ホセ・ゴンザレス (プロレスラー)

ホセ・ゴンザレス：プエルトリコの英雄、その光と影

ホセ・ゴンザレス（José Huertas González、1947年3月17日 - ）は、プエルトリコ出身のプロレスラー、そしてブッカーです。彼のキャリアは、覆面レスラー「インベーダー1号」としての活躍、数々のタイトル獲得、そしてブルーザー・ブロディ刺殺事件という悲劇によって彩られています。生年については諸説あります。

初期のキャリア：サブー・シンからマニー・クルーズへ

デビュー後、1960年代末から1970年代初頭にかけて、ゴンザレスは「サブー・シン」というインド人ギミックでアメリカ本土のNWA各テリトリーを転戦しました。ベビーフェイスとして、カンザスシティやフロリダでトーア・カマタやマサ斎藤といった強豪とも対戦しています。

1972年からは、「マニー・クルーズ」と名を変え、太平洋岸で活動。オレゴン州ポートランドやワシントン州シアトルを拠点とするPNWでは、アル・マドリルとのラテン系タッグチームで活躍し、NWAパシフィック・ノースウエスト・タッグ王座を獲得しました。

1973年10月からは、本名であるホセ・ゴンザレスとしてWWWF（現WWE）に参戦。プロフェッサー・タナカ、ブラックジャック・ランザ、ラリー・ヘニングといったヒール勢のジョバーを務めました。1975年には全日本プロレスに初来日も果たしています。

その後、再び太平洋岸での活動を経て、1976年3月よりWWWFに復帰。スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディなど、WWWFヘビー級王者ブルーノ・サンマルチノへの挑戦者の引き立て役となる一方、ジョニー・ロッズやホセ・エストラーダといったヒール陣営のジョバーからは勝利を収め、ボボ・ブラジルやアンドレ・ザ・ジャイアントのパートナーにも起用されています。また、ケビン・サリバンやビリー・ホワイト・ウルフと組み、ジ・エクスキューショナーズ（コワルスキー&ビッグ・ジョン・スタッド）が保持していたWWWF世界タッグ王座にも挑戦しました。

1977年4月には全日本プロレスに再来日。「第5回チャンピオン・カーニバル」に出場しましたが、白星配給係に終わっています。

WWCでの成功：インベーダー1号の誕生

1978年より、ゴンザレスは覆面レスラー「インベーダー1号」に変身し、地元プエルトリコのWWCに定着します。以降、ピエール・マーテル、ディック・スタインボーン、ドリー・ファンク・ジュニアらを破り、1980年代にかけて各主要タイトルを次々と獲得。インベーダー2号ことロベルト・ソトとのコンビでは、ザ・ファンクスとWWC世界タッグ王座を争いました。

1982年4月には、素顔のホセ・ゴンザレスとして新日本プロレスに初参戦。しかし、全日本参戦時と同様に、前座試合が中心でした。

1983年5月から1984年にかけては、ジョニー・リベラとの「ジ・インベーダーズ」としてWWFに参戦。ワイルド・サモアンズが保持していたWWF世界タッグ王座に再三挑戦し、マディソン・スクエア・ガーデンではミスター・フジ&タイガー・チャン・リーやロディ・パイパー&デビッド・シュルツと対戦しました。

その後もWWCではベビーフェイスの主力として活躍し、プエルトリコ・ヘビー級王座やTV王座を奪取しています。1987年7月にはインベーダー1号として全日本プロレスに久々に来日しましたが、プエルトリコでの活躍とは対照的に、日本では前座外国人として扱われ続けました。

WWCでは1988年1月、ケンドー・ナガサキ&ミスター・ポーゴのニンジャ・エクスプレスとWWC世界タッグ王座を争い、4月2日にはスーパー・ブラック・ニンジャこと武藤敬司を破ってTV王座に返り咲いています。

ブロディ刺殺事件：暗い影

1988年7月16日、バヤモンのホワン・ラモン・ロブリエル・スタジアムで、ゴンザレスはブルーザー・ブロディの腹部をナイフで刺すという事件を起こします。ブロディは翌日、出血多量で死亡しました。

事件の原因については諸説ありますが、ゴンザレスは当時WWCのブッカーを兼任しており、ブロディの横暴な振る舞いに怒りを募らせていたことが一因とされています。また、WWWF時代から格下扱いされていた遺恨や、ブロディがWWCのオフィスに金を貸していたことによるトラブルも原因として囁かれました。

ゴンザレスは殺人容疑で逮捕・起訴されましたが、1989年に陪審で正当防衛が認められ、無罪となりました。しかし、この事件はゴンザレスのキャリアに大きな影を落としました。

事件後：波乱の晩年

ブロディ刺殺事件後も、ゴンザレスはWWCで第一線での活躍を続け、北米ヘビー級王座、プエルトリコ・ヘビー級王座、カリビアン・ヘビー級王座を奪取しました。

1990年8月29日には、WWCのオフィスを訪れた大仁田厚がゴンザレスによって腹部を刺されるという事件が起こります。これは、FMWでの「プエルトリコ軍団」との抗争を煽るためのアングルでしたが、ブロディの死を利用したとして、ファンや関係者の大きな反感を買い、ゴンザレスのFMW登場は実現しませんでした。

1991年12月25日にはディック・マードックを破り、久々にTV王座を獲得。1992年8月8日にはカルロス・コロンを下して、ユニバーサル・ヘビー級王座を奪取しました。1990年代中盤より試合出場は減少しましたが、2001年11月24日にはジム・スティールを破りプエルトリコ・ヘビー級王座を獲得。通算12回目となる最後のタイトル戴冠を果たしました。

2003年から2006年にかけてはIWAに参戦し、プロデューサーを務めつつ、サビオ・ベガとのタッグなどで活動。その後、しばらくリングを離れていましたが、2011年7月のアニバーサリーイベントでWWCに復帰。以降も単発的にリングに上がり、カルロス・コロンの息子のカリートやプリモとも対戦しました。2019年からは70代の高齢ながら、再びIWAに出場しています。

獲得タイトル

パシフィック・ノースウエスト・レスリング
NWAパシフィック・ノースウエスト・タッグ王座：1回（w / アル・マドリル）
ワールド・レスリング・カウンシル
WWCユニバーサル・ヘビー級王座：2回
WWC北米ヘビー級王座：4回
WWCカリビアン・ヘビー級王座：5回
WWCプエルトリコ・ヘビー級王座：12回
WWC TV王座：5回
WWC世界タッグ王座：15回
WWC北米タッグ王座：6回
* WWCカリビアン・タッグ王座：6回

ホセ・ゴンザレスのキャリアは、数々の栄光と悲劇が入り混じった、まさに波乱万丈なものでした。彼はプエルトリコプロレス界の英雄として、その名を永遠に刻んでいます。

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