山は、古代ギリシャで音楽に用いられた弦楽器であるリュラの制作に不可欠な材料の一つであったカメの産地としても知られていました。これは、初期のリュラがカメの甲羅を共鳴胴として用いて作られたことに由来します。

交通と近隣
古代には、アルゴスからヒュシアイを経由し、パルテニオン山を越えてテゲアに至る重要な道路が通じていました。現在では、山の北側、アフラドカンボスを経由してアルカディア県の中心都市トリポリへと続く国道が主要な交通路となっています。また、山のコリーティオ側の山麓には、聖パンテレイモンの教会が静かに佇んでいます。パルテニオン山は、その自然の景観美とともに、古代からの豊かな歴史と神話が息づく特別な場所として、今日に至るまで人々の関心を集めています。

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