ルキウス・アウレリウス・コッタ (紀元前65年の執政官)

ルキウス・アウレリウス・コッタ：共和政ローマの政治家

ルキウス・アウレリウス・コッタ（生没年不明）は、紀元前1世紀の共和政ローマで活躍した政治家です。彼は、紀元前65年に執政官（コンスル）、紀元前64年には監察官（ケンソル）という要職を歴任しました。

出自

コッタは、平民であるアウレリウス氏族の出身です。アウレリウス氏族から最初の執政官が出たのは紀元前252年のことで、ノビレス（新貴族）の氏族として知られています。紀元前1世紀中頃には、セルウィウス氏族やカエキリウス氏族と並ぶ有力な平民氏族となっていました。

カピトリヌスのファスティ（執政官リスト）には欠落部分があり、兄ガイウス（紀元前75年の執政官）の記録から、父の個人名はマルクスであることがわかりますが、祖父の名前は不明です。歴史家E.ベディアンは、父マルクスが紀元前144年の執政官ルキウス・アウレリウス・コッタの末子である可能性を指摘していますが、正確な家系は不明としています。

コッタの母は、紀元前105年の執政官プブリウス・ルティリウス・ルフスの妹でした。ルフスはノウス・ホモ（先祖に高位官職者がいない人物）でしたが、ローマの有力な一族であるカエキリウス・メテッルス家と関係がありました。

コッタには、共に執政官を務めた2人の兄、ガイウスとマルクスがいました。また、姉妹がおり、彼女がガイウス・ユリウス・カエサルの母アウレリアであるという説もあります。しかし、アウレリアの出自は不明な点が多く、紀元前119年の執政官ルキウス・アウレリウス・コッタの娘であるという説が一般的です。スエトニウスはアウレリアをコッタ兄弟の「近縁者」（propinquus）としていることから、歴史学者E.ベディアンは姉妹説を否定しています。

経歴

コッタは青年期に造幣官を務めたと考えられています。財務官（クァエストル）および按察官（アエディリス）については記録がありません。

コッタに関する最初の記録は、紀元前82年のものです。スエトニウスはカエサルの伝記の中で、アウレリウス・コッタという人物に言及しています。スッラがマリウス派との内戦に勝利した後、マリウスの甥である若きカエサルの殺害を命じましたが、マメルクス・アエミリウス・レピドゥス・リウィアヌス（紀元前77年執政官）とアウレリウス・コッタの2人が、カエサルの助命を懇願しました。スッラは最終的に助命に同意しましたが、「カエサルを助けることは、自分たちが守るべきオプティマテス（門閥派）の大義を破滅させることになる」と警告しました。このコッタは、兄ガイウスまたはルキウスのいずれかと推定されています。

コッタの経歴が正確に確認できるのは、紀元前70年に法務官（プラエトル）を務めたときからです。この年の執政官ポンペイウスとクラッススは、スッラが制定したコルネリウス法によって削減されていた護民官の権限を回復させるなど、法改正に着手しました。コッタもその一員として、権力乱用裁判の改革のための法律（lex Aurelia iudiciaria）を制定しました。この法律により、元老院議員が判事を独占することがなくなり、判事の構成は元老院議員、騎士階級、有力市民がそれぞれ3分の1ずつとなりました。この改革は、社会の不和の主な原因を排除することに成功したと評価されています。

紀元前66年末、コッタは次期執政官選挙に立候補しましたが、プブリウス・アウトロニウス・パエトゥスとプブリウス・コルネリウス・スッラに敗れました。しかし、コッタは落選者のルキウス・マンリウス・トルクァトゥスと協力して、パエトゥスとスッラを選挙違反で告発し、裁判の結果、彼らの当選は取り消されました。再選挙の結果、コッタとトルクァトゥスが当選しました。この出来事は、ルキウス・セルギウス・カティリナの最初の陰謀と関連付けられることもあります。第一次カティリナ陰謀では、コッタとトルクァトゥスを殺害し、権力を掌握する計画が立てられましたが、計画が発覚し、元老院が2人に護衛をつけたため失敗しました。しかし、現代の歴史家の多くは、この話を反カエサル派によるプロパガンダに過ぎないと見ています。

紀元前65年、監察官クィントゥス・ルタティウス・カトゥルス・カピトリヌスとクラッススは、ポー川以北の人々に市民権を与えるかどうかで合意できず、任期満了前に辞任しました。その後、再度の監察官選挙でコッタが当選しましたが、同僚の名前は不明です。プルタルコスの『対比列伝』のキケロの章に、「キケロが執政官選挙に立候補したとき（紀元前64年）、コッタが監察官であった」と記されています。コッタは、元老院からの追放を恐れた護民官たちの抵抗により、何もすることができませんでした。

コッタは、紀元前63年12月5日に開かれた、カティリナの共謀者に対する処置を決定するための元老院会議に出席しています。カティリナの陰謀が失敗に終わると、感謝祭の開催を提案し、大衆の支持を得ました。キケロが護民官プブリウス・クロディウス・プルケルに告訴され、ローマから追放された際、コッタはキケロの追放には法的根拠がないと述べ、追放解除のための法制定も必要ないという見解を示しました。コッタは、もし自分が監察官であれば、キケロの名前を元老院議員名簿に残しておくべきだったとも述べています。その後、キケロはローマに戻ることができました。

コッタの名前が歴史に再び登場するのは、紀元前49年です。当時、ポンペイウスはカエサルとの内戦の準備を進めており、支持者に属州を分配していましたが、コッタとルキウス・マルキウス・ピリップス（紀元前56年執政官でカエサルの親戚）は、この属州分配から外されました。紀元前44年、コッタはシビュラの書を管理する15人委員会の一員となり、書によれば王だけがパルティアを倒すことができるとされ、カエサルを王位に就かせることをコッタが計画しているという噂が流れました。

コッタに関する最後の記録は、紀元前44年9月、すなわちカエサル暗殺から約半年後のものです。キケロは「コッタは絶望して、元老院に出席することはほとんどない」と書き残しています。

評価

キケロは、コッタを「最も思慮深く、国家と私、そして何よりも真実を深く愛していた」、「傑出した才能と最も偉大な心を持った人」と評しています。一方で、ワイン好きであったコッタを茶化すエピソードも残っています。

このように、ルキウス・アウレリウス・コッタは、共和政ローマ末期の激動の時代を生き抜き、政治家として重要な役割を果たした人物として、歴史に名を刻んでいます。

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