メガラプトル類

メガラプトル類：謎多き獣脚類 恐竜

メガラプトル類は、後期白亜紀に生息していた肉食恐竜のグループです。その分類は未だに議論の的となっており、完全な骨格化石も発見されていないため、理解は不完全な部分が多く残されています。しかし、いくつかの特徴的な形態から、他の獣脚類とは異なる独自の系統をなすことが示唆されています。

メガラプトル類は、大型で頑丈な前肢が特徴です。特に尺骨は、フクイラプトルとプウィアングヴェナトルを除く種で特異的な形状をしています。指の長さにも特徴があり、第I指と第II指が長く、大型で湾曲した鉤爪を持ち、第III指は小型です。

頭蓋骨は断片的な化石しか発見されていませんが、メガラプトルの幼体化石からは、細長い吻部をしていたことが判明しています。後肢の骨は、走行に適応したコエルロサウルス類のものと同様に細長く、高速で移動できた可能性があります。体幹は太いものの、骨は高度に含気化しており、骨の中に空洞が多く存在する珍しい特徴を持っています。この含気化の程度は、獣脚類の中でもネオヴェナトル科にしか見られないレベルです。

さらに、後側が窪んだ頸椎や、コンプソグナトゥス科の恐竜に似た歯なども、メガラプトル類の特徴として挙げられます。

系統分類：議論の的

メガラプトル類の系統的位置付けは、発見当初から大きく揺れています。2010年にはアロサウルス上科・ネオヴェナトル科の下位分類群として命名されましたが、2013年にはティラノサウルス上科の派生的位置に分類されるようになり、その後、非ティラノサウルス上科のコエルロサウルス類の基盤的な位置に分類されるという説も出てきました。いずれの分類が正しいとしても、メガラプトル類が、ネオヴェナトル科型アロサウルス上科あるいは基盤的コエルロサウルス類のいずれかと、多大な収斂進化を遂げたことは明らかです。

分布と多様性

メガラプトル類は、後期白亜紀の南アメリカ、特にパタゴニアで最も多様性に富んでいました。しかし、その分布域は広く、タイ（プウィアングヴェナトル）や日本（フクイラプトル）にも基盤的な属が生息していました。オーストラリアでも化石が発見されており、アウストラロヴェナトルは同大陸で知られる最大の捕食恐竜の一つです。

形態の詳細

サイズと骨格

メガラプトル類は中型から大型の恐竜で、全長はフクイラプトルの4.2メートルからアエロステオンの9メートル、バハリアサウルスでは13メートルに達する可能性があります。多くの種は断片的な骨格しか知られていませんが、複数の属をメガラプトル類として同定できる確かな形質が存在します。ムルスラプトルやアエロステオンなど、いくつかの種では高度な含気骨が確認されており、現生鳥類と共通する特徴です。細長い後肢と長い中足骨は、走行能力の高さを示唆しています。

頭蓋骨と歯

完全な頭蓋骨は発見されていませんが、複数の種で頭蓋骨要素が知られています。多くの復元では、頭蓋骨は長く華奢で、歯は小型で多数生えていたとされています。メガラプトルの吻部は細長く、鼻孔は非常に大型です。頭頂骨には、ティラノサウルス上科と同様に矢状稜が発達しています。歯の形は種によって多様性に富み、ティラノサウルス上科のものと似たものから、非ティラノサウルス上科獣脚類のものと似たものまで存在します。

脊柱と肋骨

頸椎の後方が強く窪むという特異的な特徴があります。この形状は、柔軟性を高めるのに役立っていたと考えられています。椎骨には側腹腔と呼ばれる空洞があり、複雑な内部構造を持っています。尾椎には長軸方向の稜があり、肋骨は太く湾曲し、中空です。腹肋は幅広で頑丈で、胸部で癒合しています。これらの特徴は、メガラプトル類が幅広の体躯を持っていたことを示しています。

前肢

上腕骨はS字型で、基盤的コエルロサウルス類や基盤的アロサウルス上科のものと似ています。メガラプトル科の尺骨は特徴的な形状で、断面がT字型をしています。手は第I指と第II指が大型で、第III指は小型です。鉤爪は長く、薄く、楕円形の断面をしています。手根骨は癒合して半月型をしています。

後肢

大腿骨は大転子が卓越しており、コエルロサウルス類のものと類似しています。脛骨は長く薄く、脛骨外側顆の前側は下側に湾曲しています。距骨の上行突起は大型で台形をしています。腓骨は長く、膝から強く先細ります。第III中足骨は細長いです。

臀部

腸骨は高度に含気化しており、ネオヴェナトル科以外では珍しい特徴です。preacetabular bladeには切痕があり、postacetabular bladeには大型の窪みがありません。坐骨はわずかに拡大し、恥骨の先端部は鎌状に発達しています。

進化と起源

メガラプトル類は、最後期ジュラ紀のアジアで出現し、前期白亜紀にゴンドワナ大陸で多様化したと考えられています。オーストラリアから南アメリカへの分布拡大に伴い、体サイズも増大していったようです。

分類：進化する仮説

メガラプトル類は、発見当初から様々な獣脚類のグループに分類されてきました。当初は大型のドロマエオサウルス科と考えられていましたが、後に誤りであることが判明しました。その後、基盤的テタヌラ類、スピノサウルス上科、そしてアロサウルス上科のネオヴェナトル科などに分類されてきました。最近では、ティラノサウルス上科や非ティラノサウルス上科のコエルロサウルス類に分類されるという説もあります。これらの分類の変遷は、新たな化石の発見や系統解析手法の進歩を反映しています。現在もなお、メガラプトル類の系統的位置付けは活発に議論されており、今後の研究によってさらに明らかになることが期待されます。

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