プペ・ダンサント

プペ・ダンサントとは

プペ・ダンサント（Poupée dansante）は、「踊る人形」という意味を持つフランス語に由来する、かつて存在した日本の軽演劇劇団です。1930年（昭和5年）に浅草を拠点に活動を開始し、短い活動期間ながらも、その後の軽演劇界に大きな影響を与えました。

旗揚げと初期の活動

1923年（大正12年）の関東大震災で浅草オペラが壊滅した後、安来節を上演していた御園座は、大森玉木によって新築され、1930年（昭和5年）11月1日に「玉木座」として新たにオープンしました。この時、支配人に就任したのは、大森が信頼を寄せていた佐々木千里でした。佐々木は、浅草オペラ時代には「外山千里」という名前でチェロ奏者として活躍していました。

玉木座のオープンと同時に旗揚げされたのが、伊庭孝が命名した「プペ・ダンサント」です。旗揚げ公演には、清水金太郎・清水静子夫妻、柳田貞一、二村定一、榎本健一、杉寛、木村時子、淡谷のり子、中山呑海、郷宏之（青木湯之助）、大友壮之介、如月寛多、藤原釜足、森健二、北村武夫、和田肇、水町玲子、筑波正弥、白崎菊三郎、木村時子、田川淳吉（斎藤豊吉）、外崎幹子（外崎恵美子）、武智豊子、澤モリノといった、多才なメンバーが名を連ねました。

前月には「新カジノ・フォーリー」を畳んだばかりの榎本健一は、この劇団で中心的な役割を担いました。新カジノで舞台装置家として参加していた菊谷栄が作家として参加し、同年初演の『世界漫遊』などを執筆しました。文芸部長には、新カジノから引き続きサトウハチローが就任し、菊谷のほか、菊田一夫、斎藤豊吉らが文芸部を支えました。同年12月には、菊田一夫作の『阿呆疑士迷々伝』を初演し、早くも人気を集めました。

人気演目と劇団の隆盛

1931年（昭和6年）1月には、菊田一夫作の『西遊記』を初演し、これが大ヒットしました。榎本が孫悟空、柳田が猪八戒、二村が三蔵法師を演じ、観客を魅了しました。また、菊谷栄は「佐藤文雄」の筆名で『最後の伝令』を執筆し、これも同年初演となりました。この作品は「エノケン喜劇の伝家の宝刀」と称され、その後も繰り返し上演されました。サトウハチローもナンセンス喜劇『古風仇討マラソン』を書き、劇団の人気をさらに高めました。

劇団には、和田肇、田谷力三、竹久千恵子、藤尾純、川田義雄、サトウロクロー、木村時子、沢マセロらも出演し、多彩な才能が結集していました。

主要メンバーの脱退と劇団の解散

しかし、劇団は長くは続きませんでした。1931年（昭和6年）11月には、中心人物の一人であった榎本健一が、二村定一、武智豊子とともに脱退しました。翌12月には、二村との2人座長で新たな劇団「ピエル・ブリヤント」を浅草オペラ館で結成しました。同じ頃、支配人であった佐々木千里も玉木座を退職し、淀橋区角筈（現在の新宿区新宿3丁目）に同年12月31日、劇場と劇団「ムーランルージュ新宿座」をオープンしました。

1933年（昭和8年）1月には、菊田一夫が「プペ・ダンサント」に復帰しましたが、同年4月には榎本健一が古川ロッパ、徳川夢声らと浅草常磐座で「笑の王国」を旗揚げしました。そして同年6月、「プペ・ダンサント」は解散しました。

プペ・ダンサントの関連事項

プペ・ダンサントは短命な劇団でしたが、その活動は後の軽演劇に大きな影響を与えました。

関連事項として、以下のようなものが挙げられます。

カジノ・フォーリー
ピエル・ブリヤント
笑の王国
ムーランルージュ新宿座

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