山家三方衆

山家三方衆とは

山家三方衆（やまがさんぽうしゅう）とは、戦国時代に三河国（現在の愛知県東部）の山間部、特に設楽郡を中心とする奥三河に勢力を持っていた土着勢力です。

具体的には、『三河物語』に記された「山ケ（家）三方」である、作手城の奥平氏、長篠城の菅沼氏、田峰城の菅沼氏の三家を指します。これらの勢力は、地理的な要因から独立性が高く、独自の判断で行動することが多かったとされています。

勢力と役割

山家三方衆は、徳川家康が信濃国方面からの武田氏の侵攻に備える上で、重要な役割を担っていました。特に、武田信玄や武田勝頼との合戦では、前線基地としての役割を期待されていました。

この三家以外にも、野田城の菅沼定盈の野田菅沼氏なども、徳川家康の命により、武田氏との戦いに備えていました。

徳川家康からの離反

当初、山家三方衆は徳川家康に従っていましたが、元亀元年（1570年）に大きな転換期を迎えます。武田氏の武将・秋山虎繁が東美濃の岩村遠山氏の領地を通過して奥三河へ侵攻しようとした際、上村合戦が勃発しました。

この戦いでは、奥平定能（作手城）、奥平信光（名倉城）、奥平信昌（菱鹿野城）、菅沼定忠（田峰城）、菅沼正貞（長篠城）らが徳川方として出陣しましたが、遠山氏が惨敗する様子を見て、ほとんど戦わずに退却しました。この時、山家三方衆はすでに武田氏と内通していたとも言われています。

元亀2年（1571年）以降、山家三方衆は徳川家康の三河侵攻を阻むどころか、逆に武田氏に切り崩され、奥平氏、田峰菅沼氏、長篠菅沼氏の三家が揃って徳川家康から離反し、武田氏に寝返りました。彼らは山県昌景の寄騎に編入され、武田軍の一員として三河や遠江を転戦しました。

山家三方衆の関係性

奥平氏と菅沼氏は、血縁関係があるものの、特に田峰菅沼氏と長篠菅沼氏は同族であり、田峰菅沼氏が総領家にあたります。しかし、三家の間に上下関係はなく、対等な関係を築いていたと考えられています。

野田城の戦いとその後

元亀4年（1573年）、山家三方衆は、徳川家康に従い続けた野田城の菅沼定盈を降伏させるため、攻城方として野田城の戦いに参戦しました。籠城していた定盈を説得し開城に導いたとされていますが、彼らは定盈の身柄と引き換えに、以前浜松城に差し出していた人質を取り戻し、改めて武田氏に差し出すという立場を取りました。

しかし、武田軍が本国へ撤退すると、その夏には菅沼正貞の長篠城が徳川家康の反撃に晒され、この出来事を機に、山家三方衆の関係は次第に揺らいでいきました。

山家三方衆の解散とその後

元亀4年が改元された天正元年（1573年）8月、奥平貞能が武田氏から離反し徳川氏に再属したことで、山家三方衆は解散しました。この解散後、三家の運命は大きく分かれることになります。

天正3年（1575年）5月の長篠の戦いにおいて、奥平氏・菅沼氏は徳川方に付く者と武田方に付く者に分かれました。長篠の戦いで武田方が敗北すると、武田方についた勢力は三河から追われることになります。

宗家当主の奥平貞能が徳川方についた奥平氏はその後、江戸期に三河譜代の大名として存続し、宇都宮藩などを経て中津藩で明治維新を迎えました。

一方、菅沼氏は、菅沼定盈の野田菅沼氏が大名となったものの、後の所領分割で交代寄合となり、大名の資格を失いました。長篠・田峰両家は武田方に属したため、没落しました。

関連事項

作手村
田峰城

もう一度検索