マイク・ストーン (音楽プロデューサー)

マイク・ストーン（Mike Stone）

マイク・ストーン（1951年 - 2002年5月）は、イングランド出身の優れた音楽プロデューサーおよび音楽エンジニアです。51歳でこの世を去るまで、彼は半世紀にわたる短い生涯の中で、ポピュラー音楽史に名を刻む数多くの名盤制作に携わりました。

キャリアの黎明期

ストーンのキャリアは極めて早い時期に始まりました。まだ10代であった1964年には、ロンドンに位置する名門EMIレコーディング・スタジオ（後のアビー・ロード・スタジオ）において、アシスタントエンジニアとして職務に就いています。特に、ビートルズのアルバム『ビートルズ・フォー・セール』のセッションでは、アシスタント業務で貢献しました。当時のチーフエンジニアであったジェフ・エメリックは自身の回顧録の中で、マイク・ストーンを含む新たなアシスタントたちが採用され、彼らが短期間で成長できるよう、ジョージ・マーティンやノーマン・スミスといった大物プロデューサー/エンジニアとのセッションに積極的に参加させたことに言及しています。これは、若きストーンにとって貴重な経験の機会となったことでしょう。

トライデント・スタジオとクイーン

1970年代初頭には、ロンドンの名門スタジオ、トライデント・スタジオに移籍します。ここでは、プログレッシブ・ロックの重要バンドであるジェネシスの作品、例えばアルバム『怪奇骨董音楽箱』でテープオペレーターを務めるなど、多様なプロジェクトに関与しました。また、グラムロックの旗手として知られるルー・リードのアルバム『トランスフォーマー』では、ミキシングエンジニアとしてその完成に貢献しています。

特に彼の名が広く知られるようになったのは、ロックバンド、クイーンとの長期にわたる共同作業を通じてです。1970年代を通じて、クイーンの初期から中期にかけてのアルバムの大部分でエンジニアリングを担当しました。これには、『戦慄の王女』、『クイーン II』、『シアー・ハート・アタック』、『オペラ座の夜』、『華麗なるレース』といった彼らの代表作が含まれます。ストーンは、特にクイーンの代名詞ともいえる重層的なボーカルハーモニーの構築や、緻密なサウンドプロダクションにおいて重要な役割を果たしました。アルバム『世界に捧ぐ』では、エンジニアリングに加えてバンドとの共同プロデュースも手掛けています。

プロデューサーとしての成功

1980年代に入ると、ストーンはプロデューサーとして目覚ましい成功を収めます。特にアメリカ市場で大きな商業的成功を収めた数々のアルバムを世に送り出しました。代表的なものとして、ジャーニーの国民的ヒット作『エスケイプ』（1981年）とそれに続く『フロンティアーズ』（1983年）、スーパーグループとして注目を集めたエイジアのデビューアルバム『詠時感〜時へのロマン』（1982年）とセカンドアルバム『アルファ』（1983年）、そしてホワイトスネイクの世界的ブレイク作となった『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』（1987年）などが挙げられます。これらの作品はいずれもミリオンセラーを記録し、ストーンはその確かな技術とプロデュース手腕で、多くのアーティストのキャリアにおいて重要な役割を果たしました。

他にも、シューズ、ニュー・イングランド、エイプリル・ワイン、トミー・ショウ、ゲイリー・ムーア、ヘリックス、ラット、Y&T、フォリナー、テンといった幅広いアーティストの作品でプロデュースやエンジニアリング、ミキシングを手掛けました。

同名の別人との混同について

マイク・ストーンという名前は音楽業界に複数存在するため、しばしば混同されることがあります。特に、ハードコア・パンクやヘヴィメタルの分野で活動し、インディペンデントレーベル「Clay Records」を設立したマイク・“クレイ”・ストーンとは、活動ジャンルも異なり別人です。また、ビージーズやフランク・ザッパなどの作品でエンジニアリングを担当したマイク・D・ストーンや、クイーンズライクのギタリストであるマイク・ストーンとも同一人物ではありません。

晩年と死去

マイク・ストーンは、2002年5月、51歳の若さで亡くなりました。死因はアルコール依存症の合併症とされています。

半世紀という決して長くはない生涯でしたが、マイク・ストーンはエンジニアおよびプロデューサーとして、1970年代のロックサウンドの確立から1980年代の産業ロック隆盛期まで、多岐にわたるアーティストと作品に貢献し、その名を音楽史に刻んでいます。

主な関連作品

以下に、マイク・ストーンが主要な役割（プロデュース、エンジニアリング、ミキシング、テープオペレーターなど）で関与した代表的なアルバムの一部を挙げます。

ジェネシス – 『怪奇骨董音楽箱』（1971年）- テープオペレーター
ルー・リード - 『トランスフォーマー』（1972年）- ミキシング
クイーン – 『戦慄の王女』（1973年）- エンジニアリング
クイーン – 『クイーン II』（1974年）- エンジニアリング
クイーン – 『シアー・ハート・アタック』（1974年）- エンジニアリング
クイーン – 『オペラ座の夜』（1975年）- エンジニアリング
クイーン – 『華麗なるレース』（1976年）- エンジニアリング
クイーン – 『世界に捧ぐ』（1977年）- プロデュース、エンジニアリング
ジャーニー – 『エスケイプ』（1981年）- プロデュース、エンジニアリング、ミキシング
エイジア – 『詠時感〜時へのロマン』（1982年）- プロデュース、エンジニアリング
ホワイトスネイク – 『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』（1987年）- プロデュース
フォリナー – 『Mr.ムーンライト』（1994年）- プロデュース、エンジニアリング、ミキシング

(その他多数)

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