上甑町江石

上甑町江石（かみこしきちょうえいし）

鹿児島県薩摩川内市に属する上甑町江石は、甑島列島北部、上甑島の南東部に位置する大字です。かつては甑島郡上甑村に属し、その歴史は江戸時代にまで遡ります。現在の人口は122人、世帯数は65世帯（2020年10月1日現在）で、面積は4.15平方キロメートル（1977年時点）の小さな集落です。

地理

上甑町江石は、東シナ海に面し、南部の多くは海岸線となっています。北には上甑町中野、上甑町中甑、東には里町里と隣接しています。集落は、中央部の江石港周辺に集中しており、古くから漁業や交易の拠点として栄えてきました。

塩巻地区には、金峯神社があり、地元住民の信仰を集めています。この神社は、江戸時代には蔵王三所権現と呼ばれていましたが、明治時代に金峯神社と改称され、金山毘古神と金山姫神を祀っています。

また、この地域には貴重な植物であるキイレツチトリモチが自生しており、トベラやネズミモチに寄生しているのが確認されています。

地名の由来

「上甑村郷土誌」によると、地名の由来は明確ではありませんが、湾口にある小島という岩でできた島や、付近の岩礁（瀬）から、「岩の島や瀬がある浦」という意味に由来すると推測されています。

自然公園・自然保護地区

甑島列島は、2015年3月16日に「甑島国定公園」に指定されました。上甑町江石の集落を除くほぼ全域が国定公園の区域に含まれており、豊かな自然環境が保護されています。一部の地域は特別地域にも指定され、自然保護に対する意識が高い地域です。

山岳・島嶼

上甑町江石には、「トンコツ山」という名の山が存在します。また、沿岸部には「小島」などの島嶼や岩礁が点在しています。

小字

『角川日本地名大辞典』によると、上甑町江石には以下の小字が存在します。

茅牟田、大床、小浜、白木ノ元、小平、大山、河内、三吉開、大平、新川、塩巻、滝ノ下、平道、山ノ中、桂廻、村池田、泊、礒道、人附林、西俣、池田ノ上、小茅、大迫

歴史

前史時代

江石遺跡からは弥生土器や合口甕棺が出土しており、古代から人が居住していたことが分かります。特に合口甕棺の出土は、北九州の文化が天草を経由して甑島列島にもたらされたことを示唆しており、この地域の歴史を考える上で重要な発見となっています。

近代

江戸時代には、江石村として存在し、「三州御治世要覧」や「旧高旧領取調帳」に記録されています。伊能忠敬の著書によれば、当時の家数は174戸でした。また、宝暦ごろには割地制度と呼ばれる土地共有制度が確立し、1971年まで継続されました。

町村制施行以後

1889年の町村制施行により、上甑村の一部となり、大字「江石」となりました。その後、1999年には公有水面埋立地が編入され、2004年には合併により薩摩川内市の一部となり、現在の上甑町江石となりました。

施設

公共施設

上甑江石体育館
上甑江石運動広場

寺社

金峯神社
恵比須神社
法照寺

郵便局

江石簡易郵便局

人口

国勢調査によると、1995年以降、人口は減少傾向にありますが、現在も100人以上の人々が暮らしています。

教育

かつては江石小学校が存在しましたが、1969年に中津小学校に統合され閉校しました。

小学校

江石小学校は1879年に創立され、地域の教育を担ってきましたが、児童数の減少により閉校となりました。

小・中学校の学区

現在の小・中学校の学区は薩摩川内市の規定に基づいています。

交通

地域コミュニティバス「甑かのこゆりバス」が運行しており、桑之浦から中甑を経て江石を結ぶ路線があります。

バス停

浦内
江石
湾港
江石港

まとめ

上甑町江石は、豊かな自然に囲まれ、歴史と文化が息づく地域です。甑島国定公園の一翼を担い、独自の景観を保ちながら、静かで穏やかな生活が営まれています。過去には小学校もありましたが、現在は統合され、コミュニティバスが住民の足となっています。

参考文献

角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 46 鹿児島県』角川書店、1983年。
芳即正、五味克夫『日本歴史地名大系47巻 鹿児島県の地名』平凡社、1998年。
上甑村郷土誌編集委員会『上甑村郷土誌』上甑村、1980年。

関連項目

甑島列島

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