マフムト1世

マフムト1世：オスマン帝国の変革と苦悩

マフムト1世（1696年8月2日 - 1754年12月13日）は、オスマン帝国の第24代皇帝として、1730年から1754年まで在位しました。ムスタファ2世の息子としてエディルネで生まれ、幼少期をそこで過ごしましたが、父の退位後、長らくトプカプ宮殿のカフェスに幽閉されるという不遇の時代を送りました。

即位と改革

1730年、パトロナ・ハリルの乱によって叔父であるアフメト3世が廃位されると、マフムト1世は皇帝として擁立されます。当初は反乱を静観していましたが、翌年にはパトロナ・ハリルらを処刑して反乱を鎮圧し、自ら政治の実権を掌握しました。彼は叔父が推進していた西欧化政策を継承し、中断されていた建築事業を再開するとともに、フランス人亡命者のクロード・アレクサンドル・ド・ボンヌヴァルを重用して軍事改革に取り組みました。

ペルシャとの長き戦い

外交面では、先代から続くイランのサファヴィー朝との戦争を継続せざるを得ませんでした。ナーディル・シャーの台頭により、一時失った領土を取り戻されますが、アフガン人の反乱によってナーディルが東へ向かうと、タフマースブ2世がエレヴァン奪還を目指して遠征を行います。しかし、これはオスマン帝国に撃退され、1732年にアフメト・パシャ条約を締結し、コーカサスでの国境線をアラズ川と定めました。しかし、ナーディルはこれを認めず、タフマースブ2世を追放して戦争を再開、バグダードを奪われます。マフムト1世はトパル・オスマン・パシャを派遣してバグダードを奪還しますが、トパル・パシャ自身はナーディルによって討たれてしまいます。その後、ガンジャやイェグフヴァルドを奪われ、1735年のコンスタンティノープル条約で南コーカサスの領有を認めざるを得ませんでした。

1743年にナーディルが再びイラクに侵攻してきますが、これを撃退し、1746年にはケルデン条約を締結して現状維持を条件に和平を結び、バグダードを死守することに成功しました。このケルデン条約で定められた国境線は、現在のトルコとイランの国境の基礎となっています。

ヨーロッパ戦線での苦戦

1735年からは、ロシア帝国および同盟国のオーストリア帝国との戦争（露墺土戦争）を開始しました。当初、オスマン帝国はロシアに対して優位に戦いを進めますが、1736年までにクリミアの要衝である要塞とバフチサライを占領されます。しかし、1737年から1739年にかけてクリミアで疫病が流行し、ロシア軍に大きな被害が出たため、一時的に足止めに成功しました。オーストリアに対しては連戦連勝し、ベオグラードを奪還するなどの戦果を挙げましたが、1739年にロシア軍が攻勢に出てヤッシーを占領すると、オーストリアとのベオグラード条約を結んで停戦しました。ロシアも単独での勝利は難しいと判断し、ニシュ条約を締結してアゾフを割譲することで講和しました。イラン戦線が終結してからは、オスマン帝国は1768年の露土戦争が始まるまで、比較的平和な時代を過ごしました。

晩年と帝国の衰退

マフムト1世の晩年は、帝国内部の腐敗が徐々に進行し、地方分権化が進む時代でした。彼は常に平和を望んでいましたが、宦官のハジ・ベシル・アーの影響力が強まり、ワラキア公とモルダヴィア公にファナリオティスが起用されることが定着しました。イェニチェリの腐敗も深刻化し、空席ポストの給料着服や株売買が横行し、軍事力は低下しました。また、徴税請負制が終身契約として有力者に競売にかけられるようになると、地方の有力者（アーヤーン）が台頭し、帝国の支配を揺るがす要因となりました。1750年にはイスタンブールで大規模な火災が発生し、甚大な被害をもたらしました。

1754年、マフムト1世は金曜礼拝から戻った直後に心臓発作で死去しました。58歳でした。彼の死後、弟のオスマン3世が帝位を継承しました。

マフムト1世の治世は、オスマン帝国が変革を迫られながらも、内憂外患に苦しんだ時代でした。彼の改革は必ずしも成功したとは言えませんが、帝国の近代化に向けた努力は評価されるべきでしょう。

参考文献

アラン・パーマー著、白須英子訳『オスマン帝国衰亡史』中央公論新社、1998年。
永田雄三編『新版 世界各国史9 西アジア史Ⅱ イラン・トルコ』山川出版社、2002年。
* 林佳世子『興亡の世界史10 オスマン帝国500年の平和』講談社、2008年。

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