ヴァージン・ギャラクティックの打ち上げ一覧

ヴァージン・ギャラクティックの機体と飛行

ヴァージン・ギャラクティック社は、民間による宇宙飛行の実現を目指し、独自の機体開発と運用を進めてきました。同社の宇宙機は、一般的な軌道宇宙機（スペースシャトルなど）とは異なり、弾道飛行を主体とする点で実験機X-15に近い特性を持ちます。軌道速度に達するためには膨大なエネルギーが必要であり、また大気圏再突入時の熱から機体を守る複雑なシステムが必須ですが、ヴァージン・ギャラクティックの機体は、より低高度への弾道飛行に特化することで、異なる技術アプローチを採用しています。

スペースシップワン

ヴァージン・ギャラクティックの直接の機体ではありませんが、スペースシップワンは同社が後に開発するスペースシップツーのコンセプトを実証する上で極めて重要な前駆体でした。この実験的なロケット推進航空機は、空中発射方式を採用し、ハイブリッドロケットエンジンを搭載することで最高速度910 m/sの弾道飛行を可能としました。特に注目すべきは、主翼後方とツインテールのブームがヒンジに沿って70度上向きに折り畳まれる「フェザリング」と呼ばれる独特な大気圏再突入システムです。これは、姿勢を安定させながら効率的に抗力を増やし、安全な減速を実現するための設計です。

スペースシップワンは、ポール・アレンの資金援助を受け、バート・ルータン率いるスケールド・コンポジッツとの合弁事業であるモハーヴェ・エアロスペース・ベンチャーズによって開発・運用されました。構想は1994年には存在しており、実質の開発期間は約3年を経て、2004年に歴史的な成果を上げます。2003年12月17日、ライト兄弟の動力飛行100周年記念日に、スペースシップワンは民間機として初めて超音速飛行を達成しました。そして2004年、モハーヴェ航空宇宙港が米国初の商業宇宙港として承認された数日後、スペースシップワンは初の有人民間宇宙飛行を成功させ、マイク・メルヴィルは米国初の民間宇宙飛行士となりました。この功績により、スペースシップワンは1,000万米ドルのアンサリX賞を受賞し、直ちに現役を引退しました。スペースシップワンは「Tier One」プロジェクトの一環として開発され、その母機は「ホワイトナイト」と名付けられています。正式な型式名称はScaled Composites Model 316です。スペースシップワンの飛行には番号が付与され、その種類（キャプティブ・キャリー、無動力滑空、動力飛行）を示す記号が付加されて記録されました。

スペースシップツー

スペースシップツー（Scaled Composites Model 339）は、スペースシップワンの成功を踏まえ、宇宙旅行サービス提供のためにヴァージン・ギャラクティックが導入した空中発射式弾道飛行スペースプレーンです。これは同社傘下のスペースシップ・カンパニーによって製造されています。運用方法はスペースシップワンと同様で、まず専用の母機であるホワイトナイトツーによって高度まで運ばれた後、機体自身のロケットエンジンに点火して宇宙空間へ向け上昇します。その後は滑空によって地球へ帰還し、一般的な滑走路に着陸します。

スペースシップツーの初号機は2009年12月7日に公開され、約3年間の無動力試験を経て、2013年4月29日に初の動力試験飛行に成功しました。ヴァージン・ギャラクティックは、このスペースプレーンを民間宇宙旅行用に複数機運用する計画を進めており、既に多くの予約者を集めています。商業飛行のチケット価格は、情報公開時点では250,000米ドルとされていました。宇宙旅行のほか、NASAなどの組織による科学実験ペイロードの輸送手段としての利用も想定されています。

VSSエンタープライズ

VSSエンタープライズ（機体記号: N339SS）は、スケールド・コンポジッツがヴァージン・ギャラクティック向けに建造したスペースシップツーの初号機です。その名称は有名なSFシリーズ『スタートレック』の宇宙船「エンタープライズ」にちなんで命名されました。これは、スペースシップワンの設計をスケールアップしたScaled Composites Model 339級の最初の機体にあたります。2009年12月にロールアウトされ、2013年4月には初の動力飛行を成功させるなど、順調に開発が進められているかに見えました。

しかし、2014年10月31日のテスト飛行中に悲劇が発生します。VSSエンタープライズは飛行中に空中分解し、モハーヴェ砂漠に墜落しました。その後の予備調査では、機体の降下装置が想定よりも早く展開されたことが事故の一因として示唆されています。この事故により、搭乗していたパイロットのうち1名が亡くなり、もう1名も機体からの脱出後に重傷を負いました。この事故は民間宇宙開発における安全性の確保という課題を改めて浮き彫りにしました。

VSSユニティ

VSSユニティ（機体記号: N202VG）は、スペースシップツー級の2機目の機体として、VSSエンタープライズの事故後に開発・公開されました。以前はVSSボイジャーと呼ばれていた時期もあります。2016年2月19日に公開され、同年9月には地上でのシステム統合テストを完了しました。VSSユニティにとっての宇宙空間（高度80km以上）への初到達飛行は、2018年12月13日に行われたVSS Unity VP03フライトでした。

スペースシップIII

スペースシップIII（SS3）は、スペースシップツーに続く次世代のスペースプレーンとして、ヴァージン・ギャラクティックが開発を発表した機体です。2021年にその存在が予告され、同年3月30日には初号機が公開されました。しかし、2024年現在、スペースシップIIIはまだ飛行しておらず、製造された機体は新型のDelta Class宇宙船の開発に向けた地上試験などに転用されていると報じられています。これは、同社が将来的にデルタクラスと呼ばれる新しい機体シリーズの開発に注力していることを示唆しています。

ヴァージン・ギャラクティックの機体は、それぞれが民間宇宙飛行という目標に向けた重要なステップであり、その開発と運用は民間宇宙旅行産業の発展において特筆すべき歴史を形成しています。各機体の具体的な飛行回数や詳細な打ち上げデータについては、それぞれの一覧において記録されています。

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