マレーシアの地理

マレーシアは、東南アジアに位置する立憲君主制国家で、マレー半島にあるマレーシア半島地区と、ボルネオ島北部にある東マレーシア地区の2つに大きく分けられます。マレーシア半島地区は、北はタイ、南はシンガポールと国境を接しており、マラッカ海峡を挟んでインドネシアのスマトラ島と対峙しています。一方、東マレーシア地区は、インドネシアとブルネイと国境を接しています。

気候

赤道に近いマレーシアは、熱帯雨林気候に属し、年間を通して高温多湿です。年間の平均降雨量は約2,500mm、平均気温は27度と、非常に雨が多く、蒸し暑い気候です。マレーシア半島地区は大陸からの風の影響を直接受けるのに対し、東マレーシアでは太平洋からの風の影響があります。エルニーニョ現象の影響で乾季には降雨量が減少することがあります。近年の気候変動により、海面上昇、降雨量の増加による洪水、干ばつの危険性の増大が懸念されています。

モンスーンは、5月から9月の南西モンスーンと、11月から3月の北東モンスーンの2つがあります。南西モンスーンはオーストラリアの砂漠地帯で発生し、北東モンスーンは中国や北太平洋で発生し、より多くの降雨をもたらします。気候は、国内の山脈の影響を受け、高地、低地、沿岸地域の3つの地域に分かれています。沿岸地域は温暖で、気温は23度から32度、降雨量は月100mmから300mmです。低地は沿岸地域に似た気候ですが、降雨量が多いため湿度が高くなります。高地は湿度が高いものの、気温が低く、寒暖差が大きいです。

国内の観測史上最高気温は40.1度（1998年 4月9日、プルリス州）、最低気温は-0.12度（1978年 2月1日、キャメロンハイランド）です。一日の最大降雨量は608mm（1967年 1月6日、クランタン州）、年間最大降雨量は5687mm（2006年、サバ州）、年間最小降雨量は1151mm（1997年、サバ州）です。最も湿度が高いのはサラワク州クチンで、年間247日間で降雨が観測され、最も乾燥しているのはプルリス州チュピンで、クチンの約1/3の降雨量です。

地質

マレーシアはスンダ海棚に位置し、国内最古の岩石は5億4000万年前に形成された堆積岩です。古生代に形成された石灰岩が多く見られ、東マレーシアでは第三紀以降に浸食された石油や天然ガスを多く含む堆積岩があります。また、マレーシアの山脈は中生代の造山活動によって形成されました。

土地

マレーシアの総面積は33万803㎢で、世界で67番目に広い国です。このうち、マレーシア半島地区が13万2090㎢（39.7%）、東マレーシア地区が19万8847㎢（60.7%）を占めています。水域は1200㎢（0.37%）です。海岸線の総延長は4675kmで、マレーシア半島地区が2068km、東マレーシア地区が2607kmです。地形構造は、海岸沿いの平野から内陸部の丘陵や山脈へと高度が上がっていく点で共通しています。マレーシア半島は南北740km、東西322kmで、半島面積の半分以上は海抜150mを超えています。半島部には花崗岩などの火成岩が多く、西側には港湾と肥沃な土壌があります。東マレーシアはボルネオ島北部に位置し、海岸線は2607kmです。海岸部、山岳部、丘陵部からなり、サワラク州南部は比較的低地が多く、サバ州に近づくにつれて山地が多くなります。主要都市はコタキナバルとクチンです。

山脈

国内最高峰は、標高4095mのキナバル山があるクロッカー山脈（サバ州）です。キナバル山はユネスコの世界遺産にも登録されています。トルス・マディ山脈には、国内で二番目に高いトルス・マディ山があり、ボンバライヒルはマレーシア唯一の活火山です。マレー半島には、ティティワンサ山脈を中心に、多くの山脈が南北方向に走っています。ティティワンサ山脈は、半島中央部を東西に隔て、半島部の多くの水系の源流となっています。ティティワンサ山脈の東側には、半島最高峰のタハン山があるビンタン山脈があります。

森林

マレーシアの森林は熱帯雨林に分類され、国土の58.2%を覆っています。主に標高750m以下の地域に広がっており、ボルネオ低地熱帯雨林には2000種を超える植物が生息しています。1960年代以降、農地開拓による森林伐採が進み、森林は減少傾向にあります。特にサラワク州では森林の80%以上が伐採され、河川の汚染や土壌浸食が深刻です。現在、州政府は熱帯雨林減少に歯止めをかけようとしています。森林はフタバガキやマングローブ湿地が多く、マングローブは海岸部に1425㎢広がっています。国立公園や州立公園として保護されている地域もあり、政府や各州の森林保護・野生動物管理部署によって維持されています。キナバル自然公園とグヌン・ムル国立公園の2ヶ所がユネスコの世界遺産に登録されています。

洞窟

マレーシアには、石灰岩の浸食によるカルスト地形が多く見られます。グヌン・ムル国立公園には世界最大の洞窟であるムル洞窟や、世界最大の地下空洞であるサラワクチャンバーがあり、観光地としても有名です。

島嶼

マレーシア領内の最大の島はラブアン島（サバ州）で、バンギ島（サバ州）、ブルイト島（サラワク州）、ランカウイ島（ケダ州）、ペナン島（ペナン州）と続きます。ボルネオ島はインドネシア・ブルネイと国境を形成し、セバティク島も国境を形成しています。シパダン島やルダン島ではサンゴ礁が見られます。

水域

マレーシア半島地区と東マレーシア地区の間には南シナ海があり、マラッカ海峡は海上交通の要所です。マレー半島の東側は南シナ海、北部にはタイランド湾に面しています。ジョホール海峡はシンガポールとの国境です。東マレーシア地区の北東部はスールー海、南東部はセレベス海に面しています。領海は22海里、排他的経済水域は200海里と主張しています。マラッカ海峡の領海は、マレーシアとインドネシアの二国間条約で策定されています。

湖

ベラ湖（パハン州）は、マレーシア最大の湖の一つで、国内にある2つの天然湖の一つです。ペドゥ湖（ケダ州）はタイとの国境近くにあります。ケニール湖（トレンガヌ州）は、東南アジア最大の人口湖で、面積は260㎢です。

河川

国内最長の川はラジャン川（サラワク州、760km）、二番目はキナバタンガン川（サバ州、560km）で、いずれもボルネオ島を流れます。マレー半島最長の川はパハン川（パハン州、459km）です。

生態系

マレーシアは、生物多様性が豊かなメガダイバース国家の一つで、熱帯雨林には多くの動植物が生息しています。210種の哺乳類、620種の鳥類、250種の爬虫類、150種以上のカエルが確認されています。また、海洋生態系も豊かです。熱帯雨林には世界最大の花であるラフレシアが自生しています。森林伐採が生態系に与える影響が懸念されています。

自然災害

洪水

マレーシアは降雨量が多いため、洪水が発生しやすい環境です。1926年以降、15件の大規模な洪水が発生しており、河川周辺の開発や河川の許容量の増減が課題となっています。2006年と2007年のジョホール州での洪水では、それぞれ15億リンギット（約420億円）と18億リンギット（約510億円）の損害が発生し、11万人が避難生活を余儀なくされました。

地震

マレーシアは、インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界がマレー半島の西側に、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界が東マレーシア沖に位置しており、地震が頻繁に発生します。多くはスマトラ島やフィリピンを震源とするもので、大規模な地震は少ないですが、2004年のスマトラ島沖地震以降、建造物の耐震性に関心が高まっています。

天然資源

マレーシアは、石油の産出国かつ輸出国であり、天然ガスも多く産出されています。主な産地は、トレンガヌ州と東マレーシアです。スズ、銅鉱石、鉄鉱石、金鉱石、ボーキサイトも産出されます。かつてはスズの輸出国でしたが、現在は減少しています。木材輸出も盛んで、特に東マレーシアからの輸出が多く、2007年には234億リンギット（約6600億円）の木材を輸出しています。

国境と地域区分

マレーシアは、13の州と3つの連邦直轄領に分割されます。11の州と2つの連邦直轄領はマレーシア半島側、2つの州と1つの連邦直轄領は東マレーシア側にあります。国境線は主に自然地形によって形成されています。タイとはペルリ川とゴロ川が国境となり、シンガポールとはジョホール海峡が国境となっています。タイとの国境は1909年に形成され、当時シャムがイギリスにケダ州などを割譲したことによります。海洋の国境は各国との条約により策定されており、ブルネイとは2009年5月に国境を確定させました。インドネシアとは、海上国境で主張が異なる部分があり、協議を重ねて国境を確定させていますが、サバ州近辺ではまだ未解決な部分があります。南沙諸島の領有権を巡り、中国やベトナムとも懸案事項があります。

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