井田 (川崎市)

川崎市中原区井田の詳細解説

井田は、神奈川県川崎市中原区の南西部に位置する町名です。1丁目から3丁目までがあり、住居表示が実施されています。総面積は66.57ヘクタールで、区域内には矢上川が南東方向に流れています。

地理的特徴

井田は、北端で井田中ノ町、東端で木月、南端で横浜市港北区の日吉や下田町、西端で高津区の蟹ケ谷や明津と接しています。特に南側は「井田山」と呼ばれる丘陵地帯で、多摩丘陵の東端にあたります。この丘陵は東西に長く伸びており、侵食谷が多く見られます。尾根は横浜市との境界線となっており、東は日吉公園、西は蟹ヶ谷・久末の丘陵へと続いています。

この地域には、縄文時代や弥生時代の住居跡、古墳時代の遺跡が点在しており、歴史的に重要な場所でもありました。現在では、緑地や雑木林が整備され、中原区市民健康の森や井田長瀬特別緑地、神庭緑地などが設けられています。土地利用としては住宅地が中心ですが、斜面には雑木林や野菜畑も残っています。また、神奈川県立中原養護学校や川崎市立井田病院などの福祉施設も立地しています。

地価情報

井田の住宅地としての地価は、以下のようになっています。

2024年1月1日公示地価：井田1-34-48地点で34万3000円/m²、井田3-6-10地点で28万円/m²
2023年7月1日神奈川県地価調査：井田1-2-10地点で39万8000円/m²

歴史

井田には、縄文時代から人が居住しており、東神庭遺跡からは祭祀の跡も発見されています。平安時代末期には、九条兼実の荘園である稲毛本庄の一部であり、「井田郷鎮守」という記述が検注目録に見られます。戦国時代には後北条氏の支配下となり、中田加賀守の居城「井田城」があったと伝えられています。

江戸時代に入ると幕府の支配下となり、村の境界が確定しました。当初は旗本五家の領地でしたが、後に一部が天領となり、残りは複数の旗本の知行地となりました。「新編武蔵風土記稿」には、井田村として家数96軒と記されています。二ヶ領用水の分流である井田堀が地域を潤し、水田が多く、柿の栽培も行われていました。

明治時代以降は、醤油や素麺の生産、桃の栽培も行われましたが、基本的には農地として利用されていました。町村制の施行により住吉村となり、その後中原町を経て川崎市に編入されました。耕地整理も行われ、井田中ノ町、井田杉山町、井田三舞町の3町が分立しました。矢上川の氾濫対策として堤防が改修され、桜が植えられましたが、後に伐採されました。

戦後は宅地化が進み、井田山には福祉施設や研究施設が建てられました。新日本製鐵の研究所跡地は、さくらが丘として宅地開発されています。

地名の由来

地名の由来については、「新編武蔵風土記稿」に「井田摂津守という人物がいた」という説が記載されています。また、「井」が灌漑施設を意味するという説や、古代中国の井田制にちなむという説もあります。いずれにしても、平安時代末期には「井田」という地名が存在していました。

町域の変遷

住居表示が実施される前は、以下のような字が存在していました。これらの字の一部が現行の町丁に含まれています。

字井田
字池ノ端
字向河原
字堰下
字鎗ヶ崎
字東

住居表示の実施と同時に、井田字東の一部が井田中ノ町に、井田字鎗ヶ崎の全部が蟹ケ谷字池ノ里に編入されました。

年表

1159年: 「稲毛本庄検注目録」に「井田郷」として記録
1559年: 「小田原衆所領役帳」に「小机井田」として残る
1591年: 村の境界が確定
1725年: 川崎宿の定助郷となる
1734年: 矢上川の堰改修で周辺村と争論
1765年: 甘藷の苗が配布
1846年: 善教寺が寺子屋を開く
1868年: 明治維新、神奈川県の所属となる
1874年: 大区小区制で第4大区第8小区に属する
1889年: 町村制施行により住吉村の大字となる
1921年: 一部に電気が通る
1925年: 中原村と住吉村が合併し中原町成立
1933年: 中原町が川崎市に編入
1935年: 矢上川堤防に桜が植えられる
1938年: 耕地整理で木月や明津と境界変更
1939年: 上水道が開通
1940年: 耕地整理で井田中ノ町、井田杉山町、井田三舞町が分立
1949年: 川崎市立井田病院が開院
1969年: 矢上川護岸工事で桜が伐採
1972年: 川崎市が政令指定都市に移行
1996年: 住居表示が施行され、井田一丁目～三丁目が設置

世帯数と人口

2024年9月30日現在の世帯数と人口は以下の通りです。

世帯数：[データは原文に記載なし]
人口：[データは原文に記載なし]

※国勢調査による人口と世帯数の推移は原文を参照してください。

学区

市立小・中学校の学区は以下の通りです（2022年3月時点）。

小学校：[データは原文に記載なし]
中学校：[データは原文に記載なし]

事業所情報

2021年経済センサス調査による事業所数と従業員数は以下の通りです。

事業所数：[データは原文に記載なし]
従業員数：[データは原文に記載なし]

※経済センサスによる事業所数と従業員数の推移は原文を参照してください。

交通

路線バス: 川崎市バス井田営業所が隣接する高津区明津にあり、元住吉駅、新城駅、小杉駅、宮前平駅、川崎駅など各方面へのバスが運行されています。東急バスも日吉駅からさくらが丘まで乗り入れています。
道路: 神奈川県道14号鶴見溝ノ口線（尻手黒川道路）が通っています。

主な施設

神奈川県立中原養護学校
川崎市障害者総合リハビリテーションセンター
中原老人福祉センター（長寿荘）
川崎市立井田病院
ライフ井田店
人形劇団ひとみ座
善教寺

その他

郵便番号: 211-0035（集配局：中原郵便局）
警察: [管轄区域は原文参照]

関連項目

井田 (曖昧さ回避)
井田城

参考文献

『川崎の町名』日本地名研究所 編、川崎市、1995年
『川崎地名辞典（上）』日本地名研究所 編、川崎市、2004年
『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年
「井田村」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ63橘樹郡ノ6、内務省地理局、1884年

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