上村進

上村 進

上村進（かみむらすすむ）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の弁護士であり、政治家でもありました。1883年（明治16年）1月23日に、新潟県南魚沼郡塩沢町（現在の南魚沼市）に生まれた彼は、1969年（昭和44年）5月19日に86歳でその生涯を閉じるまで、激動の時代の中で多くの人々の権利擁護と社会運動に深く関わりました。

早稲田大学専門部法律科および中央大学で法律を学んだ上村は、日露戦争に兵役につき、退役後に上京して二六新報社に入社します。しかし彼の関心は法曹の道にあり、1915年（大正4年）に弁護士試験を突破し、弁護士としてのキャリアをスタートさせました。

弁護士となった上村は、当時の社会運動に強い関心を寄せます。特に普通選挙の実現を求める運動に積極的に参加し、1920年（大正9年）には普選演説会で、当時の首相や両院議長に対し、普選反対派への「天誅」を求める決議文を提出するという行動に出ます（天誅事件）。この件で起訴されるものの、後の裁判で無罪判決を勝ち取りました。この事件は彼のその後の活動を象徴する一幕となります。

翌1921年（大正10年）、上村は同志である布施辰治や山崎今朝弥らと共に自由法曹団を結成しました。この団体は、労働争議や農民運動といった大衆運動に対する法的な支援を目的としており、上村は同団体の活動を通じて、社会的に弱い立場にある人々の権利保護に精力的に取り組みました。自由法曹団は、弾圧が強まる時代にあって、反体制的な立場にある人々の弁護を担う重要な存在となっていきます。

政治活動においては、1926年（大正15年）に労働農民党の結成に参画し、中央執行委員を務めました。1928年（昭和3年）には、初の普通選挙が実施された衆議院議員選挙に立候補しますが、この時は議席を得るには至りませんでした。労働農民党の解散後、1929年（昭和4年）には大山郁夫らと新労農党を設立しますが、後に離党しています。

弾圧が厳しさを増す中、上村は解放運動犠牲者弁護士団に参加し、1933年（昭和8年）には日本労農弁護士団の団長として、共産党員らが大量検挙された三・一五事件や四・一六事件といった著名な弾圧事件の弁護活動に従事していました。しかし同年、彼自身も治安維持法違反の容疑で検挙され、起訴されます。裁判では懲役2年の有罪判決を受けたものの、思想の転向を表明したことにより執行猶予が付され、実刑を免れました。この転向の背景には様々な状況があったと推察されますが、当時の社会情勢の厳しさを物語る出来事でした。

第二次世界大戦終結後、上村は再び弁護士活動を精力的に行います。自由法曹団の再建に尽力するとともに、戦後の著名な裁判である平事件や三鷹事件などにおいて被告側の弁護を担当しました。政治の世界では、1949年（昭和24年）の衆議院議員総選挙に旧新潟1区から日本共産党公認候補として立候補し、初の当選を果たしました。しかし、当時の連合国軍占領下における政策に反対する活動を理由に、1951年（昭和26年）9月に逮捕されるという経験をします。検察による不起訴処分で釈放されたものの、いわゆるレッドパージにより公職から追放され、衆議院議員の職を失いました。

公職追放解除後は、日本労働組合総評議会（総評）の弁護団員として活動を続け、労働者の権利擁護に尽力しました。

晩年は、静岡県沼津市で過ごし、1969年（昭和44年）5月19日に急性肺炎のため、同市の医師会病院にて享年86でこの世を去りました。

上村進は、弁護士として、そして政治家として、社会運動や労働者の権利擁護に一貫して関わり続けた人物です。自由法曹団設立者としての功績は大きく、その活動は日本の弁護士の社会における役割にも影響を与えました。

主な著書
『労農露国革命憲法論』（1925年）
『新勞農黨樹立の提案:親愛なる全國の戰闘的勞働者農民諸君の前に』（大山郁夫、細迫兼光との共著、1929年）
* 『生産管理の合法性について』（1948年）

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